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ex01-08 GA18-100X

 橋が閉鎖されているため街道を行き交う人は殆どおらず、町を出て20分程で昨日の場所まで来ることができた。


 現場では昨日よりも多くの騎士達が集まり各々に状況報告や装備の点検を行っている。

 道の端には運び込まれた物資が積み上げられ、簡易テントで造られた司令部まで作られている。

 さながら小さな野戦拠点だな。


 とは言え……実際に野戦なんか殆ど経験したことも無いモリノ騎士団。

 冬の晴れ間の元、特に切迫した様子もなくいつも通り穏やかな様子だ。



「――良かった! 間に合ったみたいね! 責任者は何処!?」


 そう言いながらシェンナが馬車から飛び降り、人の集まっている方へ駆け出す。


「ちょっとすいません! 錬金術師のマグナスです! 通してください!」


 シェンナの後を追い、騎士達の間を縫って前へと進む。


『おぉ。ジェイドのとこの弟さんか』

『お、何だ何だ? さっきツレだって言って子達も美人だったのに、また美人連れて来て……"色欲"は伊達じゃ無いなぁ』


 軽口を交わしながらも、騎士達が前へと通してくれる。

 最前列まで抜けると――例の"がーどろぼ"が見えてきた。


 そして、橋を挟んで川の向こう側も騎士団の小隊が展開している。

 王都から派遣された増援だろう。



「あ、シェンナー! こっちこっち! ねぇ、アレ見て。あんまり見た事ない型だよ」


 先に通されていたアイネがこっちに向かって手を振ってくる。



「――GA18-100X!? 対魔兵器特化の最新型じゃない!」


 対象を確認するなりシェンナが驚いたような声を上げる。


「な、なんかマズいのか?」


「ん~、魔兵器による魔力攻撃を想定した特化型だから、多分魔法の利きが極端に悪いはず――」


 シェンナが話していると、大人の背丈ほどある火球が飛来し“がーどろぼ”を直撃!

 大きな火柱が上がる!


 丁度対岸に展開していた魔法兵が魔法攻撃を仕掛けた所のようだ。



「うわ!? アレが本物の魔法――凄い!」


 燃え盛る炎を唖然と見つめ、アイネが驚きの声を上げる。



 ――けれど、“がーどろぼ”は傷一つ負った様子はない。

 一つ目を赤く光らせ、対岸に向け左手を構える。



「――総員退避ーー!!」


 川の向こうから号令が聞こえてくる。


 がーどろぼの腕が光り、光弾が射出されると同時に対岸で爆発が起こる!

 着弾点付近に居た騎士が何人か逃げ遅れ吹き飛ばされるが、直ぐに起き上がりよろよろと走っていく。

 幸い重傷者は出ていないようだ。


 燃え盛る炎の中、何事も無かったかのように元の態勢に戻る“がーどろぼ”。



「……マジか。中級魔法の直撃で全くの無傷かよ」


「やっぱり魔法はダメみたいね。――とにかく急いで止めさせないと!! 責任者は!?」


「シェンナ、何そんなに慌ててるの?」


 慌てるシェンナとは裏腹に、呑気に聞き返すアイネ。


「ちょっと! 忘れたの!? あのタイプのガードロボは、警護モード中に一定量以上の攻撃を受けると迎撃モードに移行するのよ!」


「……えぇーー!?」


「授業で習ったでしょ!!」


 慌てふためくアイネの脳天にシェンナの手刀が刺さる。


「いたっ!」

 頭を押さえて恨めしそうにシェンナを見るアイネ。



「……つ、つまりどういうことだ?」


 何か大変な事が起きてるのは分かるが……説明を求める。


「つまり、こっちから攻撃し過ぎると、キレて向こうから襲ってくるの!」


「……えぇーー!!」


 あんなのに本気で暴れられたら騎士団どころかこの辺の地形すら変わりかねないぞ!?

 シェンナを連れ、隊列の先頭で事の成り行きを見守っているダリア隊長の元に向かう。



 ――――



「ダメです。やはり効果は見られません」


「そうか。……魔法でもダメとなると後は近接戦だが……そうなるとあの反撃は中々の脅威だな」


 ダリア隊長の元に集まり、兄さんや他の騎士達が作戦を話し合っている。


「すいません! 通してください!」


 周りの騎士達を押しのけ隊長の元へ駆け込む。



「おぉ、マグナス来てたのか? どうしたそんなに慌てて?」


 俺に気づいた兄さんが作戦会議の輪に入れてくれる。


「ん? そちらのお嬢さん達は?」


 シェンナ達に気づいた隊長が問いかけて来る。


「あ……えと、錬金術師の知り合いです! アレについて詳しいそうで、力になってくれるという事で連れてきました」


「初めまして、シェンナ・ノーブル・フェイオニスです。よろしくお願いします」


 いかつい騎士団の面々に囲まれながらも、一切物怖じせず堂々と自己紹介するシェンナ。

 ――肝が据わってる所までティンクにそっくりだな。


「隊長のダリアだ。助力感謝する。さっそくだがアレは一体――」


 握手を交わしながら、隊長が話しを切り出す。

 が……


「――その前に! まずアレに対する攻撃行動を即刻中止させてください。このままだと大変な事になります!!」


 シェンナが慌てて隊長に要請する。


「ち、ちょっと待ってくれ。現在本隊は対岸部隊の方で、指揮権は私に無いのだよ。一応取り合ってはみるが……」


 シェンナの勢いに押され、やや面食らった様子で事情を話す隊長。

 けれどシェンナは食い下がらない。


「そんな悠長な事を言ってる事態ではありません! もしこれ以上攻撃を続けると、アレが向こうから襲ってきますよ!」


「な、なに!? 本当か!? それはいかん! おい、対岸の舞台に即刻攻撃中止を要請するんだ!」


 隊長が傍に控えていた騎士に伝令を伝える。

 それを見てホッと胸を撫で降ろすシェンナ。




 しかし――



「隊長、お待ちください!」


 近くに居た若い騎士が突然隊長を止めに入った。

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