表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50代から始める基礎戦闘術  作者: 岡村 としあき
第二章 『渡る世間はヴァンパイアばかり』
21/104

嵐のように駆け抜けろ、丸山田 誠一郎

 公園をハム園と読み間違える春川に、誠一郎は一抹の不安を覚えた。


「春川くん、あれはなんて読むんだい?」


 目の前の『月極駐車場(つきぎめちゅうしゃじょう)』の看板を指差し尋ねた。


「決まってんじゃん! つきぎめちゅうしゃじょう。だろ? げっきょくちゅうしゃじょうじゃないぜー? んもう、こんな簡単な漢字も読めないのかよ、マルちゃんはー。困った子でちゅねー」


 春川は薄くなり始めた誠一郎の髪をなでた。


「さ、早いとこ三合ハム園に行こうぜ。逃げられたらトメちゃんに殴られちゃう」


 槍のような物を担ぎなおし、春川は駆け出した……ハム園に向かって。離されまいと誠一郎も必死に走る。


 不思議だった。いつもならばすぐに切れてしまう息も、1キロ程走ってもなんともない。ヴァンパイアハンターになったおかげで、身体能力が向上しているのかもしれない。


 マタドールの赤い布に突っ込む猛牛の様に、ドスドスと体重1?0kgの巨体が時速40kmで駆け抜けた。


「到着っと……反応は中央の池の辺りか、行くぜマルちゃん」


 三合公園は中央に大きな池があり、休日の昼間は親子連れで散歩したり、カップルがいちゃついていて賑わっているのだが、夜ともなればまた別の顔を見せていた。


「おーいるいる。ナビの反応からして、ノーランクが3匹……余裕だな」


 池の周りには中年の男性と若い女性が二人。先日のヴァンパイア達と同じように舌を出し、目は空ろだった。こちらに気付いたのかよろよろと向かってくる。


 春川が槍の様な物を覆っていた布を外すと、中から銀色の槍が出てきた。


 いや、あれは……そうだ『はじめよう!(くい)打ち検定5級』で写真紹介されていた。


「オレの得意武器、『銀の杭打ち機(シルバーステーク)』さ」


 2m程の長さの金属棒の先端に、鋭い銀色の杭が備え付けられており、棒と杭はシリンダーの様な物を介してつながっている。目標に突き刺した瞬間にシリンダー内の火薬が炸裂し、打突力を大幅に増幅し相手を貫く……。対ヴァンパイア兵器の中で、最も高い威力を持ち、最も扱いが難しい武器……そうテキストに書かれていた。


「さ~て、今日もトバシちゃいますかね」


 春川めがけて中年男のヴァンパイアが駆け出した。中年男の拳は春川を捉えているが、春川にかわす気配は無い。


 春川はゆらりと陽炎の様に一瞬で右に避けると、ステークを右肩に担いだまま、右足で膝蹴りを放つ。


 顔面にヒットし中年男は数歩後退(あとずさ)りした。


「オレのモットーは地球と女の子に優しく! ヤローとヴァンパイアに厳しく! あんたにゃダブルで厳しいぜ?」


 春川は数歩の距離を一気に詰め、中年男に接近し、左手で掌底を中年男の腹に打ち付ける。流れるような動きでそのまま右足で男の顎を蹴り上げ、男は重力から解放された。


 春川はニヤリとした表情でステークを構える。


 やがて中年男は重力に従い、地上へと帰ってくる。


 春川は落下してきた中年男の腹にステークを突き刺し――。インパクトの瞬間、轟音と共に男は爆ぜた。


「マルちゃん、杭打ち検定準1級のオレの腕前、どうよ?」


 三日月を背にステークを肩に担いだ春川の姿は……。 


 ――ホレそうなくらい、カッコよかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ