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駄目なのはこいつ


駄目なのはこいつ…?

どういうこと?



少女?の言葉の真意を求めてロイドの顔を見やると——


「……」

ロイドは黙って顔を逸らした。

反応を見るに、内容までは分からないが何かいけないことはしている様で、少女?の言っていることは正しそう。


で、偶然街中で会って修羅場…と。

旅の幸先は良さそうだな。



「な、反応見ればわかるだろ?」


顔を逸らしたロイドの代わりに少女?が得意気に答えた。

ほんとにずっと年上か?と疑わずにはいられないほど、その鼻にかけた表情には幼さが見える。


「え、ええ、まあ…」


「さて、傍付きの少年には理解してもらったところで」


少女?が標的をロイドに戻す。


傍付きじゃないです…

喉元まで出かけた言葉は少女?のロイドに向けた針より鋭い視線によって引っ込んだ。




「ば、ばしょを変えませんか…?ここだと人も多いですし…」


少し震えた声のロイドが久しぶりに喋る。

相手の機嫌をこれ以上損ねないよう、言葉遣いと間と表情に最大限気を遣って。



「……」


少女?は表情を一切変えないまま、辺りを見回すと

「まあ、一理あるか…」

と静かに呟いた。



「続きはうちに着いてからだ。ついてこい」


指をクイクイと動かした少女?は両手に紙袋を抱え、回れ右をする。


「…ロイド先生、何しでかしたんですか?」

前に聞こえないように、口元に手を当て小声で尋ねる。


「…んー、話せば長いです」


…そうですか。

この後たっぷりと説教される様子が目に浮かぶ。


「ところで、目的の人の方は一旦後回しですか?」


「ん?後回しではありませんよ?」


「え?」


困惑する僕を横に、ロイドは遠ざかっていく少女?の背を指さして一言。


「彼女ですから」




「……」


「なんですか、その視線は…」


用って、これ?

僕の旅の最初の出来事、説教の付き添い?

一人で怒られるの怖いからって、連れてこられた?


「ち、ちがいますよ。これは偶々(たまたま)ですって。ほんと別の用があるんですよ」

気持ちを読み取ったのか必死の弁明が始まる。


「はいはい、とりあえず話は着いた先で聞きますからね。行きますよ」


「あ、信じてませんね?まあ、いいでしょう、話せばわかってくれるはずですから、続きは向こうで」


僕たちは、後ろなど一切気にすることなく自分のペースで歩いていくウェーブのかかった長髪が揺れる少女?の背中を追った。











————————————————



絵本にできてきそうな、三角の屋根に煙突がついた家のドアの前で少女?が足を止める。


「おいロイド、開けてくれ」


手がふさがっている少女?が顔をロイドに向けると、俊敏な動きでロイドがドアを開けた。


「入っていいぞ」


「「お邪魔しま~す…」」


僕たちは絶対に当たらない頭をそっと下げて敷居を跨いだ。




外観が幻想的なら室内もなのか。

なかなかに広い部屋の中、まず目についたのは、素材の味が出るようにか最小限の加工で済まされている木目の綺麗な低めのテーブルと、それを囲うように配置された四つの丸椅子だ。

切り株を椅子にしたみたい。

外で見た屋根の煙突に繋がっているであろう壁際の小さな暖炉は、今はついていない。


奥にはキッチンの他に、別室へと続くドアが見える。

こんなに広いのにまだ奥があるんだ~



「適当にかけててくれ」


そう言うと、少女?は肘でドアを開け、袋を抱えたまま奥の部屋に消えていってしまった。


「…座りますか?」


「私はやめときましょうかね…」


それがいいと思います…

先生が立って待つなら、僕も座るのはやめとこうかな。


しばらくもしないうちに、両手を払いながら少女?が戻ってきた。


「なんで立ってるんだ?座ってていいって言ったのに」

主に僕の方を見ながら少女?が呟く。


「僕だけ座るのも違う気がして」


「傍付きも大変なんだな」

フッと笑って奥のキッチンに向かう少女?に


「僕は傍付きじゃないです」

と今度こそ本当のことを伝える。



「ん?そうなのか?てっきり…」


「ああー!!…さ、こう言ってもらってることですし、エミル、私のことはいいから座ってください」


被せるように声をあげたロイドに背中を押される。


「お前、エミルっていうのか。こいつの言う通り、こんなやつのことはいいから座っていいぞ」


ティーカップを両手に少女?がテーブルへ歩み寄る。


ここは従っておこう。

そう気持ちを決めると、少女?斜め前の椅子に座った。



持っていたカップのうち一つを僕の前に置いた少女?は「さて」と一つ息を吐くと、

「私はドリス。今日は後ろに立ってる馬鹿のせいでお前には迷惑かけるかもしれないが、ひとまずよろしくな。エミル」



先ほど道端でロイドを睨みつけていた人間と同一人物とは思えないほどの明るい笑顔で手を差し出してきた。

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