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02-03 スライムがあらわれた!!

 道無き道を、かれこれ15分程は進んだろうか。

 茂みを抜けてやや開けた場所に出た。


「あ、ストーップ!」


 前を行く麻の服ちゃんに声を掛ける。


「見てみろ。あの木とか、いかにも何か素材が取れそうだぞ!」


 短い草花ばかりが生い茂る草むらの中に、周囲と比べて一際目立つ大きな木が1本ポツリと立っている。


「この木? 枯れてるみたいだけど何かあるの?」


 近くまで行き木の幹をコンコンと叩くティンク。


「あぁ。そこに大きな(うろ)が出来てるだろ? こういう所に色々と有るんだよ」


 大木の根元あたりに、ちびっ子2人がすっぽりと入れそうな程の大きな穴が空いている。


 中を覗き込むと……数種類のキノコが群れを成して生えているのが見えた。


「お! シロユメタケにスイホウタケ……おぉ、ヒャクヤクタケまであるな!」


「……何これ? 随分とカラフルなのもあるけど食べれるの?」


 横から洞を覗き込んできたティンクが、怪訝そうな顔をしながら拾った棒でキノコをつつく。


「いや、食用じゃねぇよ。食べても害は無いけどそんなに美味くはない。錬金術で作る薬の材料になるんだ」


「へー、今日取りに来たのって薬の素材だったのね」


「あぁ。鉱物や魔物由来の素材は採取するのに専用の道具が必要だったり戦闘が必須だったりで難易度が高いからな。その点植物系の素材は素手で簡単に取れる上に、薬は需要も多い」


 一旦立ち上がり、背負ってきた採取用の籠を地面に降ろす。

 その隙に麻の服ちゃんと木の盾ちゃんが我先にと興味津々で洞を覗き込んでくる。


 ……何だか小さな姉妹みたいで可愛い。



「周りに魔物も居ないみたいだし、この周辺で手分けして採取しよう。麻の服ちゃんと木の盾ちゃんはそこにあるキノコを採ってくれるかな。潰さないようにこうやって根本からそっと取るんだよ」


 お手本にシロユメタケを1個取ってみせる。


「わー! スポって抜けるんですね。おもしろーい!」

「わ、わかりました。頑張ります」


 さっそくキノコに飛びつく麻の服ちゃん。

 木の盾ちゃんは恐る恐る慎重に手を伸ばす。


「あ、全部とらずにそれぞれ2,3個は残しておいてね。そうすれば時間が経てばまた増えてくれるから。……じゃ、俺は周辺の使えそうな野草を採取するとして。ティンクは適当に木の実でも集めてくれ」


「適当にって、どんなの集めればいいのよ!?」


「手あたり次第でいいよ。木の実は大抵食用か錬金術の素材になる」


「ふーん。分かったわ。じゃあ何かその辺にあるやつ片っ端から取ってくるわよ」


 静かな森の中、各々に素材集めに精を出すのだった。



 ―――



 ……30分程経っただろうか。


 籠の中は木の実や野草、キノコでいっぱいになった。


「よし。あんまりいっぺんに取って帰っても処理し切れないし、今日はこの辺で退却とするか」


「はい! いっぱい取れましたねー」


 嬉しそうに籠を覗き込む木の盾ちゃん。


「はー疲れた。帰ったらすぐお風呂にしよっと」


 額の汗を拭いながらパタパタと手で顔を仰ぐティンク。


「風呂の前に、取った野草やらキノコを天日干しにして乾燥させるぞ」


「あっそ、頑張んなさい。お風呂は沸かしといてあげるから」


「え!? 手伝ってくんないの!?」


「どうせ食べられない物ばっかりでしょ? 興味無いわ」


 さも面倒臭そうにパタパタと手を振って、断固お断りの姿勢を示すティンク。


「ま、マジか。これ全部1人でやるのか……」


「ご主人様、私達まだ魔力残ってますしギリギリまでお手伝いしますから。早く帰って一緒にやりましょう」


 項垂れる俺の元に、トテトテと駆け寄って来きて天使のような笑顔を向けてくれる木の盾ちゃん。


 うぅ……泣けてくるぜ。


「ありがとう。俺の味方は木の盾ちゃんと麻の服ちゃんだけだよ。……麻の服ちゃん?」



 気づくと――麻の服ちゃんが木の棒を構えて近くの藪の中をじっと見つめていた。


「どしたの? 何か変わった木の実でも――」

「――っ! 来ます!! 下がってください!!」


 麻の服ちゃんが叫ぶと同時に、藪の中から何か丸い物が飛び出して来た!


「魔物!?」


 ティンクが手に持った木の枝を素早く構える。


 飛び出して来た魔物は、半透明状の丸い体をプルプルと揺らしながらつぶらな瞳でじっとこっちを見つめている。



 皆さんご存知――スライムだ。


 魔物の中でもその危険度は最低ランクの"E"。

 装備さえ揃っていれば子供でも勝てる相手だ。


「ご主人様! 下がってください!!」


 木の棒を構えた麻の服ちゃんと、盾を構えた木の盾ちゃんが揃って俺の前に出る。


 ……あれ、木の盾ちゃんが前衛で、麻の服ちゃんが後衛で、って作戦を立ててたような……まぁ、相手によって臨機応変ということなのだろうか。


「私達、本来防具ですけどやれば出来るってことお見せします! 盾でも服でも使い方によっては凶器になるんですから!!」


 そう言って木の棒を構え直す麻の服ちゃん。

 確かに木の盾でぶん殴られたらそれなりに痛いかもしれない。

 麻の服でどうやって戦うかは疑問の残る所だが……まぁせっかくやる気なのだからお任せしておこう。

 いざとなればスライム1匹くらいは俺でも倒せるし。



 ちびっ子2人にジリジリと距離を詰められるスライム。

 2人は()る気満々だが、一方のスライムは特に意に介する様子もなくただプルプルと体を震わせている。

 何だかちょっと可哀想な気持もしてきたが……。

 まぁ、スライムのドロップアイテムは錬金術の素材としても使えるし――すまん。ここは俺の生活の糧となってくれ。



「いきますよーー!!」


 掛け声と共に、勢いよくスライムへと突撃する麻の服ちゃん。

 彼女なりに精一杯繰り出したその初撃が打ち込まれる直前――



 スライムが真っ二つになって消し飛んだ。

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