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空中ブランコで背中を押されて

この作品は深夜まで働く"コンビニ店員"の吉野時雨(よしの しぐれ)と、夜遅くまで演技の練習を続けるサーカス団のピエロ担当、木下喜優(きのした きゆう)とのコンビニでの繋がりを描いた作品です。

※この作品はフィクションです。実際に存在する人物とは関係がありません

夜の11時を過ぎただろうか。蝉は鳴き止み、近くの田んぼからカエルの鳴き声が聞こえてくる。

店内は深夜だと思えないほど明るさで、同時に暗いとも感じさせられた

「今日も誰も来ないな....」

と誰かいる訳でもないのに一人で呟いた。

今日は珍しく客はこの時間帯で客が来た。僕は"その客への挨拶と、同時に衝動が走った。

つい僕は、思わず「なんでピエロの服装やねん...」と口に出してツッコミを入れてしまった。そう客はピエロの服装でコンビニに来たのである。

それを聞いた"その客"はにこやかに応えた「ですよねー。コレで何も反応しない方が怖いレベルですよ。」

僕は、どう返したらいいか分からずつい、「あはは」と笑ってしまった。すると彼は、ビールと20%引きのシールが貼られている弁当を手に持ち、僕の立っているレジまで歩いて来た。

僕もアルバイトでここに立っている訳だからしっかりと彼に「お箸はお付けしますか?」と聞くと彼は、「最近は、手で食べるのが私の趣味なのでそうじゃないと落ち着かない身体でして...」と彼は言った。

また、僕は「インドでカレーを手で食べている人がいるのは知ってますけどナポリタンを手で取って食べる人なんていませんよー」と僕は彼に返した。それを聞いた彼は「じゃあスプーンでお願いします。金魚すくいの練習になるしね。」と、おかしなことを言った。僕は袋の中にスプーンを入れて彼に渡した。会計を済ませ彼は、出入口の前で僕にこう言った。「また来ます」と。そう言って彼と挨拶を交わし、この日の業務を終えた。今日出会った彼はさすがピエロを担当しているだけあってとても、温厚な性格の持ち主な人だと思った。

それから1週間ほど経っただろうか。久しぶりに彼が来た。ピンクの鼻、虹色のもさもさアフロ、可愛らしい水玉模様、まるでトランプのジョーカーのような服装だった。

彼は「また来たよ」とウインクし、僕とまるで友達かのように接してきた。

僕は、深夜の静けさを打ち消すかのような明るい声で「いらっしゃいませー!」と挨拶をした。

彼は前回と同じように、ビールと弁当を買うと思ったが彼はおにぎりの棚に手を伸ばしていた。僕は(彼はどの具材が好きなのだろうか)と気になりながら、彼の様子を伺っていた。ここのコンビニでは約30種類程度あるので、何にするか迷っているのだろう。

彼は数分後、3つ程選び、ビールの置いてある飲み物コーナーまで歩いていった。ビールを棚から取り、手に持てないと考えた彼は、苦しそうにジャグリングをしてレジまで歩いて来ていた。見てた僕は「え..?」の一言しか出ない程であった。

僕が見ていたことに気づいた彼は、「僕が落とすんじゃないか、心配になったんでしょ。」と嬉しそうに僕に言った。

図星である。「そうですね。さすがに商品なんで落とされたら店長がカラーボール投げに来るかもですね。」と冗談を言った。彼はそれに対して「そのボールもまとめてジャグリングしてみせるよ。」と僕に対抗していた。

彼のような人がチャットgptだったなら今よりもっと利用者が増えていただろうと感じられるほど、面白い回答をしてくれる。

僕はそんな彼に前から気になっていることがあり、彼に質問をした。「前から思ってたんですが?あなたはどこの会場でショーを開いてたんですか?」と。

そうすると彼は「僕はね、隣の××市のショッピングモールの屋上に開いているんだ。見て分かる通り僕はそのサーカス団のピエロ役、木下喜優(きのした きゆう)だよ。」と詳しく教えてくれた。今度は逆に彼からも質問をしてをしていいかと聞いてきた。僕は別に困ることでもなかったので了承した。「質問するね?本当に気になることなんだけど名前何?」と聞いてきた。てっきり僕はどうしてお昼や夕方にバイトをしないのか、君ってどこの大学とか聞いてくるナンパのような質問を食らうと思っていたが、名前くらいなら別になんてことは無い。

「僕は吉野時雨(よしの しぐれ)と言います。」

彼は、「名前に時雨って珍しいよね。羨ましい」と褒めて貰った。僕的には木下さんの名前が喜優だから、いやそっちが言えるの?という感情をどうにか抑えた。彼は人のいいとこばかり褒めるタイプの人間だから、自分のことを過小評価する系男性なのだろうか?そう会話を交えレジを済ませ今日も彼と最後は手を振って迎えた。そしてこの日の業務を終えた。

今日も木下さんは来た。今日は「クーラー効いて神だな」と言って店内で独り言を言っていた。僕は「今日みたいな日にはアイスを食べたくなるなー」とそれに返すような独り言を言うと今日は弁当を買わずソーダ味のアイスバーを1つだけ買って帰って行った。サーカスショーの会場は冷房が効いて居ないのかなと思った。僕だったら熱中症だったら多分倒れている。気づけば7月も終わって8月になろうとしていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜 夏休み ~

僕も大学生だから言わいる夏休みというものがある。

夏休みは色んなことをする人がいる。プールに行く人、海に行く人、夏休みに行く人、夏休み=遊びと考える人は8割はいるだろう。しかし、僕はその2割に入るタイプの人間であると言える。夏休み前半はバイト三昧である。いつもとほぼ変わらない僕にとっては苦痛でもなくただEveryで終わってしまうのだ。

僕の家からは、パート先のコンビニまで自転車で15分で着く程度である。20歳を超えている僕だが未だに自動車免許というものを取っていないのだ。夜10時30分には家から出る。田んぼに囲まれている細い道をいつも通るのでたまに落ちそうになる。僕の地域は田舎というものである。自転車を走らせている時にキツネやタヌキ、たまにイノシシなど野生動物に会うのは日常茶飯事である。夏だとたまに帰り道に田んぼ辺りからホタルが光っているのを見ることができる。

そういえば、木下さんは毎日のように僕がいる時間帯に寄って来てくれている。まるで可愛らしい彼女が居るかのような言い方をするが彼は普通に男である。しかし僕は彼をそれなりに尊敬していて人生の先輩的な存在だと思っている。

今日も木下さんは来てくれた。木下さんは今日はスキップしながら僕のいるレジまで歩いて来た。気になったので「なんかいい事でもあったんですか?」と聞くと木下たちのサーカス団は今週末にサーカスショーを開くとのこと。ついでにそれに関するチラシを頂いた。チラシに大きく木下さんが写っていて木下さんがサーカス団のリーダーだと初めて知った。もし予定がなかったらいってみようと思う。(多分、何もないと思うが.....)木下さんはコンビニに来てくれた時はニコニコと僕に話しかけてくれるが実際は本番への緊張、ストレスで疲れているんだろうなと思う。

今日は金曜日、木下さんにサーカスショーに行こうかなと思ってるんだと伝えたら「俺のこと好きすぎてショー中に尊死しないでよね」とやっぱり彼は彼女だったかもしれない。僕は尽かさず「しませんよー」と答えた。「サーカスは日曜日開催だから明日さ、来れないかもしれない」と伝えて店から出て行った。大変だなと思いつつこの日の業務を終えた。

今日は土曜日、やはり木下さんは来なかった。いやこの場合来れなかったと行った方が正しくはなる。明日のために彼も必死なのだろうか。この時間帯は彼以外来ることがないので当然誰も来ることが無くて、退屈だった。

今日は待ちに待ったショーの本番の日。自転車で駅まで向かい、途中電車を使った。チラシに乗っている地図どうりに進みショッピングモールの屋上へと向かった。ドームは思ったよりデカく彼らサーカス団はなかなか人気なんだろう。入った時には公演5分前だった。何とか着くことが出来た。危なかった。無事にショーも始まり、サーカス団の人達が出てきた。いつ来るのだろうかと思っていたら彼はやはり主役なので最後のメインディッシュと言った所だろうか。彼は手を振りながら登場してきた。「良かった木下さん大丈そ..」じゃない。足が震えて緊張しているのが疑える。大丈夫だろうか?彼のような人間も緊張はするのだと感じた。彼の得意競技は空中ブランコだと、この前教えて貰った。サーカス団の一味の皆さんがジャグリングなどを終え、ついに彼の番となった。しかし、彼は僕たちいや観客全員を裏切るような、最悪の形でショーを終えてしまった。あの事件は今でも鮮明に覚えている。ショー中に事故は起きたのだ。木下さんは頬の辺りから汗が流れているのが分かった。この日の為だけに彼は何回も練習していたことが伝わってきた。覚悟を決め木下さんはブランコに手を乗せてぶら下がった。ブランコの勢いをつけたブランコからブランコに移るときだった。彼はブランコ掴むことは出来ていたのだ。しかし、木下さんはほんの少しだけ彼の指先が滑っていくのが見えた気がした。やはり僕の予感はしっかりと働いていた。彼はバランスを崩してしまいまるで羽の千切れた蝶のように、バタリと落ちてしまった。痛々しい音は会場全体に響いていた。僕はすぐには状況を理解することが出来ず、脳がフリーズしていた。観客は始めの方、「演出なのかな」とざわついていたがそうではないことはすぐに分かった。その後、スタッフによって僕たちは誘導されショーは中止となった。家に帰ってテレビのニュースにも取り上げられていた。彼が届けたかった笑顔は、恐怖という言葉に塗り替えられた。今日は、救急車やセミの鳴き声で頭がどうにかなりそうだった。観客にいた人は、トラウマになると思ったが彼が1番それを感じているのではないと感じだ。

あの事件からしばらくたった今日、ここのコンビニ宛に手紙が届いていた。送り主は木下さんで開けてみると僕宛てだった。「時雨くんごめんね。僕は君にいいパフォーマンスを見せることが出来なかったね。毎日遅く練習していたせいか、とても僕は疲れていたらしいんだ。空中ブランコで失敗したお陰で僕は手首の骨と足の骨をやっちゃたみたいで、しばらくはサーカス団で演技が出来ないと病院の院長に言われちゃってね。最近はベッドで寝転がるしかできなくて退屈なんだよなー。」などと、書かれていた。要するに僕に見舞いを来て欲しいとのことだった。そこの病院はここら辺じゃ一番大きい○○病院だった。僕は一応夏休み期間中だから明日行こうと決めた。

今日お見舞いに行こう。だから、果物でも買ってプレゼントしようと思い近くのスーパーへと訪れた。何にするかずっと迷ったが、僕はこの夏にピッタリなスイカを選んだ。そして歩いて目的地である病院に着いた。やはり下から見あげたら「大きいな」と声が出てしまう程であった。院内に入って受付の人に「木下喜優さんに会いに来ました。吉野時雨です!」と伝えた。そうすると受付の係員さんは不思議そうな顔をしてどこか奥の方に消えて行った。彼の家族でもなく、歳も離れているので、ファンが会いに来たのではないのかと勘違いされたのだと思われたのだろうか。数分後に、係員のお姉さんは「木下さんは号室に居ます。」と教えてくれた。多分、彼女が向こうに行ったのは木下さんと話していた思う。エレベーターを使って上の階に上がり彼の部屋の前まで足を運こんだ。ドアを開けて、「こんにちは、木下さんお元気でしたか?」と聞いたら彼は「元気だったら、ここにはいないよー」と苦笑いをしていた。僕はまずお見舞いの品を渡した。受け取った彼は「スイカじゃん。でもこのサイズだとジャグリングできないねぇ」と言った。こんな時でさえ、ふざけたことを言う彼はすごいなと思った。「そんなことはどうでも良くて、今日は木下が手紙で手首と足を骨折してしまったのが心配だから来たんです。」と僕が言うと彼は「手紙で書いていた通りだよ。高いところから落ちると思った僕は手を着いて着地しようとしたんだけど逆にそれが良くなかったみたい。」と言った。この怪我は完璧に治るのかや、いつ復帰するのかを聞こうとしたが、これを聞くと後悔しそうだと判断してやめた。

うーんなんかとても気まずい。怪我の話をしたら木下さんを傷つけてしまう気がするし、日常の話をしてもあまり話は広がらなかった。いつもと違う僕を心配したのか木下さんは落ち着いて僕にこう言った

「心配しなくても、この傷は治るらしいよ。少し後遺症が残って物に捕まる時に痛みが感じる場合があると、言われたけどね」。

「そうなんですね。治らないから僕に言わないんだと思ってまさに種も仕掛けもないことすると思いましたよ。」

「まさか〜君に僕の成功した姿をちゃんと見て欲しいんだ。」と話していて落ち着いたのか僕はゆっくりとため息を吐いた。この後30分くらい話しているとコンコンとドアを叩いて係員の人が入ってきた。木下さんは、これからリハビリがあるらしく面談は終わった。僕は彼に「また来ます」と伝えて病院を出た。久しぶりに話すことが出来てとても嬉しかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

俺はリハビリを終えてベッドに腰を下ろした、変わるはずのない天井をじっと見つめていた。時雨くんとの会話を思い出す。まだ時雨くんは堕ちた僕に期待してくれた

嬉しいーーだがまだあの日のことを引きずっている

近くにあるはずのブランコすら掴めなかった俺

「成功した姿を見せるか......」

さっき彼に言ったことが重く感じた。

あの日は掴んだと思ったその油断が反省だったと思う。掴んだのは良かったのに、手汗でべちゃべちゃになり手が滑って落ちた...

その時まるで自分だけがゆっくりと動けるようになったような気がした。だから地面に手を伸ばした。

ーー結果がこれか

こんな自分を時雨くんは笑わず真剣に話を聞いてくれた。ピエロが温かみを感じて鼻だけでなく顔全体が赤くなるように感じた。

「明日もリハビリ頑張ろう」と独り言を言って気合いを入れた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「木下さんは嘘が下手だ」

目の奥から悲しいと言っているような気がした。

そんな彼を見ていたら応援するしかないじゃないか。

「成功した姿を見せる」と言ってくれたんだから彼もそれなりの覚悟が決まったのだろうか。いや僕はそこ期待しなくていい。全ては彼が魅せてくれるから。

だからピエロは笑っている。

僕は彼を信じている。

彼がまた笑顔で演技するのを待っている。

僕は今日も病院に訪れた。彼の部屋の部屋に足を運んだが、彼はいなかった。どこに行ったのかと探していたら鉄棒の様な器具に掴まりながら歩くリハビリをしていた。木下さんは僕に気づかないほど熱心だった。目がまるで燃えているかの様にも見えた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

俺はまだ怖いと感じてしまうほど弱い。だが、誰かの期待に答えるとなると不思議と力が湧いて来た。足も一歩一歩踏み込む事に痛みを感じる。

手すりをブランコと思ってこれは次は離したらいけないんだ。だって時雨くんはブランコを離した俺がいても、掴んだ手は離さなかったから。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

最近木下さんはリハビリをずっと続けていて話す機会も少なくなってしまった。でも不思議と悲しいと思うわなかった。

だって彼はこう考えている今でも彼は僕や観客の為にリハビリを続けているのだから。忙しい彼にこうメールを送った

「掴みたい物見つかりましたか?」

とまるでブランコで背中を押してあげるように応援をする。

既読はまだ着いてなかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

もう今日は限界だと思うまで動いた。

「よっこらせ」と呟きながらベッドに寝転がった。

あれ誰かからメッセージが来ている。時雨くんからだった。

「掴みたい物見つかりましたか?」と書かれていた。

俺は返信で「もちろん」と、返した。

僕は心の中で君には心もブランコも揺るがされた。

心配しなくても大丈夫。

ネタ切れのピエロは飽きられてから戻ってくる。

ーだから僕は悪い笑顔をしたー

涙を堪え、彼に笑顔を届けるために。

だって俺はピエロなんだから

この作品を最後まで読んでいただきありがとうございます。少しでも皆様に笑顔をお届けできたら嬉しいです。私は小学生の時に親と多くの頻度でサーカスの演劇を見ていて、「サーカスの作品が書きたい!」という思いから、ペンを進めることを始めました。特に私はサーカスのパフォーマンスの1つである空中ブランコが好きですね。いつも(落ちないんかな?。私は高所恐怖症だから絶対気絶するわ)とか色々考えながら見ています。ピエロは怖い印象を持たれガチですが私の作品のピエロは可愛い存在であり続たら有難いですね!

彼らの人生も私達も背中をブランコのように押して貰って勢いが上がるといいなと思いますね。

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