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きっとまた愛してもらうから





 ワタシ―――寄生木 生寄は、目の前で血を流しながら倒れている愛しの人を見て悲しくなる。


 しかし、それと同時にとてつもない幸福感とやる気に襲われる。



 目の前で倒れている愛しい人の名前は風見 颯太。


 ワタシの元彼だ。


 ワタシの中では今でも恋人だけど。



 きっと意識は飛んでるだろうが、今の颯太くんはまだ死んでない。




「ごめんね、痛い思いさせちゃって……でも―――」




 もちろん、ワタシだって考えなしで颯太くんを刺した訳じゃない。


 これには、ちゃんと考えがある。




「―――あの世なら、2人で、永遠に、望む姿でいられるもんね」




 ワタシは言葉を、独り言を続ける。




「アナタの望むのワタシになれば、きっとアナタも認めてくれるよね」




 そう、これがワタシが颯太くんを刺した理由。




 颯太くんは、付き合い始めた頃のワタシに戻って欲しいと願った。


 だけど、ワタシがそれに応えられなかったから振られちゃった。


 なら、彼の望むワタシになれるようにすればいい。


 きっと、あの世ならワタシは望む姿になれるはず。


 しかも、永遠に颯太くんと一緒に。




「ワタシも、直ぐに向かうから。待っていてね……」




 ワタシは、おもむろに自分の腹部に包丁を刺した。


―――ワタシが颯太くんを刺した場所と、全く同じ場所に。




「あはっ」




 もちろん、焼けるような激痛が走る。


 でも、それすら祝福に思えた。




「いち、にい、さん」




 3秒数えてから、ワタシはナイフを抜く。



 これが、彼と同じ痛み。


 ワタシは、これから颯太くんと全く同じ傷で、全く同じ痛みを味わいながら死ねる。


 そして、あの世で颯太くんと永遠に一緒になれる。




「あはは、楽しみだなぁ……!」




 普通なら、もう何も考えられなくなるくらい出血してる。


 でも、ワタシはこれから訪れる幸福に胸を馳せているからか意識が飛ぶことはない。




「生身のアナタに触れられるのはこれで最後―――」




 ワタシはかがみ、倒れた颯太くんに口付けをする。


 その唇は、ワタシが一年の間望んで止まなかったモノ。



 でも、ワタシが望んで止まなかったその唇は、既に冷たかった。




 でも、それでも大丈夫。




 ワタシは、また温かい彼の唇に触れられるだろうから。







「さようなら。そしてよろしくお願いします」







 アナタはワタシへの愛想を尽かしちゃったかもしれない。







 でも、もう一度ワタシのことを好きにしてみせる。







 だって―――







―――ワタシはまだ、アナタを愛しているから。







 段々と、意識が遠のいていく。







 ワタシは、これからの幸せに胸を馳せて眠りにつく。







 愛しの彼に、再び愛されることを願いながら―――


















これにて完結です。

ありがとうございました。

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