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言い過ぎリリ

短めです。

 圧倒的な魔力量と、練り上げる魔法の質におっかなびっくりしながら金属質な魔法杖をしっかりと握る。巨人から人間型に変化した時から油断はしなかったが、より一層警戒を高める。魔法を放たれたら一瞬で逃げられるように飛翔の魔法が込められた魔法陣にゆっくりと魔力をこめる。微細な魔力操作は苦手分野であるので、少しでも気を抜いたら暴発して宇宙にまで飛んでいきそうな雰囲気を感じてしまう。正夢でない事を祈るのみである。


 そんな祈り半分で、相手の出方を伺っている現状なのだが、妙に集中力が無くなっているのが目に見えて分かる。


「(何が原因・・・? まさか敵側の増援?)」


 最悪の場合が頭に浮かび、ツック達に指示を送る。


「『直ぐに周囲を魔力探知。別の反応があったら直ぐに教えて』」


 と命令を送ると直ぐに返事が返ってきた。ほぼ片想い中の彼女に送るメール並みの返信速度である。生まれてこの方恋愛なんてした事ないけどね!

 自虐を混ぜながら問いを確かめる為に自身でも魔力探知を行う。送られてきた返事は


「『1つ、正確には5つの反応が確認できました。マスターの情報に沿って判断すると太陽の沈む地平線側から頭一つ抜けて向かってくるのが炎魔術師、そして残り4つの反応は残りの5大属性の魔術師達です』」


 である。味方の増援、しかも魔術師の助力となればこれ程ない最高のモノなのだが私が今立ち向かっている立場で考えると最悪である。功績を取られてしまう、とその一点のみで判断すると他の創法書に登場する生物が現れた方がまだマシであった。その場合は三つ巴の大怪獣バトルが勃発して、魔法国どころかこの地上を破壊し尽くすけどね。と、私は冷静に返します。マジ最悪・・・。若干のJKリリが混じってしまう程ちょっと危ない状況である。

 功績が取られるのもそうだけど、今の私は一端の民間人が勝手に戦闘に参戦している。戦闘実績も、後ろ盾もないか弱き乙女の我が儘でこの場にいるのだ。最悪、状況を悪化させたとかそんな理由で牢屋に入れられる可能性もあるし、そしたら魔導術師への道は一瞬で途絶えてしまう。魔法国に多大な功績を与える人物はそう簡単に牢屋に入らないのだ。

 そう考えると早めに沼の錫杖を倒し、功績を作るしかなくなる。救国したとなれば幾ら魔術師だろうと突っかかってこれないだろう。


 自分を守るため、強いては未来の魔導術師リリを実現させる為に決意を改める。ルリの報告によれば最初に到着するのは炎魔術師なのだ。完全に弱点属性の魔術師参戦にどこか見破られている感じを覚えるのが心残りである。逃げ腰だった私を鼓舞する。がんばれ私。がんばれ今日も。


「沼の錫杖、巨人から巨乳の女になる特殊性癖はとても目の当てられたモノではないけど、そんな貴女でも救われる道がある! それは私に倒され、後世に伝えられる程にボコボコにされる事! そして無様に地面に這いつくばる姿をネットにアップする事! 今すぐSNSに『私は闇の超越者がいないと只のラブドールにしかなれない存在です。悔い改めます』ってアップする事! それが貴女にできる最後の救済です、死ね!!」


 そんな私の全力を出した罵倒にやっと反応を示した沼の錫杖。今までの冷静沈着な表情からは想像できないほどの極太の血管が浮き上がり、般若のような笑顔を見せる。


『言ってくれますね、ええ、言ってくれましたね・・・良いです、ノってあげましょうその挑発に。「濁流の汚水」』


 魔法を背後に発動した彼女は、濁流の勢いで加速させて50メートル走の距離を一瞬で駆け抜ける。気が付けば目の前に般若の彼女が居た。やばい攻撃が来る、と確信できていたので直ぐ様に展開させていた魔導具を開放する。発動する魔力の消費を感じる前に飛翔の魔法をフルパワーで発動させ、その場から撤退する。入れ替わるように爆発が連鎖する。


「『連鎖爆蝶』自動で追尾する爆弾だよ。デザインは凝って蝶にしたけど気に入ってもらえたかな? あれ、気に入らない? なら追加だね『神殺しの震槍』、そして『伝熱する融解』。これはちょっと刺激が強すぎるかな?」


 爆発の爆炎で視界を塞ぎ、天から降ってくる震槍を確実に体に触れさせる。当たった瞬間、槍に刻み込んだ魔法が発動する。それは決して離さない炎の鎖である。熱で拘束し、表面を溶かし、結合させて無理矢理でも剥がせない最強度の鎖になる。

 流石にこれだけではトドメはさせていないだろう、と判断するが決して小さくはない怪我は与えられたと確証する。幾ら特筆した存在だろうと事象を刻む魔導具には耐性は持ち合わせていないだろう。

 そう考えていたのだが・・・爆炎が人為的に一瞬で晴れる。そこから出てきたのは全身を欠損させた沼の錫杖の姿だった。やっぱり効果はあったんだ! と、結果を見て自信に繋がったのだがそれは一瞬で壊される。


『別に痛くも痒くもないが、それでもこの姿を壊されるのは癪に触るな。よし、こうしよう。鬼ごっこって知っているか?』


「いえ、存じ上げません」


『そうか、なら体感して理解してもらおうか。「迫る泥の使徒」』


 はい、錫杖が本体パターンです。

 手に持った錫杖が一瞬輝き、壊れた体を一瞬で修復する。それと同時に放った魔法が具現化する。塊の泥が召喚され、それが何十にも分裂し、痛々しいデザインの槍を持つ茶色の装束を着た天使っぽい人たちになった。その姿はどれもが可愛らしい、綺麗な女性達で・・・そのどれもが殺意の篭った視線を向けてきている。

 何の宣言もなく、一斉に襲いかかってきた。


「あー! 美女に追いかけられて嬉しくなる性癖だったら良かったのにな!! クソ!!」


 魔法杖に腰掛け、加速する。頭上で待機している二人に命令し、高度をそのままに下級の魔法で援護するようにする。気分は超高速空中レースである。圧倒的なスリルと、高揚する心地良さががあるが魔の手はすぐ真後ろまで迫ってきている。鬼ごっこ、の意味であっているらしく、魔法とかの特殊ルールは適応されていないみたいだ。これが数十の魔法を避けながらの一対多数の構図だったら泣き出すまであった。現状でも泣きそうだけど。


「ひぃ、ちょっ、槍の風切り音が耳元で聞こえるんだけど!? もう、『連鎖爆蝶』!!」


 収納くんと空間を繋げたローブの中の魔法陣から多数の蝶が射出される。それは激しい爆裂音を響かせ・・・数を何十にも増やす結果を伴った。あ、破壊は飛び散るって判定なのね。

 反省を生かせる私であるが、その反省で生み出された結果はとても手放しで喜べるモノではない。発見と結果の比率が先進国と発展国の株くらい違う。

 さて、どの魔導具で対処しようかと考えていると流星かのように一つの塊が降り注ぎ、迫ってきていた泥の使徒を一網打尽にした。・・・あれ、到着早すぎない?


「炎魔術師、フィール・ルガルツ。覚えなくても良いぜ、送別の言葉として受け取ってくれな?」


 自信満々に自己紹介する彼と、数秒のタイムラグがあって目が合う。


「あ、どうもリェイリー・ロイです。リリって呼んでもらえると・・・」


「親切にどうも、フィールです。炎魔術師って立場だけど適当に接して貰えると・・・」


 そして上から下まで舐められるような視線を向けられる。


「って、お前軍人じゃねえな!? 何で民間人が創法者ファビー、(ファンタジービーストの略)と戦ってんだ?」


 委託? と聞かれ、独断と返答する。直ぐに手を掴まれ、その場から離れるように連れ去られた。

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