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ex02-06 成仏してください

「ギィヤァァァーー!」


 深夜のコズメズ密林。

 その奥深くにある洋館にて断末魔のような悲鳴が響き渡る。


「待てやコラァ!!」


 十字架を振り回し亡霊を追いかけ回す化けも……シスター。


「ちょっと待てぇ! 何だって攻略し終えたダンジョンにわざわざまた戻って来たんだぁぁ!?」


 声の主は、以前退治したはずの“キキーナ・シャバキオ”の亡霊。


 ――例の絵画の事件後、暫くはコズメズ密林も静かだった。

 けれど、ここ最近になってまた変な噂が広がり始めたのだ。


『夜になると洋館から女性の泣き声が聞こえる』

『ピアノが勝手に鳴り出す』

『古い絵画の目が光る』


 などなど。

 そこでまさかと思って来たみたら、ビンゴだった。


「まてまてまて! ここは平和的に話し合いを……」


「ここにきて命乞いとは往生際が悪いじゃないかい。いつぞやの恨み、晴らさせてもらうよ――潔く観念しな!」


 慈悲を請うキキーナ夫人に向かい、薄ら笑いを浮かべ十字架を振り上げるシスター。

 いやいや、迷える魂に神の慈悲を与えるのが仕事じゃないのか……?

 もうどっちが悪役か分かんねぇ。


「ギェェェ!」


 シスターの会心の一撃が炸裂しぶっ飛ばされたキキーナの亡霊は、フラフラと壁に掛けてあった絵画へと逃げ込んでいく。



「――はいゲット!!」



 ―――



「いやー、案外とあっさり終わったもんだね。欲しい素材はそれだけでよかったのかい?」


 森の洋館から工房に戻り、一息つくシスター。


「あぁ。バッチリだ」


「それにしても例の亡霊が復活して悪さしてるってよく気づいたね」


「あぁ。例の事件以来、あの洋館は立ち入り禁止になってたんだけどさ。それはそれで面白がって肝試しにくる連中が後を絶たなかったかったらしいんだよ。そんな中で怪しい噂がチラホラと出てきたもんだから、もしかして……と思ってさ」


 まぁ、噂はどれも怪談じみたものばかりで実害は今のところ報告されてなかったんだけど。

 その点では根城を肝試しスポットにされたキキーナ夫人には同情する。


『おいおいおいおい! 待て待て! お前何してる!? 私をどうするつもりだ!?』


 キキーナ夫人を閉じ込めた絵画を持ち、煮えたぎる窯の前に立つティンク。

 ちなみに、絵は強力なお札で封印してあるのでそう簡単には出てくる事は出来ない。


「何って? 錬金術に使うのよ」


 あっけらかんと笑って答えるティンク。

 ちなみに、ティンクは先の事件で騙された挙句報酬も貰えなかった事に相当ご立腹だった。

 恨みを晴らすまたとないチャンスなんだろう。


 ニコニコ顔のティンクを尻目にレシピを確認する。



【絶叫の小瓶】

 服薬した者のトラウマを呼び起こし発狂させる妙薬。

 服薬量や、その者の抱える恐怖の大きさにより効果は増減する。服薬時に過去の恐怖を連想させるような物、状況を用意しておく事でさらに効果を高める事が可能。

 肉体に害を成すような毒性は無いが、精神に著しい負担をかけるため用量には注意。


 素材

 ・ポンポン草 特性“破裂”

 ・カミナリ石 特性“轟音”

 ・ホワイトホローの悪戯 特性"悪夢"


 ここまでは街の道具屋や錬金術屋で揃ったんだけど、1つだけ何処にも売ってない素材があった。

 それが……


 ・いわく付きの絵画 特性"恐怖"


 中々のレアアイテムで普通は市場に出回らない。

 まぁ呪われたアイテムだからな。普通は誰も欲しがらないだろう。

 街の道具屋には当然無いし、王都の店に問い合わせてみても長い間入荷は無いとの事だった。


 国外から取り寄せるにしてもあまり時間は無いし……と困っていたところに例の噂を聞きつけたのだ。

 絶対に行かないと言い張るティンクと、行き先を告げた途端に絶望みたいな顔したちびっ子達は置いて、今回はシスターと2人でサクッと採取してきた。



「いやー、一か八かだったけど今回は助かったよ」


「なーに、不覚を取らなきゃこれくらいどうということない相手さね。アンデット絡みの依頼があったらいつでも頼りな」


 親指を立てながら白い歯を輝かせるシスター。

 丁度時間切れになったのか、そのまま輝く光の中へと姿を消す。

 ……お、男前っス。



 何にしても、こうも簡単にレアアイテムが手に入ったんだから、前に騙された分は充分に元が取れたと言っていいだろう。


「しかし、あんたも懲りないなー。シャバキオさん」


 机の上に置いた絵画に向かって声をかける。


「よっぽど深い怨念があったのねー」


 釜を覗きながらウンウンと頷くティンク。


「それはそうだとも! ――貴様らには特別に聞かせてやろう。我がシャバキオ家が抱える業、そして私の怨み! この怨念を晴らすまで私は何度だって――」


 バキッ!


「はいはい、成仏してくださいねー」


 絵の中で力説を始める亡霊にはお構いもせず、ティンクが絵画を真っ二つにへし折り煮えたぎる釜へと押し込む。


「アチチチチチーー!」


 釜から響く絶叫。

 素早く残りの素材を放り込む。


「そんじゃ、悪く思わないでくれよ」


【絶叫の小瓶】のレシピ――発動!



 いつもの淡い光が立ち込め、釜からポーションが飛び出してくる。


 歪に歪んだ薬瓶。

 その中で蠢く黒に近い濃紺の液体。


「よし、無事に完成だな」


「何とか間に合ったわね」



 素材は必要量の4倍で造ってある。

 絵画も本来は破片で良い所を丸々1枚放り込んだ。


 アイテムを譲渡してもらうため、さっそくポーションを床に撒く。

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