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50代から始める基礎戦闘術  作者: 岡村 としあき
第三章 『その男、空腹につき』
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人生イロイロヴァンパイアもイロイロ、丸山田 誠一郎

 誠一郎と渡辺は協会の事務所に到着すると、早速留子の下へ向かった。


 留子は渡辺と二人きりで話があるとの事なので、誠一郎はテキストを読み、大人しく講義室で自習する事にした。


 『楽しく学べるヴァンパイアの生態』を開き、パラパラとページをめくってみる。少し先の部分を予習しておこうと思い、テキストの25ページを開いた。


 ”3章 ~ヴァンパイアの家系について~ ヴァンパイアは子を作り、その子がまた子を作ります。そうして段々と形成されていくのが、ヴァンパイアの家系です。ヴァンパイア最大の勢力は『T』と呼ばれる家系で、これは家長であるAランクヴァンパイア、『T』の名を冠しています。


 『T』は、三人の強力な子供達を中心に、全世界に勢力を伸ばしつつあります。


 アジア最大の勢力で、日本に拠点を置く『小泉家』や、中国は上海の『シェン家』なども主だったものですが、彼らは決して協力しあう事は無く、勢力争いを絶えず続けており、ヴァンパイアも一枚岩ではないようです。”


 突然テキストが宙に浮き、誠一郎はその行方を追った。


「丸山田くん、お勉強ですか? いやあ、感心感心。少しでも、食欲以外に取り柄を持たないとね」


 渡辺がテキストを取り上げ、バカにした口調で誠一郎を見下していた。


「返してください、渡辺部長!」


「まあ、そうカリカリしないしない。頑張る君にご褒美を持ってきたんだから」


 テキストを誠一郎の机の上に放り投げ、渡辺は懐からビーフジャーキーの袋を取り出し、誠一郎に手渡した。


「それでも食べて、研修頑張りなさい。私は少し会社に戻らないといけないので、また後でね」


 それだけ言って渡辺は立ち去っていった。


 少し腹が立っていたが、少し腹も減っていたので、誠一郎はビーフジャーキーを1つ口にくわえると、さっきまでの気分が180度回転し、幸福感に包まれる。今まで食べたどのビーフジャーキーよりも、おいしい。


「丸山田、もう1回射撃の訓練だ。準備して射撃場に来い、私も後からすぐに行く」


 講義室のドアを開け、留子が顔を出した。


 誠一郎は慌てて席を立ち、講義室を飛び出すと後に残されたのは、留子とビーフジャーキーの袋であった。


 留子はビーフジャーキーの袋を手に取り呟いた。


「何だアイツ? ペットでも飼うつもりなのか?」


 ビーフジャーキーのパッケージには『おいしいワンちゃんのエサ ~大型犬用~』と記載されていた。

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