第一回お勉強会!
「その意欲、素晴らしい…」
ロイドの片眼鏡がキラリと光った。
なんか変なスイッチ入った…?
「いいでしょう。ここからは私のことは先生と呼ぶように」
そう言うと大してズレてもいない眼鏡を直した。
「…ロイド先生。こんな感じですか…?」
一応乗っかってみる。
「うんうん。いいですね~私憧れてたんですよね~先生って呼ばれるの」
より一層目を輝かせたロイドが繰り返し頷いて言った。
先生って、学び舎みたいなところに集まった子供達に、物事を教える立場の大人の人が呼ばれるあれのことだよね?
一対一でも先生って言ったりするのかな?
まあ、なんか嬉しそうだしいっか。
「それで、今日は何を教えてくれるんですか?先生」
「そうですね~あの日の帰り道ではどこまで話しましたっけ?」
続きからというわけですね。
確か…魔道具っていうのは、大昔に発展していた魔法文明?時の産物ってことと。
「あと、理由は分からないけど魔法の文明?は無くなってて、今は魔法は使えないみたいな…」
「…そうですそうです。良く覚えていましたね」
ロイドさんももちろん覚えていましたよね…?
目は合わない。
馬車を操っている以上、前から目が離せないのは当たり前だが。
「この前は時間の都合で簡潔にしか話せていませんでした。ですので、今回はもう少し詳しくいきましょうかね」
「はい、お願いします」
コホンと一つ咳払いをしたロイドが口を開いた。
「この世界は大きく3つの大陸で分けられ、そのそれぞれに大小様々な複数の国が存在しています」
世界の話…?
「私たちのサルベナ王国ももちろんそのうちの一つですね」
さっき見せてもらったサルベナ王国の地図。
よく思い返してみると、いびつな楕円の縁からは他の国と繋がっているであろう線が伸びていた。
考えてみれば当然の事だけど、国がサルベナ王国ただ一つなわけないか。
「姿様々な三大陸とそれらにある国々。一つ国境を越えただけでも、歴史、文化、人種、価値観、思想など、変化するものを挙げればキリがないほどです」
んー難しい。
そんな僕の心中を察したのかロイドが
「まあ、実際に肌で感じてみるのが、手短で良いかもしれませんね。いずれ国を越えることもあるでしょうし」
と微笑んで続ける。
「ですが、それだけ多種多様なそれらにも、共通するものがあります。その一つが魔道具なんです」
ロイドの口調に熱が入り始める。
「現代では製作も復元も不可能な言わば太古の遺物ともあろう魔道具。国以上に多様な姿を持つ上に保存方法も不明の魔道具ですが、奇妙なことに今もなお世界各地で発見され続けているんですよ。その数は発見されている物だけでも、数百にのぼると」
肩で息をしながら興奮した様子のロイド。
なんなら目、少し血走ってるし。
「先生、落ち着いてください」
ちょっと心配が勝つレベルのロイドに水筒を手渡す。
受け取ったロイドは中を呷ると、少しは落ち着いたようだ。
「すみません、柄にもなく興奮してしまいました」
ハンカチを取り出してそっと口元を拭った。
魔道具の話の時、こうなりがちなのは黙っとこかな。
「世界各地から魔道具が発見されて?」
続きを促すとロイドは再び咳ばらいする。
「ここからは各国が決定した方針の話ですね」
「方針?」
「魔道協定と呼ばれています…が、詳しくは手元に資料があるときにしましょうかね。内容が色々と複雑ですので」
魔道協定…
また、難しそうな言葉だ。
意気揚々と出てきたけど、魔道具を勉強するのって一筋縄じゃいかないんだな…
魔道具魔道具と言ってはいるが、実物を見たのはあの時の光る石だけだ。
世界中から見つかっているって言われても、イマイチピンとこない。
「難しい話が続きましたね。もう少し興味が持てそうな内容は…」
表情から心を読み取られたか。
ロイドは思案のためか一点を見つめて黙る。
しばらくして——
「そうですっ!」
勢いよくロイドが顔をあげた。
「わっ!」
ビックリして馬車から落ちそうになるのを寸前のところで堪える。
危なかった…
「すみませんすみません」と謝るロイドに「何がそうですなんですか?」と尋ねると「興味を持てそうな内容を思いついたんですよ」と笑顔で指を立てた。
「どんな内容なんですか?」
「前述の通り、沢山の存在が確認されている魔道具ですが。様々な評価観点から五段階に分類されるんですね~」
へー面白そう!
「あ、でもこれも協定関連の話だ…」と小さく呟いたロイドが話題を変えようとする前に尋ねる。
「魔道具全部が分類されるんですか?」
魔道具は数百もあるのに分類が五段階はすこし少ない気がする。
「ええ、分類名は下から、名、英、皇、宝、究。ほとんどの魔道具は名級に分類されますがね」
一つ気になる。
「ロイド先生が持ってた光る石はどこに分類されるんですか?」
ロイドが待ってましたと言わんばかりにニヤリと笑う。
「驚くなかれ。あの収納クリスタルは…皇級です!」
どや顔を隠すことなくそう言い放った。
あんな凄い魔道具でも、真ん中なんだ。
やっぱり、魔道具の世界って面白いや!




