空気を読める男、丸山田 誠一郎
要約すると、こうだ。ヴァンパイアには親となる存在がいて、その親が血を吸うと吸われた人間は子となる。その子がまた親となり、延々とそれが繰り返されていく。らしい。
そしてヴァンパイアにはランクというものがあり、それはヴァンパイアとしての能力の高さであり、年齢によって分類される。
10歳以上のヴァンパイアはE。20歳以上がD。30歳以上がC。40歳以上でB。そして……50年をすぎるとAランク。
その戦闘力は凄まじく、協会の支部を一人で壊滅させたらしい。
留子が少し悲しげに天井を見上げる。
ちなみに先ほど公園で戦ったヴァンパイア達はノーランク……生まれたての赤ん坊というわけだ。だがそれ以上に驚いたのは。
「113歳!?」
「そそ。トメちゃんぱっと見、ロリキャラ全開なんだけど、中身は明治生まれのお婆ちゃんなのよね」
少年が留子を指差しキャハハと下品に笑った。
同時に銃弾が突っ立ったままの少年の股間に向かって放たれる。ズボンに穴が開き、すぐに少年はおとなしくなった。急所への直撃は免れたらしい。
「春川。お前『け~わい』だな。女性の年齢を聞いてゲラゲラ笑うんじゃない。次笑ったら優子にするぞ」
少年は春川というらしい。下の名前はゆうや……ゆうきだろうか?
春川は穴の空いた自分のズボンを見てまた笑い出した。
「ちょっとちょっとちょっと! これはこれでセクシーじゃね? アヤちゃん見てよココ」
ズボンの穴を藤内に見せ付けるように下半身をくねらせた。
「藤内、そこのヘンタイを表に放り出しておけ。うるさくてかなわん」
一礼すると藤内はヘンタイの首根っこをつかみ、ドアの外へ消えた。
「話しを元に戻すと、だ。ヴァンパイアハンターはヴァンパイアと人間の狭間にある存在だ。人でありながら人ではない。ヴァンパイアでありながらヴァンパイアでない。どちらにも属さない。私たちはただのバケモノさ」
ヴァンパイアハンター協会日本支部長 田中 留子。日本最古のヴァンパイアハンターにして、世界最強のヴァンパイアハンター。Aランクヴァンパイアとの交戦経験を持つ唯一のハンター。
やがて誠一郎が彼女を超えるヴァンパイアハンターになる時が……
――来るのだろうか?