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50代から始める基礎戦闘術  作者: 岡村 としあき
第三章 『その男、空腹につき』
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二人の夜、丸山田 誠一郎

 杭打ち検定1級は、超難関の狭き門だった。そもそも扱いが難しく、人を選ぶ杭打ちで2級以上を取得している者は少ない。


 大抵のヴァンパイアハンターは、剣術か体術を接近戦のメインとして覚え、補助的に銃器や薬品生成を覚えるのが一般的だった。というか、過去に杭打ち検定1級を取得した者は未だいないのだ。


「お前は杭打ちの才能だけはあるからな。やるっていうなら、手取り足取り懇切丁寧に教えてやる、個人授業でな」


 個人授業……その素晴らしい四文字の言葉に、春川は心を躍らせた。


「ヤリマスヤリマス! でも、その後は保険体育も個人授業してほしいかな! 人体の構造とか!」


 『人体というか、トメちゃんのを』と言うつもりだったが、携帯から電子音が鳴り、春川は口を止めた。


 春川と留子がVHナビを立ち上げると、Dのマークがそれぞれ離れた所に表示されていた。Dランクが二匹……今日は中々の上客の様だ。


「今日も来たか……春川。印藤はまだ来てないんだったな?」


「あーインコちゃん、まだ来てなかったよー。ブチョーもまだみたいだし」


「丸山田と藤内を食堂に連れて来い、渡辺はもう5分もすればここに来るはずだ。印藤にはこのまま直接現地に行ってもらうか」


「あいよ!」


 春川は誠一郎達を呼びに行くため、演習場に向かって走った。


「吉村以外の勢力……『小泉家』の奴らか。元気な奴らだな、この前あれだけ痛め付けてやったのに」


 留子はVHナビを終了させ、食堂に向かった。


 ――10分後。


 食堂には、誠一郎、春川、藤内、そしてついさっき戻ってきた渡辺と留子を合わせた5人が一つのテーブルに着いていた。


「今回はDランクヴァンパイアが二匹だ。実力的にいってお前達ならそう苦戦する事も無いだろう。今回は丸山田、藤内。渡辺、印藤の2チームでそれぞれ対処してもらう」


 誠一郎は内心、ほっとした。春川の腕は認めるが、昨日の『愛娘瑠奈の声までそっくりさんな彼女』と春川のラブコールは、聞いていて気持ちのいいものではなかったからだ。


 春川の彼女が、電話の向こうでバカみたいに笑っているのを聞いて、きっと父親も苦労しているに違いない、と同情していた。だが、藤内ならばそんな事は無い。


「田中さん、僕ならば一人で十分ですよ。印藤くんを藤内くん達に付けて上げてください。こんな大きなお荷物を抱えてちゃ、いくら藤内くんでも厳しいでしょう?」


 と、渡辺はニヤリと憎らしい笑顔を誠一郎に向け、爽やかな笑顔を藤内に向けた。


(春川くん、渡辺部長はどんな資格を持ってるんだい?)


 渡辺の自信満々な態度が気になったので、隣の春川にひそひそ声で聞いてみた。


(あー。確か、体術の4級と剣術の4級。それ以外5級じゃなかったっけ? キャリアはオレとかわんねーよ) 


 なんだ、大したことはないではないか。


「まあ、いいだろう。ただし、言ったからには結果を出すことだな。危ないと思ったら連絡を寄越せよ?」


「ほうれんそうは社会人の基本ですからね、任せてください。それよりも僕、マルちゃんの事が心配でなりませんよ。今度は聖水どころか討伐任務すら忘れて、お家でお腹一杯ご飯を食べているような気がしてねえ」


「大丈夫です。マルちゃん、今日は訓練で大活躍だったみたいですし、いざとなれば私がマルちゃんの盾になって守りますから。行きましょう、マルちゃん」


 ニコっと眩しい笑顔のまま藤内は、皆に一礼すると先に外に出て行った。


 誠一郎も後を追い、外に出るとVHナビを起動し確認する。反応のあった場所の一つを確認すると、誠一郎は絶句した。


 目標のヴァンパイアがいる地点は、大人の男女が二人で入っていくホテルがいっぱいある場所だったからだ。


「マルちゃん、行きましょう」


 笑顔の藤内に腕を引っ張られ、誠一郎は走り出した。

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