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50代から始める基礎戦闘術  作者: 岡村 としあき
第二章 『渡る世間はヴァンパイアばかり』
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ステークよりステーキ、丸山田 誠一郎

「聖水とお茶、間違えちゃったみたい……ごめんよ、春川くん」


 申し訳なさそうに謝る誠一郎に、吉村はこらえきれず笑い出した。


「ははは! 丸山田さん、やはりあなたは面白い人だ」


「マルちゃん、冗談は顔とそれ以外だけにしてよね……」


 要するにそれは、誠一郎の存在そのものが冗談という事だろう。


「どどどどど、どうしよう?」


「仕方ねえな……やるか!」


 春川は急に真剣な面持ちになり、ヴァンパイアに向かって走り出した。姿勢を低くし、アッパーを繰り出す――かと思いきや、そのままの体勢でヴァンパイアの隙間を()って猛ダッシュし、逃げた。


「早いよ春川くん、待ってくれ!」


 誠一郎もそれに続くため、目の前のヴァンパイア達を()き逃げして後を追う。


 二人はトイレの脇にある茂みに身を隠し、なんとか逃げることが出来た。


「まずいぞこりゃ……聖水無いといくら倒してもキリが無い」


「春川くん、持ってきていないのかい?」


「ステーク担いだら、それ以外ダルくて何も持てないのよ」


 春川は当然だろ、と言わんばかりの顔をしている。


「そうだ! なんとか聖水をここで調達できないかな? 君、杭打ち準一級なんだろ! なら、他のだって」


「あーだめだめ。オレ、他のに一切興味なかったから勉強してないの。杭打ち以外全部5級なんだわ、それに聖水の作りかたとか忘れちった」


 てへ、と舌を出した春川の顔面に、野良犬のフンを枝に突き刺し、そのまま放り投げてやろうかと思ったが、脳内シミュレーションのみにとどめておいた。というか、原因は誠一郎にあるのだが。


「まあ、安心しろよ。Cとは一度やりあった経験があるんだ。その経験があればなんとかなるって!」


「本当かい!?」


「Cっていっても、Cカップの女の子だけどね!」


 てへ、と舌を出した春川の顔面に、野良犬のフンを枝に突き刺し、そのまま放り投げてやった。


「危ねっ! このビューティフルストロングな顔面にそんなもん投げるなよ!」


 惜しい。すんでのところでかわされ、ビューティフルストロングな顔面は無事だった。


「ま、聖水無くたって、とりあえずオレが奴らを戦闘不能にしてる間に、届けてもらうなり、マルちゃんが取りに行くなりすればいいさ、ってことでステーク返して」


 差し出された右手は何を求めているのだろう。誠一郎はとりあえず、春川から貰ったちくわを、右手に一本乗せてみた。


「マルちゃん、ノリ突っ込みしてあげたいのヤマヤマなんだけどね……。オレのステーク、どこやったの! 食べたの!? おいしかったの!?」


 春川は語気を荒げ、誠一郎に詰め寄った。


 そもそも、食べておいしいのなら誠一郎がとっくに食べている。


「お探し物は、これですか?」


 声のした方向に目をやると、吉村がステークを携え公園の明かりの下に立っていた。

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