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10-09 いつの間にか有名人

陛下の演説が終わると、楽団による演奏が始まり会場が一気に華やかな雰囲気に包まれる。

次々と会場へ運び込まれて来る豪華絢爛な料理たち。

テーブルを囲っての立食パーティーだ。


リリアとナーニャさん、それにシェトラール姫と同じテーブルを囲む。


乾杯が終わると、皆が思い思いに挨拶を交わして周る。

久方ぶりの学友と談笑する者、ライバルの動向を探る者、憧れの錬金術師に話し掛けようと隙を伺う若者、それぞれに会話が弾み会場は賑やかさを増していく。


特に人が集まっているのは、モリノの第一王女、それと第二王女の居るテーブル。

主賓クラスと思われる大御所も多く集まり、簡単には近づけない雰囲気が漂っている。


流石にあちらほどではないが、うちのテーブルにもひっきりなしに挨拶に人が訪れる。

シェトラール姫の来賓や、ナーニャさんの弟子だという若い錬金術師達。


それと、意外だったのが――俺に挨拶に来る人達だ。


『いやー、君があの伝説の“マクスウェル”のお孫さんだって? お会いできて光栄だよ』


『世間じゃ国賊だなんて言われてるけど、未だにどんな教本にも名前が出てくる現代錬金術師の父だからね。やはり錬金術師として尊敬せざるをえない方だよ』


口々に“賢人マクスウェル”を讃える人々。

……なんだ、じいちゃん。

最近はすっかり名も廃れたとか聞いてたけど、やっぱり凄い人だったんじゃねぇか。


皆、じいちゃんに敬意を払ってるのであって俺がチヤホヤされてる訳じゃない。

そんな事は分かってる。

それでもじいちゃんの事をこんなにも尊敬してくれる人達がいて、心から嬉しかった。



そんな中……


「マグナスさん! 良かった、やっとお声が掛けられた!」


人の輪を掻き分けて現れた中年の男性。


「……あ! ルルのお父さん!!」


若い男性に次々に次々声をかけられて迷惑そうにしていたティンクも、俺の声を聞いて飛びついて来る。


「わぁ! 久しぶり! ルルは元気!?」


「あぁ、ティンクさんも。お会い出来てよかった! えぇ、おかげさまで体調もすっかり良くなって元気にしています。いつもお二人に会いたがっていますよ」


「良かったー! 私もルルに会いたい! ねぇ、マグナス、今度またノウムに遊びに行くわよ!」


「はは、分かった。近いうちにな」


「やったー!」


そんな話をしていると、挨拶がひと段落ついたシェトラール姫が輪に加わってくる。


「あら! あなた達、もしかして最近ノウムで噂の凄腕錬金術師さんともお知り合いなの?」


「これはシェトラール姫。私のような無名な錬金術の名をご存知頂いているとは、光栄です!」


そう言って深々と頭を下げるルルのお父さん。


「何言ってるのよ! 連続殺人鬼の汚名を着せられ投獄された悲劇の錬金術師。その疑いが晴れ牢から解放されるや否や、たった数ヶ月のうちに長年ノウムを悩ませてきた公害病の特効薬の開発に成功した奇跡の人! 最近じゃ“サン・ジェルマン伯爵”の逮捕と並ぶノウムの大ニュースじゃない」


「恐れ入ります。はは、それもここにおおでるマグナスさん達のお力添えあってですよ」


照れたように頭を掻きながら俺とティンクの肩に手を置く。


「え!? 貴方たちもしかしてノウムの件にも関わってたの!?」


「え、いや、あれは俺は何もしてないと言うか……」


照れ隠しでも何でもなく、あの件については俺は本当に何もしてない。

賢者の石(仮)を取り返してくれたのもキティーキャットだ。

けど、その事を伝える訳にいかず有耶無耶になっているため俺が裏で事件を解決したと思われている訳だ。


上手く言い訳も出来ずしどろもどろになっていると、周りで話を聞いていた人達が一斉に集まってくる。


『そういえば、ついこないだチュラの災害を収めたのも“色欲のマグナス”さんなんですよね!? 一度お話しを伺いたかったんです!』


あっという間に俺を囲んで人だかりが出来る。


「まぁ、待ちなさい。このマグナスを“欲付き”に推薦したのはこの私なんだから。私が代わりに話を聞かせてあげ――」


シェトラール姫が扇子で口元を隠しながら自慢げに笑うが、誰も聞いていない。


『マグナスさん! 郊外にある廃墟で幽霊退治をしたって本当ですか!?』

『店に押し入った強盗を返り討ちにしたという噂は?』

『隣においでる美しい赤髪の女性はどのようなご関係なのですか!?』

『モリノ領のカトレア様とも親密なご関係とお聞きした事があるのですが!?』


おい、頼むから姫様を無視するのは止めてくれ。

輪の中から弾き出され、こめかみをピクつかせながら固まるシェトラール姫。

後で絶対に店まで小言を言いにくるんだから、勘弁してくれよ。


揉みくちゃにされながら一つ一つの質問に答えていく。

何故か若い女性が多いが……錬金術師ってこんなにモテるのか!?


人の輪の外を見ると、不機嫌そうな顔でそっぽを向くティンクと、面白い物を見るように笑うナーニャさん。

こりゃ帰ってからが面倒くさそうだ……

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