鑑賞料5000円になります、丸山田 誠一郎
ワイシャツも、黒のスラックスも全て印藤に剥ぎ取られ、誠一郎は白い半そでの肌着とトランクスに革靴という、どこに出しても恥ずかしくない不審者になった。
「加奈子ちゃん、ぼくをどうするつもりだい!?」
「安心しろよ、焼いてチャーシューにして食おうってわけじゃないんだから」
印藤は誠一郎の特注サイズの服を肩に担ぎ、歩き出した。誠一郎も印藤の後ろを離れまいと、汗をかきながら後を追う。まるでその光景は、暗闇で女子高生が変態親父にストーキングされているかのようだった。
「おい、デブ」
「へ?」
「だから、お前だよデブ」
『ひどい、せめて肥満戦士ピッグマンと呼んで欲しい!』、と誠一郎は思った。
「これを拾え」
印藤の足元には、誠一郎が銃弾でへし折った藤内の剣の刃があった。
これをどうするつもりなのだろうか?
かがみこみ、印藤の足元にある刃を慎重に拾い上げて誠一郎は立ち上がろうとする。顔を上げた誠一郎の目線の先には、印藤の短く詰められたスカートと、かぶりつきたくなるような太ももが目の前にあった。
最近の女子高生はけしからん!
と思いつつ見入っていると、唐突に太ももが動き、『鑑賞料5000円になります』というセリフと膝が飛んできた。払う気はないが、それならもう少し眺めておけばよかった思い、アゴを抑えつつ先を歩く印藤の後を追う。
印藤は切断された木の前で腕組をして、しばし考え込んでいた。それは、先ほどエリーが引き抜いた木で、藤内が切断した片割れだ。誠一郎が追いついたのを確認すると印藤は口を開いた。
「さて、それじゃここにある材料で即席ステークを作る。作り方は簡単だ。刃をしっかりとお前の服で木にくくりつけるだけ」
木に刃を取り付けるために、誠一郎の服が必要だったらしい。さすがに、印藤の服を脱がせて……というのはできない。というかそんな事をすれば、間違いなく印藤にチャーシューにされるであろう。
印藤の指示通り、即席ステークをこしらえると誠一郎にポケットウィスキーの瓶が手渡された。
「あの、加奈子ちゃん、これは?」
「俺の作った強化薬剤Zealot。本当は個々人に合わせて成分を調整するんだけど、今は贅沢言ってられねーのよ。俺は他のを使ってるからこれ以上は無理できない。だから、デブにやる。んで、作戦。テケトーに俺がババア幼女にスキを作らせるから、デブはZealot飲んで、それを持って突撃。おK?」
「は、はあ」
「彩華も流石にそろそろきついだろうから、さっそくしかけるぜ」
印藤は誠一郎に背を向けると駆け出した。誠一郎も、言われたとおり、Zealotを飲むことにし、瓶の蓋を開ける。ツンとする甘い匂いが辺りに立ち込め、誠一郎は中身を一気に飲み干した。
すぐさま誠一郎は違和感を感じ、膝を地面に付けた。全身を巡る嫌悪感に吐き気と目眩。これがZealotの効果なのだろうか?