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50代から始める基礎戦闘術  作者: 岡村 としあき
第一章 『白く細い足との出会い』
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0時だヨ全員集合、丸山田 誠一郎

「ただいまぁ……」


 数時間ぶりに帰宅した我が家は深夜にもかかわらず、照明がこうこうと輝き昼間のそれと変わりがなかった。


「誰かいないのか~?」


 リビングからはテレビの(にぎ)やかな音が()れ出ている。


「うっさいな~、今いいとこなんだから静かにしてよね。あたしの邪魔すんなっての、何様よ」


 ――お父様だ!


 などと怒鳴ろうものなら、瑠奈はおそらく一週間は口を聞いてくれないだろう。


 ドアの隙間から迷惑そうに瑠奈が顔を半分出した。


「こんばんはっ」


 誠一郎の巨体の影からひょこっと留子が姿を現す。


「あれ、誰その子? ちょ、まさかオヤジ、エンコー? キモ……」


 瑠奈は留子と誠一郎の関係を一番最悪な形で想像したようだ。


「違うんだ瑠奈……この子は……そう、パパの上司のお嬢さんなんだ。当分預かることになったから、仲良くしてやってくれないか?」


 留子は瑠奈の前に出て、愛くるしい笑顔で自己紹介する。


高城(たかしろ) ららです、よろしくね。瑠奈お姉ちゃんっ」


 留子の潤んだ瞳は、母親を求める仔猫の様に(はかな)く、瑠奈の母性本能をくすぐった。およそ数時間前に見せたヴァンパイアハンターの顔は、そこにはない。外見通りの幼い少女の姿であった。


 留子のアプローチは瑠奈のハートにクリティカルヒットだったようで、瑠奈は留子をぎゅっと抱きしめた。


「ららちゃんっていうんだ。かわいい~私一人っ子だったから妹が欲しかったんだよね……仲良くしようね。お姉ちゃんと一緒にテレビ見よ!」


 そう言って16歳のお姉ちゃんが113歳の妹を抱きかかえてリビングに消えた。


 高城 ららは誠一郎が留子に言われ即興(そっきょう)で作り上げた偽名である。


 『今風でかわいらしい名前を考えろ』


 それが留子から下されたファーストミッションだった。


 ――どうも本名が嫌いらしい。


 ちなみに、この名前は誠一郎が、大×3好きなエッチなビデオに出演している、お気に入りの女優さんの苗字と名前をつなげたものだ。


 留子がそれを知ったらどうなるだろうか……おそらくタダではすむまい。


「あなた、帰ってたの?」


 妻の美雪(みゆき)がバスローブ姿で脱衣所から出てきたところだった。体からは石鹸(せっけん)のいい匂いと湯気がもわもわと立ち上がっている。


 30代後半とは思えないほどの引き()まった体。美しくも、幼さを残した女優の様な顔立ち。濡れた長い髪、上気した(ほほ)、みずみずしい太腿(ふともも)……。およそ男を引き付ける全ての魅力が、バスローブの中にあった。


 街を歩けば、男に声を掛けられるのは日常茶飯事で、女子大生と間違われしばしばちょっかいをかけられている。


 その度に誠一郎がワンワンと声を張り上げ、番犬の様に吼えるのだが、タヌキの置物と間違われるのが関の山で、番犬の効果など無い。誠一郎にはおよそ不釣合いなこの美人妻との馴れ初めは、またの機会にしておこう。


 誠一郎は生唾をゴクリと飲み干し、よこしまな考えを捨て意を決し口を開いた。


「……大事な話があるんだ。瑠奈と一緒に私の書斎に来てくれないか?」

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