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砂塵の塔 その4

おまたせしました。約1年半ぶりに再開です。

「えっと、ここって塔の中………だよね?」

くーちゃんが、戸惑ったような声を上げる。

それも仕方がない。

だって、眼の前に森が広がってるんだもんね。


「不思議よねぇ。」


「ウン、ウン、ミカ姉もそう思うよね?」


私が漏らした言葉に、くーちゃんが、、同意を得た、とばかりにのってくる。


「ウン、とっても不思議。砂漠よりここのほうが過ごしやすそうなのに、何でみんなここに住まないんだろうね?」


「ここがダンジョンの中だからでしょうがっ!バカなことをいってないで手伝いなさいよっ!」


ミュウが、迫りくるウルフたちを斬りつけながら叫ぶ。


「えー、面倒。……いえ、ナンデモナイデスヨ。」


ミュウに睨まれて、私は魔力を貯め始める。


正直、魔獣よりミュウのほうが怖いのよ。


「アクア・スプラッシュ!」


私が魔法を放つと、周りを囲んでいたウルフ達に水球が降り注ぐ。


しかしダメージを与えた感はない。


当たり前だ、単に水浸しになっただけなのだから。


ウルフ達は、一瞬戸惑ったものの、ダメージがないと分かると、再び襲いかかるべく体制を整える。


しかし、それは甘いのよ?


「……からのぉ、エレキテルっ!」


私は続けて、別の魔法を広範囲に撒き散らす。


ちょっとした電撃を流すだけの初級魔法。


まぁ、雷系の魔法は、風と光の複合魔術だから、初級といえども使い手は中々いないんだけどね。


全身ずぶ濡れになったところに、初級とはいえ、それなりに強力な電撃を流されたらどうなるか?


「………答えはこうなるのです!」


私は、エヘン!とクーちゃんに胸を張って見せる。


「あ、ウン、それはいいけど………。」


クーちゃんが、少し困ったような顔で前方を指差す。


そこには、電撃を喰らって動けずにいるウルフの山の中で、同じ様にヒクヒクしているミュウの姿があった。


「………。」


私は無言でクーちゃんに助けを求めるのだった。



「もぅ、いい加減、機嫌直してよぉ。」


ぷいっ!


「うぅ……お肉焼けたよ?」


パクッ……プイっ!


「えーん、くーちゃぁぁん。」


「えっと、ミカ姉が全面的に悪いから………。」


「だから謝ってるしぃ。こうしてミュウの好きなお肉焼いてるしぃ………いい加減許してよぉ。」


激おこのミュウの機嫌を取るために、今夜の晩御飯はバーベキューにした。


お肉はとれたてのウルフ肉。


ちょっと筋張ってるけど、そこがミュウのお気に入りなのは知っている。


秘蔵の香辛料をふんだんに使用した、通称「山賊焼き」が、ミュウの大好物なのも知っている。


それらを駆使し、平身低頭で謝っているのに、ミュウは赦してくれない。


こうなったら……。


「クーちゃん、ごめんね。」


「ミカ姉?」


「ミュウに赦してもらうには、身体を差し出すしかないと思うの。ううん、私じゃダメだからクーちゃんの……。力の足りないお姉ちゃんを赦して。クーちゃんが汚れても大好きだからね。」


私はそう言いながら、クーちゃんの衣類に手をかける……。


「やめなさいよっ!」


背後からミュウのハリセンが襲う。


パシーンっと小気味良い音が辺りに響かせる。


「痛い………。」


「当たり前でしょ!何考えてんのよっ!」


「だってぇ、ミュウがおこだしぃ。」


「だからといって、幼女の身体を差し出そうとすなっ!」


あんたと一緒にしないでよ、とプンスカ起こるミュウ。


それでも、口を聞いてくれるようになったから嬉しい。


「ミュウ、ごめんね、ごめんね。」


ミュウにギュッと抱きつく。


「……ったく。もういいわよ。」


「フェぇぇ〜ん、ミュウぅ~。」


「あ~、よしよし。私も大人気無かっ………。だから触らないでっ!」


調子に乗って、ミュウの尻尾を逆撫でしようとしたら放り投げられた………酷い。




私達が5層のボスを倒してから3日が過ぎた。


6層以降は森の風景が続き、出てくる魔物も動物系のものが多かったため、心配していた食料については、逆にストックが出来るほど豊富になり、また新鮮なお肉が食べ放題という事もあって、ミュウのテンションも上がり切っていて、探索は驚くほどサクサクと進んでいた。


そして、今、10階層へ続く階段を前に、小休止をしている。


「なんか、アッサリとしているわね。」


ミュウが干し肉を齧りながらそういう。


「ここまでは、みんなよく来るそうですから、難易度としても、それ程高くはないのでしょう。」


マリアちゃんが、ミュウに答えている。


私達が集めた情報では、殆どの冒険者達が、この階層まで辿り着く前に、回れ右をして帰っている。


もっと正確に言えば、6階層から9階層まではでてくる魔獣も大差ないため、大抵の冒険者は、6階層で魔獣をかれるだけ狩って、そのまま帰っていく奴等が殆なんだって。


まぁ、5層のボス、キングセプターをかれるだけの腕があれば、ウルフ種程度はいいカモなんだろうけどね。


砂漠地帯に生息している生物相を見れば、圧倒的に肉類が不足しているのが分かる。


そんな地域なら、ウルフの肉程度でも極上の食材として扱われる。


であるならば、無理に探索しなくても、6層で持ち帰れるだけのウルフを狩る方が、遥かに効率よく稼げる。


とはいっても、6層ばかりに人が集まれば、狩りの効率は悪くなるから、自然と7階層、8階層といった具合に範囲は広がって行くんだけど、それは必要にかられてのことであり、必要がないのに上に行こうとする者たちはほぼ居ない。


結果として、上層に行く冒険者が激減するという現状になるんだよね。


だから10層にいるボスの情報は殆ど無いのよ。一応得られた情報をまとめると、ボスはどうやらカエルの魔物らしいんだけどねぇ。


まぁ、魔獣達に手応えがなく、少し欲求不満気味のミュウに取ってはちょうどいい相手だよね。



………………そう思っていた時が私にもありました。



「にゃわわわ〜!早くっ、早く助けてよっ!」


「わ~、ミュウお姉ちゃんっ!」


巨大なカエルに下半身を飲み込まれて、暴れているミュウ。


それを助けようと、必死に剣を振るうクミン。


ただ、焦っているせいか、巨大カエルの身体に刃が通る事はなく、表面でするっと流されてしまう。そのことが余計にクミンの焦りを生む。


「あー、もう少し待ってね。」


私はそんな二人の様子を見て、まだ大丈夫だろうと、声をかける。


幸か不幸か、カエルのは丸呑みをしようとしている。


しかし、ミュウの装備やら尻尾やらのお陰で、するりと呑み込めず引っかかっているから、今しばらくは大丈夫だろう。


それでも、ずるずると飲み込まれているから、あまり時間的な余裕はなさそうだけど。


「こっち片づけたら行くから、もう少し頑張れぇ~。」


私は目の前のカエルから視線を離さず、そう叫んでおく。


『ビックブラックトード』それがこの階層のボス。


体長7mぐらいの黒光りする巨大カエルだ。


攻撃方法は、素早く繰り出される舌による衝撃と巻き取り。そして打ち出される毒液のみ。


本体の動きは鈍いので、舌の動きにだけ気を付けていれば、それほど手こずるような相手ではない。


現に、ミュウは、その機動力にものを言わせて、ビックトードのダメージを蓄積させていった。


ミュウにとっては、階層のボスといえでも、雑魚とそれほど変わらないのである……1対1であれば。


ミュウが「余裕ね」と笑いながらとどめを刺そうとした時、視覚から突然襲ってきた舌に絡めとられ、飲み込まれてしまう。


ミュウも、とっさに反応し、丸呑みそのものを避けることは出来たけど、それでも下半身が飲み込まれた状態になってしまい、身動きが取れなくなって……今に至るのだった。


勿論、私たちもそれをぼーっと眺めていたわけじゃない。


だけど、ミュウを捕らえたブルートードと、傷ついたブラックトードを護るかのように立ち塞がるレッドトード。


奴は口から毒液だけでなく、ブレスもどきの炎吐くため、迂闊には動けない。


私が正面で引き付けている間に、マリアちゃんが、そっと背後に回ろうとしているから、ミュウにはもう少しだけ我慢してもらわないとね。


「私のミュウを、ヌメヌメに汚しておいて、楽に死ねると思わないでよねっ!」


私はブラストカノンを放つ。


レッドトードは、それを毒液を吐くことで相殺するが、それは想定のウチ。

続けてストーンバレットの乱れ撃ち。無数の石礫がレッドトードの身体に降り注ぐ。


あの、ヌメヌメとして弾力があり、見た目以上に分厚い皮膚の前では、一つ一つのダメージはゼロに等しいかもしれない。しかし絶え間なく無数の礫に晒されていたら、鬱陶しいことこの上ないだろう。


現に、レッドトードは、礫を一気に振り払うべく、口を大きく開けてブレスを吐く動作をする。


そして、それこそが私の狙い目だった。


「これで終わり……『アイシクル・ピラー』!」


大きく空いたレッドトードの口に地面から生えた巨大な氷の柱が突き刺さる。


柱はカエルを突き刺したまま、更に上へと伸びていき、5m程の高さまで伸びたところでその動きを停める。


天頂には、貫かれ息絶えた赤いカエルの姿が……。


「えっと、こういうの早贄っていうんだっけ?」


昔図鑑か何かで見た記憶を思い出しながら呟く。


「まいっか。それより……っと。」


私は赤いカエルから視線をそらし、マリアちゃんを探す。


丁度、巨大なハンマーで黒いカエルの頭を潰すところだった。


「…………。」


その光景に何も言えず、私は視線をそらす。


ハンマーの一撃で、頭を潰すなんてワザ、普通のシスターには出来ないよね……という言葉は、飲み込んでおく。世の中言ってはいけないこと、知らないほうがいい事等は沢山あるのだ。


「じゃぁ、ミュウを助けに行きますかぁ。」


私は、すでに身体の2/3がカエルの口の中に埋もれているミュウを助け出すために、青いカエルに向かうのだった。



エターナル撲滅運動第2段です。

最低限、第一部完までは更新します……出来るといいなぁ………。


ご意見、ご感想等お待ちしております。

良ければブクマ、評価などしていただければ、モチベに繋がりますのでぜひお願いします。

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