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第三章:アレスの願い

アレスがその圧倒的な力の差を認め、呆然とゼウスを見上げた、その時。まるで張り詰めていた空気が和らぐかのように、どこまでも続く灰色の空を、一羽の白い鳥が悠々と舞いながら横切っていった。先ほどまでの殺伐とした雰囲気が嘘のように、静かな時間が流れる。


「……なあ」アレスは、落ち着きを取り戻しつつ、純粋な疑問を口にした。「さっき言ってた『神々の闘技』とか、『神の中の神』ってのは、いったいなんだ?」


「ん?ああ、それはね、『神々のリセット』のことだよ」


椅子に座り直し、再び空士が入れてくれた紅茶(ミルク入り)を優雅にすすりながら、ゼウスがこともなげに答える。


「神々のリセット?」


アレスが聞き返す。


「そう。今ね、この世界中で、神々の世代交代が急速に起こっているのさ。神も永遠の存在じゃないんでね。人も、悪魔も、そして神も、いつかは世代交代する。そういう理ことわりなんだよ」


ゼウスが説明する。


「世代交代するのか?」アレスは問い返す。(……悪魔と同じなのか……)内心でそう呟いた。魔界でも魔王は何代も代替わりしている。神々もまた、限りある存在だという事実に、彼はわずかな驚きと、奇妙な親近感を覚えた。


「ちなみに、僕は8代目ゼウス。元々は人間だよ。先代に無理やり指名されてね。ある日突然、啓示を受けたってわけ」


ゼウスはお茶をすすりながら、どこか遠い目をして話す。


「……はぁー……」そして、盛大にため息をついた。「思い返しても、本当にしつこい先代だったな……夢にまで出てきて勧誘するんだから」ゼウスは心底イヤそうな顔で身震いした。


「まあ、そんなわけで、僕もそろそろ、この天音あまねに次を引き継ごうと思ってね。日本でスカウトしたんだ。なかなか見込みがあるだろ?」


ゼウスは隣の天音(空士)を示し、得意げに笑う。


「日本? ……ああ、人間界の、テラリアのことか?」


アレスが聞き返す。魔界では人間界をそう呼称する地域もある。


「あ、そうそう、魔界ではテラリアっていうんだったね。まあそんな感じ」


ゼウスは思い出したように返す。


「で、この『神々のリセット』が一段落したら、その新しく生まれた神々で、改めて神々の頂点を決める。いわば、神々の王を決める決勝戦みたいなものさ。これが『神々の中の神』ってわけ。このキング・オブ・ゴッドが……次に『新世界創造』を行う権利を得るんだ」


ゼウスの声に、先ほどとは違う、重々しい響きが加わる。世界の根幹に関わる話だ。


「……まぁ、ぼくはもう古い神……つまり新人じゃないから、残念ながら今回の神々のリセットには参加できないんだけどね」


だがすぐに、うって変わって軽い感じで頭の後ろで腕を組むと、あっけらかんと言った。


「……新世界創造…………」


アレスは、その言葉の響きに、強く聞き入っていた。自分の過去、犯した罪、失ったもの……それら全てを無に帰し、やり直せるかもしれない、そんな途方もない可能性を感じさせる言葉だった。


「……そう。文字通り、自分の望む世界を一から作り出す。それが、キング・オブ・ゴッドに与えられる、究極の権能さ」


ゼウスが静かに加えた。


「ちなみに、神々のリセットは過去に2回行われている。一回目のリセットについては、詳しくは僕も知らないんだけど、記録によれば『暗黒期』と言われているらしい。暴力と殺戮が支配する過酷な世界で、多くの命は消えかけ、本当に強いものだけが生き残ったとかね」


「……そして、今のこの世界が、2回目の新世界創造で産み出された世界、というわけだ」


ゼウスは、まるで講義でもするかのように、淡々と説明する。


ガタッ!


アレスは、思わず椅子から立ち上がった。


「そ、そんなこと聞いたことがないぞ! でたらめを言うな! 世界が作り替えられただと!?」


あまりにもスケールの大きな話に、にわかには信じられない様子だ。


「まぁまぁ落ち着いて。君たちの魔界じゃあまり聞かない話かもね。でも、ごく一部の悪魔は知っているはずだよ。例えば……君のお父さん、ディメトリアスとかね」


ゼウスは、意味ありげな含みある視線をおくる。


「……父上が⁉」


アレスは驚愕する。あの父が、そんな世界の秘密を知っていたというのか?


「まぁ、人間界だって、この事実を知っているのはごく一部しか知らないしね。神々にとっても、世界の根幹に関わる秘儀みたいなものだから」


ゼウスは肩をすくめる。


「そして今、3回目のリセットが絶賛開催中! てわけ。しかも、3回目は特別なリセットなんだ。過去二回のリセットの歴史、すべてを作り変えることが出来る可能性がある。まさに……『グレートリセット』なのさ」


ゼウスは3本指を示しながら、楽しそうに説明する。


「そ……それは……つまり……おれが起こした……あの……その……」


アレスは、忌まわしい言葉を口に出したくなさそうに、言いよどむ。


「……虐殺?」


ゼウスが、容赦なくその言葉にする。


「……っ! そっ、そうだ……! それすらも……それも……『無かった』世界を……にすることが出来るのか⁉」


アレスは、思わず身を乗り出してゼウスに詰め寄った。もし、それが可能ならば……!


「……んー、出来るかもね~」ゼウスは軽い調子で答える。「……君が『神々の神』になればね」


「……神々の神…………」


アレスはその言葉を繰り返す。手が届くかもしれない希望。しかし――


「……でも。それは出来ない」


ゼウスは、するどく、きっぱりと言う。


「……出来ない? なぜだ!」


アレスが食い下がる。


「そう。出来ない。理由は単純だ。君には、そのスタートラインに立つ資格がないからね。……いいかい? まず、この世界は大きく分けて3つの次元で出来ている。天界、魔界、人間界」


ゼウスが、基本から説明し始める。


「……天界は……」アレスが口を挟む。「お前たち神々の世界か?」


「いや、少し違う。天界は、ミューミュ族の世界だ。彼らミューミュ族は、神々の世界において特別な役割……神の資格を認定する『認定者』の役割を持っているんだ」


「……神の資格、だと?」


アレスが疑問を口にする。


「そう。神の資格。……そして、ここが重要なんだが、原則として、神の資格は人間しか持てない」


「なっ……人間だけだと!?」アレスは驚く。


「ああ。この資格は、基本的に4つの方法でしか得ることが出来ない。先代からの『指名』、稀に『生まれつき』持っている者、神々の闘いによる『争奪』、そして……最後の方法は、あまり褒められたものじゃないが……資格者を殺して奪う」


ゼウスは、最後の言葉にすごみを効かせた。


「……殺して…………」


アレスは、その言葉の持つ暴力的な響きを繰り返す。


「そして、この神の資格を持つ『有資格者』であるかどうかを最終的に認定するのが、天界に住む、たった10人しかいないミューミュ族の認定者たちだ」


「……空士はね、僕が人間界でスカウトして、『指名』したんだ。そして、これからミューミュ族の認定を受ける予定になっている」


ゼウスは隣の空士を見る。


「はい! 僕、がんばります!」


空士は元気よく、しかし少し緊張した面持ちで答えた。


「……ちょっと待てっ!」アレスは納得がいかない、というように叫んだ。「なんで、こんなか弱い人間が、有資格者なんだ! オレには、なんの力も感じられないぞ!」


「……ふふ、人を見る目がないなー、わがままボーイ」


ゼウスは、アレスをこ馬鹿にしたような笑みを浮かべる。


「確かに、空士はまだ未熟だ。だけどね、空士はとてもやさしい。他者の痛みがわかる。気配りもできる。……そしてなにより、『つよい』。君とは違う種類の、本当の強さを持っている」


「こ……コイツが??」


アレスは、やはり信じられないという顔で空士を見る。


「……まあ、口で言っても分からないか。じゃあ、確かめてみよう」ゼウスは立ち上がった。「さっきアレス君が殴り掛かった、あのオリジン。あそこに行って、触れてごらん」


「……この石に?」


アレスはオリジンを見上げて問い返す。


「そう。その石だ」


ゼウスはすまし顔で頷く。アレスは、言われるままにオリジンに近づき、その表面に触れてみた。ひんやりとした石の感触が伝わるだけだ。沈黙したまま。……何も起こらない。


「……何も起こらないぞ! どういうことだ!」


アレスは苛立ちを隠せない。


「……ふむ。じゃあ、空士、やってごらん」


ゼウスに言われ、空士はおずおずとオリジンに触れた。


ブッ……!


すると、オリジンの石柱の一番下の印が、淡い光を放って点灯した。


「……! 明かりが!?」


アレスは驚く。さらに、ブブブブッ! と連続して光が灯り、そのまま五つのメモリが点灯した。


「おおー、空士、前より一つ増えたじゃないか? 順調に成長しているね」


ゼウスは両手を広げて空士を褒める。


「はい! ゼウス様のおかげです!」


空士は元気よく、そしてとても嬉しそうに答えた。


「……これが有資格者の『格』だ」ゼウスはアレスに向き直る。「このオリジンは、触れた者の神の格を判定する。この格位灯が灯った数で、その格を判定するんだ。空士はまだミューミュ族の認定前だから5つしか灯らない。正式に認定されると、最初の10個すべてが灯るようになる。それが、新人の神の証、ということだよ」


ゼウスは厳しい目でアレスを見ると、再びオリジンに向き直った。


「……さて」


今度は、ゼウス自身がオリジンに触れる。


ブッ! ブブブブブブブブブブッ!!


瞬間、石柱の前面に、まるで星々が一斉に瞬いたかのように、25個ものライトが眩い光を放って点灯した。オリジン全体が、神々しい光に包まれる。


「……これが、全知全能の神『ゼウスの格』だよ」


ゼウスは、圧倒的な格の違いをアレスに見せつけ、静かにアレスを見据えた。その視線は、動かしようのない現実を突きつけていた。


「……さあ! 休憩はこれぐらいにして、闘技場にレッツゴー! もう予選が始まってる頃だ」


ゼウスは、けろりとした顔で拳を上げて歩き出す。


「ハイ!」


空士も元気よく後に続く。


「……ちょっと待て!」


アレスが、二人を呼び止めた。


「ん? 急ぐんだけど」


ゼウスが、少しそっけなく振り返る。


「……神々の闘技には、空士も出るのか?」


アレスが問う。


「今回は予選だけどね。でも、空士はまだミューミュ族の認定を受けていないから、出るのは次の闘技あたりかな?」


ゼウスが不思議そうに返す。その答えを聞いて、アレスの中で、何かが決まった。


「……おれも出る!」


彼は、強い口調で宣言する。


「……だから、君は資格がないんだって」


ゼウスは、やれやれと言い切る。


「関係ない! 強さを競うんだろ! 確かに、お前にはまだ敵わないかもしれないが、新人の神どもだったら、おれが勝つ!」


アレスは、ぐっと一歩踏み出した。


「いや、だから、そういう事じゃないんだっ……」


ゼウスが言いかけたのを、アレスは手で制して叫んだ。


「おれは強い! 魔王になるべく、誰よりも強さを磨いてきた! ……いや、もっと強くなってみせる! 資格があるだけの人間に、このオレが負けたりしない!」


彼の脳裏に、再びあの忌まわしい記憶がフラッシュバックする。……握りつぶした手のひら、血まみれの白い衣装……


「……おれは……おれは……っ!」


彼は、思いつめた、真剣な顔で、天に向かって叫んだ。


「おれは! 悪魔で最初の神になる!!」


その決意の叫びは、辺境のはざまの空気を震わせた。ゼウスは、ただ黙ってアレスを見つめている。


「そして! おれの望む新世界を……この手でつくるんだ!!」


ザザザ……。まるでアレスの決意に応えるかのように、風が吹き抜ける。しばし、三人は見つめあったまま、時が止まったかのようだった。


「…………ふー」ゼウスは、やれやれといった表情で息を吐いた。「……やれやれ。頭の悪いわがままボーイだなぁ、君は」


一歩アレスにあゆみ出ると、ゼウスはすこし腰を曲げて、アレスと目線を合わせた。


「……君は悪魔。これは神々の闘技。参加資格は神、あるいはその候補者のみ。……残念だけど、君は……人間じゃないから……ルール上、参加は……」


「…………」


アレスは、ただ真剣な瞳でゼウスを見つめ返す。その瞳には、諦めなど微塵もない。


「………………分かったよ」


ゼウスは、何かを考え、そして、まるで天啓でもまとまったかのように、ふっと笑みを漏らした。


「……これも神の御導き……ってやつ、かな」


諦めたように、しかしどこか面白がるように、ゼウスはつぶやいた。


「まあ、これも何かの縁だ。……その目。そういうの、嫌いじゃないぜ。わがままボーイ」


ゼウスは、アレスの肩を軽く叩いた。


「よし! 出場できるか、運営に交渉してみよう。ダメ元だけどね」


ついに、ゼウスは承諾した。


「……! いいんですかっ! ゼウス様!」


空士が隣で驚きの声を上げる。


「ああ、いいとも! 僕は全知全能の神ゼウスだよ。やろうと思えば、出来ない事はないさ! ……たぶんね。ま、大船に乗った気でいたまえ! わがままボーイ!」


ゼウスは、自信満々に(?)宣言する。


「……あっ、ありがとうございますっ‼」


嬉しさがこみ上げ、アレスは感極まって、その場に深く頭を下げるしかなかった。まさか、聞き入れてもらえるとは思っていなかったのだ。


「…………おお」


そのあまりに素直なアレスの反応に、ゼウスと空士は、少し驚いたように顔を見合わせたのだった。




おれはやり直す!アレスはグッと拳を握りしめた。












闘技場受付。そこは、神々の闘技への参加者や関係者でごった返していた。行きかう人々は、一見すると見た目は普通の人間と変わらない。しかし、放つ雰囲気や、その様々な人種(エルフのような耳を持つ者、獣の特徴を持つ者、明らかに人間とは異なる姿形の者など)から、彼らが尋常ならざる存在であることが窺える。


「いやぁ~、こまりましたなぁ、ゼウス様……」


受付の運営委員(小太りの中年男性風の神)が、困り果てた表情で額の汗を拭っている。


「いやいや、そこを何とか。ね? お願いしますよぉ」


ゼウスは、妙にへりくだった態度で頼み込んでいる。


「何とか、といわれましても……。まず、有資格者でもない……というか、その、悪魔ですし……。そもそも、これは神々の闘技でして~……前例が……」


運営委員は、明らかに難色を示している。


「いやもう、それはもう十分わかっておりまして! そこをなんとか、ね? 特例ということで!」


ゼウスは、神々しいオーラを完全に消し去り、ひたすら低姿勢で頼み込んでいる。


「う~ん、いくら主神ゼウス様に頼まれましても、規則は規則ですので……こればっかりは……」


運営委員も、頑として一歩も引かない構えだ。


(……たっ、頼み込むんだ……あの全知全能のゼウス様が……)


空士は、少し離れた場所から、ゼウスを見てそうに思う。


「……なんだ、ゼウス。こんなところで油を売っているのか?」


その時、遠くから、厳格な声がかかった。


「おお! テオスちゃん! いいところに!」


ゼウスは、打って変わって気安い態度でテオスに駆け寄る。


「今回は後継者はつれてないの? ゼウス」


「ああ、修業中でな。とても大会どころじゃないんだよ」


テオスは、簡潔に近況を返す。


「ちょうどいい! テオスちゃんからも、この人にお願いしてよぉー」


ゼウスは、馴れ馴れしくテオスの肩を組みながら、彼を運営委員とアレスの前へと近づけてきた。


瞬間、アレスの全身に、氷水を浴びせられたかのような寒気が走る。(……テオス……! コイツが! ……古代から我ら悪魔と数万年の争いをしている、宿命の天敵! まさか、こんなところで出会うとは……!)アレスはテオスを知っている。悪魔族にとって、その名は恐怖と憎悪の対象だ。


「……ン? コイツは……悪魔じゃないか? ゼウス、どういうことだ?」


テオスは、すぐにアレスの正体に気づき、鋭い視線を向ける。アレスは、咄嗟に身構えた。


「いやー、やっぱめざとーい! 流石だよ、テオスちゃん! こと、悪魔を滅ぼす事にかけては、右に出るものはいないねぇ!」


ゼウスは、わざとらしくテオスを持ち上げる。


「……なんだ、ゼウス。はぐらかすな」


テオスはいぶかしんでいる。


「いやね、この悪魔がさ、どうしても神々の闘技に参加したいって言うんだよ! な? 若者の熱意は買ってやりたいじゃない? 君の威光で、どうにかなんない? ね?」


ゼウスは、ウィンクしながらテオスの協力を求める。


「……悪魔が? 神々の闘技に? お前、何を企んでいるんだ、ゼウス」


テオスは、完全に訝しんでいる。


「いやいや、純粋に若者の熱意にほだされちゃってさ。ほら、彼の目を見てみなよ。なかなか……」


ゼウスが言いかけた時、ふと何かに気づいたように、通路の向こうを指さした。そこには、異様なほどの殺気を放つ神が、後継者らしき者を連れて、こちらに向かって通りがかろうとしていた。


「……おお、シヴァ! ちょうどいい! 君からも、この委員さんにお願いしてくれないか? この悪魔くんを出場させたいんだ」


ゼウスが声をかける。シヴァと呼ばれた神は、アレスを一瞥すると、ただ一言、ぶっきらぼうにつぶやいた。


「……おれは、何だろうと、破壊できればいい」


(こ……こいつは、なんだ……?? さっきのテオスとは質の違う……純粋な、絶対的な破壊の意志……圧倒的な殺意を感じる……!)


アレスは、本能的な身の危険を感じた。全身の毛が逆立つような感覚。(……こいつ、本当に神なのか?? 悪魔であるオレ以上に、よっぽど……)


シヴァは、アレスを値踏みするように見やる。その視線は、絶対零度のように冷たい。向けられただけで、アレスは金縛りにあったかのように動けなくなる。魂の奥底から湧き上がるような、底知れない恐怖が全身を支配する。


(……こいつは……まずい……桁が違う……強い……!)


アレスは、ただ圧倒されるしかなかった。さらに、シヴァのよこにいる男――後継者だろうか――からも、鋭く冷徹な視線を感じる。


「――じゃぁー、決まりだ! 最高神のお三方が認めたんだから、特別枠で出場、決定ね!」


ゼウスが、有無を言わさず、強引に決めつけた。


「お、おい待て! おれは何も認めてなど……!」


テオスがあせるが、ゼウスは聞かない。


「まあまあ。若い悪魔の実力、間近で見といたほうがいいんじゃない? テオス! きっと参考になるって!」


ゼウスがテオスの肩を叩きながら迫る。


「……う……。まあ、それは……気になる、が……」


結局、テオスは押し切られてしまった。


「――という事で! よろしくお願いしますね、委員さん!」


ゼウスが、満面の笑みで運営委員に迫る。


「…………はぁ……。最高神ゼウス様に、一神テオス様、そして破壊神シヴァ様……最高神の皆さまが、そこまでそういわれるなら……仕方ありません……。今回限りの、特例中の特例ですよ……」


運営委員は、深いため息をつきながら、しぶしぶアレスの出場を認めた。


「ほ……ほんとか⁉ ……本当に出れるのか! やった……!」


嬉しさがこみ上げ、アレスは思わずガッツポーズをした。悪魔である自分が、神々の闘技に出られる。それは、不可能だと思っていたことだった。彼は、込み上げる興奮のままに、高らかに叫んだ。


「見てろよ! おれは、悪魔で最初の神になる!!」


その宣言に、テオスは驚き、周囲にいた他の神々も注目する。悪魔が、神になると? 前代未聞の言葉に、闘技場の受付は、一瞬、異様な静寂に包まれた。


「……いや、だから、それは、ちょっと違うんだけどなぁ……」


ゼウスは、アレスの背中を見ながら、少しだけ後悔したような、複雑な表情で呟くのだった。



『神々のリセット 女神と悪魔』、最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

貴谷一至です。

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