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天空城

「えっと、本当にやるの?」


「ウン、ぱぁっとやっちゃっていいよ。特製のマジックポーションも用意してあるし。」


クーちゃんが箱一杯のマジックポーションを見せる。


私は最近作ってないから、アレはクーちゃんが作ったものだろう。


……クーちゃんのポーション、効果はすごく高いんだけど、味が壊滅的なのよね。


出来れば使わずに済ませたいと思いながら、私は呪文を紡ぎだしていく。



ここは、リリスファム公女殿下の支配する土地の最西端……スカ―子爵の城の有った場所だ。

というか城そのものはまだ建っている。あの爆撃に耐えただけ立派なものだよね。


こんな所で何をやっているかと言うと、実は天空城作りだったりするの。


クーちゃんが、アイちゃんと検討した結果によるとね、現段階でもエネルギー源となる魔石が十分あれば製作可能らしいの。

もっとも、本来の機能の半分も発揮できないという事なんだけど、天空に浮かぶことと、生活していく分には何の問題もないらしいわ。


問題になっていた魔石についてはリリスファム公女が用意してくれたらしい。

スカ―子爵の事で迷惑をかけた補償とのことだった。ただ、さすがは公女様、転んでもただで起きる気はないらしく、難民の一部を引き受けるのが条件だった。


私は最初、いくらお城が広いって言っても難民を受け入れるっことが出来るほど広くないよね?と言ったのだけど、クーちゃんが言うには「天空城」というのはソラに浮かぶ領地の総称で、実際にはお城を中心に半径100㎞程の土地が宙に浮かぶんだって。

丁度私がプチっとやった土地ぐらいだって、りりちゃんが笑いながら言ってた。


まぁ、そんなに広い土地があるなら、難民ぐらい引き受けてもいいけどね。

でも、何で私が知らないことをクーちゃんが知ってるの?


「ミカ姉が知らない方が不思議だよ。ちゃんと説明所に書いてあったじゃない?」


クーちゃんの説明によれば、出来ることなどはすべて説明書に書いてあったという。……書いてあったっけ?


他にも、城の中心のコントロールコアで、天空城内の土地の改変が自由に出来るそうで、自然や環境も自由自在、ダンジョンだって作れるとのこと。

だから、希少素材が多く育つ森を設置して、天然鉱石がふんだんにある鉱山を設置、希少な素材を持つ魔獣が生息したダンジョンなんかを作れば、わざわざ素材捜しに行かなくてもいいとのこと。


「だけどね、人が住んで揶揄えたりすると、色々大変だろうから、最初の段階である程度設計しておいたほうがいいと思ったの。」

そう言いながら天空城の設計図を渡してくるクーちゃん。

って言うか、いつの間にこんなできる子になったの?


「うん、クーちゃんをミカゲ城の宰相に任命するよ。好きにやっちゃって。」

私は半分冗談のつもりでそう言ったの。

クーちゃんも「いいの?やった!」って喜んでいたから、いっかって思ってたんだけどね……、


はい、私はクーちゃんを甘く見ていましたよ。


渡された設計図と言うか、土地の区画整理表を見ながらため息をつく。


中央にミカゲ城のシンボルであるお城……私達の居住区であり、色々お仕事する場所ね。

そこを中心に円を描いて広がる城下町。

因みにミカゲ城だとエリアの名前と混乱するから、お城の名前は『ビュティー・シャドウ』、城下町の名前は、「帝都:シャドウ」もしくは「シャドウの街」と呼ばれるようになった……らしい。


帝都の周りを森や山が囲み、所々にある平原を中心に、それぞれの種族が住む町や村が作られることになる。


人族がすむエリアは、水回りが良く、畑や田んぼに適した土地が多く存在し、獣人族がすむエリアの周りには、自然の恵みが豊富な森などが多数存在する。


そして、魔族は種族ごとに適する環境が違うため、それぞれに適した環境が整えてあるそうだ。


これらを取りまとめたのは、クーちゃん、マリアちゃん、ミュウ、そしてセシリアさんだった。


因みに人族は、例の村の生き残りや、ウェスの街を中心に、私のとばっちりを受けた人々がほとんどで、マリアちゃんが、直接話をつけてきた。

その際、冒険者ギルドの支部の設置もお願いされたが、それは保留にしてある。


最終的に、どれだけの数が移民してくるかは分からないが、対応は出来るようにしておかないといけないから、と渡されたのがさっきの区画表という訳。


クリエイトキャッスルの魔法を使う際に、これをイメージしておけば、その通りに出来るんだって。


リリスファム公女殿下からは、殿下のプライベートルームに城の中への転移陣を設置することで、魔族領における行動の全面的支援を得ることが出来た。


一応監視するという名目なんだけど、アレは絶対プリンを食べに来るためだと、私は思ってる。


まぁ、りりちゃん可愛いからいいけどね。


後、セシリアさんから、帝都にカフェ紗旧葉須の支店の設置を頼まれている。

メイリンちゃんを支店長にするならいいよって言ったら、少し考えさせて、と言われた。

考えるほどの事かな?


っと、とりあえず、魔力が厳しくなってきたかな?

私はそっと自分の魔力ポーションを飲み干して魔力制御に力を込める。

クーちゃんのポーション?もったいなくて使えないよ?ウン、決して味が如何こうじゃなくて勿体ないってだけだからね。


だけど、この魔法どれだけ魔力喰うのよ。

魔法を発動し始めてから、すでに1時間が経とうとしている。

起点にしていたスカーの城は、すでにその跡形もなくなっており、代わりにぼんやりとビューティシャドウの輪郭が見え始めている。


異界の魔王サマの話では、城だけならポーション1本分だった、と言ってたけど、よくよく考えたら、あの魔王サマが城を作るだけでポーションを必要とした、という事実をもっとしっかりと捉えておくべきだったと後悔する。


だけど、この魔法、発動を始めたら、後は根性で最後まで行くしかない。

制御に失敗すると、これだけの魔力が暴走して、それこそ大陸の2/3が,塵に還る……いや、マジで。


そう言えば、りりちゃんが、天空城に移動する魔法陣に選別条件の魔法陣を組み込むって言ってたっけ?

一応、私達に敵対しない事と、多種族差別意識がない事は組み込むようにお願いしておいたけど、大丈夫だったかなぁ?


敵対しないとか、差別しないって、どうやって判別するんだろうね?


私はそんなどうでもいい事を考えながら、魔力制御に一晩を費やした。


朝日を浴びて煌めく、水晶のお城を見た時には、ハッキリ言って感動したよ。

私は最後に、起動に必要な十分の魔力を注いで、その場に倒れた。



「あれぇ、メイリンちゃん?」

目覚めた眼お前い、何故かメイリンちゃんがいる。

「あ、お目覚めですかミカゲ様?」


「んーあと5分……。」

「5分でも5年でも噛みませんが、出来れば、その、自由にしていただけると……。」


「ん~、なんでメイリンちゃん縛られてるのぉ?」

「えっと、クミンさんからの「ご褒美」なんだそうです。よくわかりませんが、解いていただけると……。」

メイリンちゃんが恥ずかしそうにもじもじしている。

下着姿で縛られていというのは、いくらサキュバスでも恥ずかしいものがあるのだろう。


「へぇ、「ご褒美」なんだぁ。」

よく見れば、メイリンを縛っているのはロープではなく赤いリボンだ。

ご丁寧にも、頭の上で大きなハートをつくっている。


「じゃxz、遠慮なく「自由」にするね。」


「あ、ちょっと、自由ってそう言う……あぁァァァァァぁ………。」


ウン、朝からタップリきゃわわ成分が充電で来たよ。ありがとうクーちゃん。


「うぅ、みかげのばかぁ。」


私が手を合わせている陰で、メイリンちゃんがぐったりとしながら毒を吐くのだった。



「わぁ、壮観だねぇ。」

「ほらほらミカ姉、こういう時は「地を這う愚民どもよ!」って言うんだよね?」


天空城から身を路した先には、ここに移民を希望する人々が集まっていて、上から見るとなかなかのものだった。


「そうだよ?そしてね「我の前にひれ伏すがよい」って言って高笑いするのよ。」

「こんなかんじ?」


二人で胸を張って、わっはっはっはっはっ!とやっていたら、ミュウが呆れた声で入ってきた。


「何バカなことしてんのよ。ミカゲにはやることがあるでしょ?」


「えー、全部クーちゃんに任せたのにぃ。」


「いいの?あなたの身の回りの世話をするメイドちゃん達に面接よ?クミンに任す?」


「ううん、すぐ行く。」


私は、キリッと表情を引き締め、面接に向かう。

この先に待っているのは、私と四六時中側にいるメイドちゃん達よ。私がじっくりと見極めないとね。


そんな私をクーちゃんが行ってらっしゃいと見送る。


「……はぁ、なぁ、クミン、これでよかったと思うか?」

「うーん、よくわからないけど、少なくとも、お姉ちゃんがここに引きこもってくれれば、被害は少しは減るよね?」


「……まぁ、上から常に狙われていると各国が自覚すれば、大人しくはなるだろうけど?」


「上からって……えっ?どういうこと??」


「この天空城からなら、ミカゲじゃなくても、簡単に各国の城が狙撃できるぞ。各国にしてみれば防ぎようのない攻撃だな……ってクミン、まさか気付いてなかったのか?」


「……あ……うん……そうだね、言われてみれば、お城の真上に行って岩落とすだけで、お城潰れるよね?」


アハハ、と乾いた笑い声を漏らすクミン。


「どうしよう、ミュウお姉ちゃん、私とんでもないことしちゃったのかもっ!」


ミュウはクミンの肩をトントンと叩き優しく告げる。


「頑張れ宰相。」


と……。


ミュウは、茫然とするクミンを見ながら、まだまだ、波乱の日々が続くのだろうなぁと、出来たばかりの市をを見上げながら思うのだった。

これにて、ミカゲ達の物語はいったん終了します。

俺達の冒険はこれからだ!ENDです。

次章にあたる魔族領侵攻編は、その内他の作品が落ち着いたら考えます。

今まで応援ありがとうございます。

出来ましたら他作品もご愛顧願えればと思います。

ご意見、ご感想等お待ちしております。

良ければブクマ、評価などしていただければ、モチベに繋がりますのでぜひお願いします。

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