表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50代から始める基礎戦闘術  作者: 岡村 としあき
第三章 『その男、空腹につき』
43/104

夜の蝶にご用心、丸山田 誠一郎

 三合市は山に囲まれており、まだまだ未開発の土地がある。その山の方に足を運ぶと、ピンク色のハデなホテルや、きらびやかなネオンがこうごうと輝き、そこだけまるで異世界のようだった。


 『天然温泉』の看板を掲げた建物の前で、誠一郎達は足を止めた。キョロキョロと360度フルに首を回転させ、周囲を警戒する。決してヴァンパイアを探しているわけではない。


 藤内の様な、若くてキレイなオネーチャンと、こんな場所にいるのが、知り合いにでもバレたらことだからだ。それが美雪の耳にでも入ろうものなら、おそらく丸山田家は崩壊するのではないか。


 幸い、周囲には誠一郎と藤内しかいないようなので、今のところは安心のようだが。


「このホテルの中みたいですね、さあ、行きましょう、マルちゃん」


 行くんですか? と口に出す前に、甲高い声が誠一郎の背中に刺さった。


「セイちゃあああん!」


 後ろを振り返ると、以前、仲良くなって電話番号を交換した『キャバ嬢ハルヒちゃん』が手を振っていた。


 誠一郎に駆け寄ると、誠一郎の左手を両手で抱え、ピンクのワンピースから露出している肌を甘えるように擦り付けてくると、香水のいい匂いが誠一郎の鼻をくすぐった。


 こんなところ誰かに見られたら、ヤバイ。


「もう、どないしたん? 一度も電話かけてくれへんし、お店にも顔出してくれへんし。うち、めっちゃ心配したんやで? ン~あれ~何なん、そのコ? 別の店のコなん?」


 邪魔者をみつけて、ハルヒちゃんの機嫌は急に悪くなった。藤内を見るハルヒちゃんの顔が怖い。


 だが、藤内はそれに臆することなく、ハルヒちゃんに近づいていく。


 急に左手にかかっていた体重が消え、誠一郎は何が起こったのか一瞬解らなかった。


「見つけました」


 気が付くと、藤内が剣を抜き、ハルヒちゃんの腹を貫いていた。


「ちょちょっと藤内さん、ハルヒちゃんになんてこと!」


「ナビを見てください、目標です」


 VHナビを見ると、すぐ目の前にDの反応があった。キャバ嬢のヴァンパイアなんて信じられないが、実際に目の前に反応がある以上、認めざるを得ないのだろう。


 誠一郎は、今度からは入るお店をちゃんと選ぼう、と思った。


 ハルヒちゃんは紅い眼で誠一郎を睨み、誠一郎になにやら恨みの言葉を叫んでいるではないか。


 誠一郎は恐ろしくなって藤内の影に隠れるが、その巨体が藤内の華奢(きゃしゃ)な体で隠れるはずも無く、横にはみ出した脂肪がブルブルと震えている。


 藤内が止めを刺す為、間合いを詰めようとするが、ハルヒちゃんは誠一郎達を飛び越えてすり抜けると、風通しの良くなったワンピースを来たまま、山の方へと逃げていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ