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ex01-04 2つの世界

 どうにも話が噛み合わないので、一旦落ち着いてお互いの情報を共有する事に。

 工房の散らかったテーブルを雑に片付けて、なんとか4人が座れるスペースを確保する。



「えと、私達は学園の研究室でマスター……えと、先生の、瞬間移動の魔法? の研究のお手伝いをしていたんですけれど、それが失敗してここに飛ばされてしまったみたいなんです」


 しどろもどろになりながらも、青髪の少女がどうにか状況を伝えようと説明してくれる。


「ホントごめんなさい! 帰ったらうちのアホマスターにはしっかり言い聞かせておきますんで」


 見知らぬ誰かにキレる赤髪の少女。



「そ、そうですか。何だか大変そうですね……。えと、俺達の方は錬金術の錬成をしてたんですけど――あっ、うちの錬金術って少し特殊で、アイテムに関連する人物? を呼び出す? て感じで。もしかしたらそれが何か影響したのかも……」


 自分で言っておきながら、こちらも同じくしどろもどろな説明になる。

 お互いに相手の理解度が分からない以上どう説明していいのか分からない。


 案の定、青髪の少女がキョトンとした顔で聞き返してくる。


「錬金術? 召喚? ……あの、それってもしかして輝石魔法きせきまほうの一種ですか?」


 キセキマホウ?

 また聞きなれない単語だ。


「いえ、よく魔法と混同されるんですけど、魔法と錬金術は別物です。確かにどちらも魔力を原料として奇跡を起こすって点は同じですが……」


「――!」


 そこまで話した所で、赤髪の少女が驚いたように椅子から立ち上がる!


 驚いてその様子を見つめる一同。

 ちなみに、青髪の少女も俺たちと同じで驚いた側のようだ。



「――話を割ってごめんなさい! ……あの、もしかしてですけど……この町に住む方々って皆さん普通に魔力を持ってたりしますか?」


「え、ええ。人によって大小はありますけど、皆それなりには」


 それを聞いて、青髪の少女もハッと口元を押さえる。

 顔をこわばらせたまま、赤髪の少女は息を呑みながら質問を続ける。


「変な事聞くかもしれませんが――この“世界”の名前ってなんですか?」


「えと……さっきも言った通りモリノ王国の……」


「いえ、国じゃなくて、”世界”の名前です」


 世界?

 世界って言うと色々ある国とか領土とか全部ひっくるめたこの大地の全ての事か?



「――“エバージェリー”よ」


 黙って話を聞いていたティンクが口を開く。


 あぁ。

 そういえばが小さい頃に習ったな。

 あんまり口にする事も無いから忘れてた。


 けど、何で今そんな話を?


 全くピンと来ない俺とは裏腹に、驚いた様子で目を見開く2人。



「――シェンナこれってまさか……え、ウソだよね!? ……確かにマスター、転送の直前に『あん!?』とか言ってた気がするけど」


 青髪の少女がアワアワと震えて縋り付くが、赤髪の少女は深く俯いて首を振る。


 深くため息を付き、その後大きく息を吸うと――



「――あのアホマスター! “エバージェリー”まで飛ばしてどーすんのよ!!」




 ――――




「……えと、それでつまり、“シェンナさん”と“アイネさん”は――何処から来たって事なんですか?」


 ひとしきり大騒ぎした後、どうにか落ち着きを取り戻した2人から詳しく話しを聞く。


 まず2人の名前。

 赤髪で活発な方が“シェンナ”さん、青髪で大人しそうな方が“アイネ”さん。

 本名はもっと長々としたものだったが、申し訳ないけれど一度では覚えられないかった。


 共に16歳と言う事で、つまりは俺と同い年だ。

 随分と落ち着いて見えるので、アイネの方は歳上かと思った。


 ちなみに、2人共アイテムさんではなくれっきとした人間だそうだ。



 ……で、その2人が言うには――



「信じて貰えないかもしれませんけど、私達、隣の世界“キプロポリス”から来たんです」


 またまた訳の分からない事を言い出すシェンナさん。

 ……と、隣?

 キプロ……何だって?


「――えっと……つまり……どういう事?」


「えっと……なので、さっき話してた瞬間移動の魔法で、飛空艇で十昼十夜かかる距離を飛んできてしまったみたいで……」


 ひくうてい??


「あの、すいません、ひくうていとかキプロなんとかって、まだ話が全然見えなくて」


「……え? 飛空艇ですよ? 空を飛ぶ船と書いて飛空艇」


 アイネさんが手で何か形を模しながら説明してくれる。


 が、当然そんなものに聞き覚えは無い。

 空を飛ぶのは鳥やドラゴンであって、当たり前だが船は空を飛ばない。


 ふとチュラ島へ行った時に乗った巨大な鉄の船が空を行く絵が頭に浮かぶ。

 これは夢がある……というよりもはや笑い話だな。


 そんな俺の様子を見て、シェンナさんが思いついたように話を変える。


「えと、すいません。それなら“シルヴァント・ヴァン・アルストメリア”若しくは“オリジン・ロウ”という人物に聞き覚えはありますか?」


 当然どちらも聞いた事の無い名だ。

 ティンクの顔をチラッと見るが、同じく首を振る。


「――いえ、初めて聞きます」



 その返答を聞き、シェンナさんは目眩でもしたように額に手を当てて椅子に座り込む。


「だ、大丈夫ですか!?」

「どうしたのシェンナ!?」


 俺とアイネさんが慌てて声を掛ける。



「……どう言う仕組みか知らないけど、多分世界だけじゃなくて、時間も越えてるわ。恐らくここは――二世界戦争よりも相当の過去のエバージェリーよ」

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