赤い衝撃、丸山田 誠一郎
丸腰になった藤内は、拳銃を取り出し、エリーに狙いを絞る。
誠一郎もまた、拳銃を構えるが藤内に左手で制された。たった一言『邪魔です』と。
誠一郎は仕方なく、少し離れた電柱の影に移動し、ちくわをくわえて事の成り行きを見守ることにした。
「やっぱり、ダメなのかな……僕は……」
なんとなく、ちくわの袋に向かって語りかけるが、ちくわの袋は何も返してくれない。最後のちくわを取り出し、口に運ぼうとしたのだが、誠一郎の口は空を切った。
「お久しぶり、かわいいブタのおじさん。私、おじさんの事気に入っちゃった、このぷよぷよしたお腹、触りだしたら止まらないわね」
エリーは右手で誠一郎のお腹をさわさわと撫でていく。
誠一郎が抵抗出来ないところを見ると、けっこう気持ちいいのかもしれない。
「ちょっちょっと、何をするんだい、やめてくれ! 藤内さん、助けてー!」
誠一郎は情け無い声を上げて藤内に助けを求めてみたが、返事が無い。
「ああ、そこで寝てるわよー。やっぱ、剣が無いと何もできないのかしら?」
エリーがあごでしゃくった方向に目をやると、藤内はぐったりと倒れこんでいた。
万事休す……誠一郎はこのままエリーのおもちゃにされて、なぶり殺しにされるのだろうか?
誠一郎は目をつむり、覚悟した。若くてカワイイ女の子におもちゃにされるなら、いいか、と。
その一方で、ちょっと若すぎるんじゃないか? などと誠一郎の頭の中で議論が始まっていた。 議論は終了し、誠一郎の中で答えが出たのだが、結局その議論はムダに終わるのだった。
「ああ、ウゼーウゼー。な~んで俺の担当区域が隣町の三合になるわけ?」
その声と共に、目の前にいたエリーが左方向に垂直移動した。 さっきまでエリーに触られていたお腹が少し痛い。
どうやら、エリーが移動したのではなく、先ほどの声の主に誠一郎が蹴られて吹っ飛んだらしい、新しい敵だろうか?
藤内は起き上がり、蹴りを放った人物に向けて叫んだ。
「印藤さん、その人はヴァンパイアじゃありません、目標は目の前の女の子です!」
「あぁ? こっちの幼女かよ……てか、俺好みでやり辛いじゃん。あー、おっさん、蹴り入れて悪かったな!」
制服のスカートを翻し、左右に結った赤く長い髪を揺らして彼女はこう言った。
「一応自己ショーカイしとくか。印藤 加奈子。高1。趣味はゲーム。一応、学士。まぁテケトーによろしく」
誠一郎は、若くてカワイイ女の子に蹴られたなら、別にいいか、と思った。