迷コンビ誕生、丸山田 誠一郎
到着した春川と共にゲームセンターにいる留子の元に向かい、今日これからのスケジュールを聞くことにした。
「お茶買ってきてくれ。プリンに緑茶は合うんだ」
留子はプラスチックのスプーンを口にくわえたまま、ガマ口から100円玉と50円玉を取り出し、誠一郎の口に差し込もうとした。
「ああ、悪い悪い、貯金箱と間違えたよ、紛らわしいなお前」
留子は、金槌で叩いてお金を取り出すアレと勘違いしたようだった。ニヤケながら弁解するあたり、わざとであろうが……。
誠一郎が留子から言い渡されたのは、100円玉と50円玉を持って、店の搬入口の自販機で『おいしいお茶』500mlを買って来いというものだった。要するに、パシリだ。
「釣りはいらないぞ」
ちなみに、『おいしいお茶』の価格は150円なので、お釣りは発生しない。
誠一郎は店の搬入口までたどり着くと、自販機に150円を投入し、目的の物を手に入れた。
突然、携帯からけたたましくピコピコと電子音がした。お茶のペットボトルを脇に抱え、両手でスマートフォンを操作する。
正直、オジサンにスマートフォンはキツイ。まったく操作に慣れる事ができず、片手ですいすいと自在に操る春川が少し羨ましかった。
苦戦した末、VHナビを立ち上げて確認する。反応は近所のようで、Eのマーク1つに、Nのマークが3つ。
急いで事務所に戻ると、すでに春川が槍のようなものを肩に担ぎ、スタンバイしていた。
「行くぜマルちゃん。実戦は初めてなんだから、ちくわでもくわえてオレの活躍を見てな。華麗に戦うオレの姿にホレるなよ?」
間違ってもそれはないだろう。
春川から、ちくわを一袋もらうと、誠一郎は早速口に一本くわえた。……これはなかなかうまい。
「マルちゃん。聖水を忘れずに持って行って下さいね」
藤内から『お茶のペットボトルに詰められた聖水』を受け取る。
「丸山田。実戦では春川の指示に従え、こいつはバカだが我が日本支部のエースだ。今日の実戦はいい勉強になるだろう、気を付けてな」
留子は誠一郎から『おいしいお茶』を受け取り、再び私設ゲームセンターに消えた。
「お二人とも、気を付けて行ってきてくださいね」
笑顔と共に一礼。藤内にメイド服を着せれば似合うかもしれない。
「アヤちゃん、メイド服似合いそうだよね。オレ、今度作ってくるから着てみてよ!」
春川も同じ思考だったらしい。というか、裁縫も出来るのかコイツは。
スーパーフジタニを出ると、ナビに従い二人は走り出した。
「マルちゃん、ナビで案内よろしく!」
春川に言われ、VHナビを再度立ち上げる。
画面には『アップデート中……もうちょっと待ってネ』とかわいらしい文字が表示されていた。
ちゃんとアップデートしていなかったせいか、間の悪いことに今自動アップデートが始まったようだ。
「んもう、バカマルコちゃん! いいよ、オレが自分で見るから」
立ち止まって、ナビを確認する。
「ターゲットはどうやら……三合ハム園みたいだな」
「ハム園?」
ハム園とは一体どんな所なのだろう、生い茂った木々の枝に、大きなハムが実っているイメージが誠一郎の食欲を刺激した。だが春川の携帯の画面を見て、すぐに謎は解けた。
「三合公園だね……」