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50代から始める基礎戦闘術  作者: 岡村 としあき
第三章 『その男、空腹につき』
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逆転の要は、丸山田 誠一郎

 大木を天へ掲げ、エリーは(わら)った。


 印藤はエリーの大木を振り下ろす瞬間を見極めて、回避運動を試みようとするが、早すぎて目が追いつかない。


 エリーが大木を振り下ろす――しかし、印藤に大木が直撃することはなく、真っ二つになって大木の中間部分から先が、地面に大きな音を立て落ちた。


「誰か忘れてませんか?」


 藤内の斬撃で真っ二つになった大木の片割れを投げ捨て、エリーは舌打ちをした。藤内は印藤の横に並び、剣を構え、エリーと対峙する。


「さんきゅ、彩華。レア武器2個にしとくわ」


「3個でお願いします」


 即座に訂正する藤内に、印藤はバツの悪そうに笑う。


「彩華、イイ考えがあるんだけど、ちょっと時間稼いでくんない?」


「あれを相手にですか?」


 相変わらずアンバランスな両腕を引きずり、エリーがゆっくりとこちらに向かって歩いてきている。


「彩華ってタンク得意じゃん? ネトゲでも壁役なんだし、適当に挑発(ヘイト)かまして逃げ回ってくれるだけいいから、な?」


「――3分ですませてください」


「あいあい、そんじゃー頼むわ」


 藤内は一歩前に出ると、左足を前に出し、重心を前へと移動させる。両手で握った剣は、胸の辺りで水平に構え、いつでも斬撃を繰り出せるようにする。攻撃は最大の防御……『烈火の構え』にてエリーと相対し、手痛いカウンターを喰らわせるつもりであった。


 ――もはや、逃げも隠れもしない。


 一方の印藤は、学生カバンの元へ赴き、中からポケットウィスキーの瓶を取り出した。瓶の中で揺らぐ無色透明な液体の正体はZealot。服用すれば、ヴァンパイアハンターの能力(スペック)の限界に近い腕力を発揮できる。しかし、『加奈子ちゃんルール』に従いこれを印藤自身が使うことはない。


 ではどうするか?


 答えは、目の前で未だ泡を吹いている中年親父にあった。


「オラ、起きろ!」


 印藤は多少優しくも誠一郎のお腹を蹴り付けた。


「う~ん、あれ? 君は確か……」


「おは」


 目を覚ませば、自分の腹の上に女子高生のスカートの中からのぞくキレイな生足が乗っていて、一瞬何がなんだか解らなくなる。しばらく、呆然としていた誠一郎であったが、すぐに恐怖が蘇り、ガタガタと震えだした。


「あいつをぶっ殺す方法が一つだけある、だから手ぇ貸せ」


「え、えええ?」


 その時、印藤の携帯から往年のアニソンが流れ出し、ぴかぴかと点滅した。


「ん? 親父からか……ウゼーウゼー。でも、流石にでとかないと後で説教くらいそうだしなあ」


 一瞬躊躇した印藤だったが、すぐに通話ボタンを押し、電話にでた。


 きっと父親もこの不良娘に相当手を焼かされているに違いない、同じ年頃の娘を持つ父親として誠一郎は同情した。


「もしもしパパぁ? 大丈夫だよぉ~すぐ帰るから。うん、加奈子ちょっとね、お友達の相談に乗ってたんだあ。えらいでしょ? えへへ~」


 誠一郎は目が点になった。高くて愛らしい声、さっきまでの低くて恐ろしい声は一体どこへいったのだろうか?


「うん、うん、解ってるぅ。加奈子もパパの事愛してるよ、だから、まっててね」


 通話が終了したようだ。


「トイレットペーパーで首吊って死ね、クソオヤジ」


 誠一郎はまた目が点になった。低くて恐ろしい声、さっきまでの高くて愛らしい声は一体どこへいったのだろうか? 


「さあて、お前にはやってもらう事が山ほどある」


「え?」


「そうだな、まずは……全部脱げ」


「はい?」


 印藤はまるで悪代官の様な目つきになると、誠一郎のズボンのベルトに手をかけ、強引に外した。

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