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元カノからのメッセージ

カクヨムではもう完結済みの作品になります。



『ピコン』



 ポケットの中のスマホが鳴る。


 確認すると、予想外の人物からのメッセージだった。



 送信主は元カノの『生寄(いより)』で、内容は「今度会って話せないか?」というものだった。


 なぜ今更、そう思うのも仕方ないだろう。


 別れてから1年、一度も連絡を取っていなかった――失踪していたからだ。



『ピコン』



 新たなメッセージが送られてくる。


 今度の内容は、今回のお誘いに至った理由の説明だった。


 内容は『新しい彼氏ができたのだが、相手の束縛が強いため連絡先を消さなくてはいけない。だから()()()の謝罪も含めて、最後に一度会って話したい』というものだった。


 別に僕は彼女のことを嫌いになったわけではない。


 ただ、少し行き違いがあっただけ。


 まあ、それが致命的な行き違いになって別れたのは言うまでもないのだけど。


 新しい彼氏ができたのなら、きっと僕に対する()()も落ち着いたのだろう。


 その後、恋人に生寄と会う旨と理由を送信し、確認を取る。


 メッセージにはすぐ既読がつき、『OK』のスタンプが届く。


 僕は、恋人からの了承を確認してから、生寄に了承のメッセージを返す。


 すると、すぐに返信が来る。



 内容は、日時と場所の指定だ。


 そこは、僕と生寄が分かれる前最後にデートしたところで、付き合っていたころは行きつけだった喫茶店だ。



 僕は、予定を確認してから了承のメッセージを送り、スマホを閉じる。


 生寄と会うのは、楽しみでもあり怖くもあった。




♢♢♢




「ブラックコーヒーを、お願いします」


「かしこまりました。少々お待ち下さい」



 喫茶店に着くと、まだ生寄は居なかったため、コーヒーを注文して待つことにした。


 とは言っても、今は集合時間30分前の15時30分だ。


 いなくて当然だが、生寄はいつも1時間前には来ていたため早く来たが―――



「あいつも、変わったんだろうな」



 それは、とても嬉しいことではあるが、彼女が自分とは違って成長しているという事だ。


 自分だけ成長していない、それが少し嫌でもあった。




―――10分後




「待ち合わせです」



 そんな言葉が聞こえてくる。


 その声は、とても聴き慣れていて、美しい声だった。


 彼女は店内を見まわし、こちらを見つけると僕の座っているテーブルにやって来る。



「久しぶりだね、生寄」


「うん。久しぶりだね、颯太(そうた)くん」



 僕の目の前に腰掛ける女性―――


 僕の元カノの『寄生木 生寄』だ。



 彼女の外見を表すなら、大和撫子という言葉が相応しいだろうか。


 長い黒髪に、深碧眼。


 芸術的なまでに整っている顔。



 以前彼女は、僕の好みに合わせた外見をしていた。


 しかし、今は出会ったときと同じ、素の彼女だった。


 まあ、化粧をしている以上素と言えるかどうかは分からないが。



「戻したのか」


「えぇ、もうアナタの好みに合わせる必要はなくなったから」


「そうだね」



 会話が続かない。


 これなら付き合い始めた時の方が会話出来ていたかもしれないな……。



「アナタは今、彼女さんいるんだよね?」


「いるよ。どこでそれを?」


「少し前まで、アナタのアカウント見てたから」



 少し前まで、というのなら今は見ていないのだろう。


 これも新しい恋の影響だろうか。



「彼女さんいるのにワタシと会って大丈夫なの?」


「うん。許可は取ってる」


「彼女さん心が広いね。ワタシとは大違い」



 彼女は苦笑する。


 確かに、恋人は心が広いだろう。


 だけど、別に生寄の心が狭い訳じゃない。



「別に君の心は狭い訳じゃないよ?」


「ううん、あの時のワタシは自分でも不思議なくらい頭がおかしかった。改めて謝罪させてほしい」


「別に謝罪はいらないよ」


「ワタシがしないと気が済まないの。ただの自己満足」


「……そこまで言うのなら、君の謝罪を受けるよ」


「ありがとう……。あの時は、本当にごめんなさい」


「こちらこそ、やり方が少し強引過ぎた。ごめん」


「ワタシに謝られる筋合いなんてない。あれはワタシのことを思っての決断だっただろうし」


「そう、だね…… 」



「「…………」」




 僕と生寄の間に、沈黙が流れる。



「それじゃあ、最近の話題とか話さない? 気まずいまま最後にしたくないし」


「……そうだね」



 彼女は本当に変わった。


 いや、元に戻ったと言った方が正しいかもしれない。


 どちらにせよそれは―――



 お互いにとって、とてもいいことだった。







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