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魔王ミカゲ???

「状況を整理するにゃぁ、」


「ミカ姉、まだそれつづけるの?」


私が話をまとめようとするとクーちゃんが突っ込んでくる。


仕方がないじゃない。私のもふっ子、怖がって近づいてくれないんだもの。


私がそういうと、ミュウが近くにいたキツネ耳の少女を私に差し出す。


キツネ耳の少女は、ギュっと身体を縮こまらせながらも「わ、わた、私……で満足、して……。」とか細い声を絞り出している。


なんか、私が悪者みたいじゃないのよ。……でもモフる。


……もふもふもふ。


……もふもふもふ


………モフモフモフモフ……。


「いい加減にしなさいっ!」


「あっ……。」


キツネ少女をミュウに取り上げられた。


「話が進まないでしょうがっ!」


「そうだよミカ姉。これが終わったら……精一杯ご奉仕するにゃん。」


いつの間にかネコミミ姿になっていたクーちゃんが、耳元で囁く。


くぅっ、いつの間にこんなテクを……。


クーちゃんの攻めに敢え無く屈した私は、遠巻きにしている村人たちも集め、現状の整理とこれからの行動について話し合う事にした。



「それで、現状を整理するわね。」

私が言うと、村人たちは複雑そうな顔で頷く。

多分、私が犬耳少女をモフっているからだろうけど、そんな視線は今更ね。


「まず、東側の領主軍だけど、……。」


こちらの思惑はかなりわかりやすい。

一応建前としては、逃げた奴隷とそれに協力した犯罪者……私たちの事ね……を引き渡せというもの。

といっても、そもそも、その逃げた奴隷というのが、この村から非合法に攫って行ったこの子たちの事であって、自分たちの犯罪を棚上げにしているあたり、抒情酌量の余地はないのよね。


この村は、珍しく人間と獣人が共存している。だから、比較的近隣の獣人達が集まりやすく、それなりの獣人がいるんだけど、今回の件でついでに他の獣人たちも奴隷にしようという魂胆が丸見えなのよ。


そんな馬鹿な領主軍に、このモフモフを渡すわけにはいかない。

……ここまではいいんだけどね。


「問題は西の魔族軍ね。」

私は一つ溜息をつくと、転がしてある魔族の少女に声をかける。

「もう一度聞くけど、あの軍勢はリリスファム公女殿下の命を受けてるわけじゃないのね?」


「は、ハイっ、そうですっ。率いているのはスカー子爵で、この機に人族を叩き潰して領地を広げようと目論んでいるのですっ!」


魔族の少女、エミルはぺらぺらと話す。

先程、じっくりと()()をしたら、非常に強力的になってくれたの。

エミルの話では、スカー子爵というのは、西方地域の中でも、リリスファム公女殿下の思想と相反する貴族の一人で、どちらかといえばアシュラ皇太子殿下寄りとの事。


すきあれば、リリスファム公女殿下に一泡吹かせてやると常日頃から息巻いていたそうで、そんな中、この村と領主軍の諍いを知り「人族が攻め込んでくるのを迎え撃つ」という建前の元、一軍を率いてやってきたとの事だった。


因みに、最初に領主の元から奴隷を攫ったのはこのエミルで、村に攻め入る口実を領主に与える為だったらしい。

最も、領主子飼いの奴隷商人に、この村のことを話し、子供を攫う様にそそのかしたのもエミルであり、いわば、領主はスカー子爵に攻め入る口実を与える為に踊らされているに過ぎない。


当初、領主軍は300にも満たない軍勢だった。

こんな小さな村を攻め入るのに、兵士が100もいれば十分すぎるぐらいであり、更に威圧をかけるために人数をそろえたのだろう。


しかし、時を置かずして村の西方に魔族軍が現れたため、慌てて増員した援軍を送る。


対して魔族軍は、初めから動かせる全兵力を出してきたらしく、領主軍の援軍が到着しても、それ以上の増員はなかった。


戦力的にはほぼ互角。魔物の数が多い分、やや魔族軍が有利のようだが、領主軍は攻城に使う爆砕砲を持ち出してきている。

威力もさながら、魔物の中には、その音だけで居竦む者もいる為、数の不利は補えると考えているのだろう。


そして、両軍の戦力バランスが拮抗しているお陰で、この村の安全が保たれていたりする。

片方がこの村に向かえば、もう片方がその背後をつくからね。お互いに動けずに千日手になっているというわけ。


「だからね、私たちの動きいかんで、この争いの行く末が決まるんだけど……。」


私は村人たちに目を向ける。


「あなた達はどうしたい?」


私の質問に、村人たちの間で動揺が走る。


「あなた達が取れる道はいくつかあるわ。まずは、領主軍に降伏して慈悲を請う事。」


その言葉に、村人たちが一斉に嫌な顔をする。

まぁ、領主軍に降伏したら、そのまま奴隷にされるだけだからね。


「次に魔族軍に降伏して、庇護を求める。」

私がもう一つの案を出すと、村人たちはがやがやと相談を始める。

聞いていると、領主軍に降るぐらいなら、魔族軍の方がいいのではないかという声が大きい。

だけど、それはどうかなぁ。


「ねぇ、エミル、この人たちが魔族軍に降りたいっていたらどうする?」

私はみんなに聞こえるような声で転がっているエミルに声をかける。

村人たちはシーンとなってエミルの言葉を待つ。


「そりゃぁ、大歓迎よ。この先も人間の領地に攻め入るわけだし、肉壁は多いに越したことはないわ。」

ハッキリと、使い捨てにすることを告げるエミル。

いや、まぁ、本音はそうなんだろうけど、もう少し言葉を取り繕うよ。


エミルの言葉を聞いて、村人たちが騒ぎだす。

まぁ、ね、どっちについても悲惨な未来しか見えないんじゃぁしょうがないよね。


「最後に……。」

私は騒がしい村人の注目を集めるように、少し大きめの声を出す。


「最後に、私に従うっていう手もあるわ。」

村人たちは騒ぐのをやめ、一斉にこちらを見る。

「どういう事じゃ?」

長老らしき老人が前に出てきて問いかけてくる。


「言葉通りよ。私がこの状況を何とかしてあげる代わりに、あなた達は全員私のいう事にしÞがってもらう……要は奴隷にな……むぐ、むぐぅ……。」


ミュウに口を塞がれ、マリアちゃんに足を抱えられ、奥へと連れてかれる。


「あ、あはは……少しお待ちくださいね。」

クーちゃんが必死になって、その場を取り繕っていた。



「なにするのよっ!」

「なにするの、じゃないわよっ!」

私は口が自由になるとミュウに文句を言うが、すぐさま言い返される。

「あんた何を言おうとした?」

「何って、私の奴隷のように、今後は馬車馬のように働けって言おうとしたんだけど?」

私がそう反論すると、ミュウは黙って少し考え始める。


「……奴隷のようにって、比喩表現で、本当に奴隷にしようとは思っていないってことでいいのね?」

しばらくしてからミュウが確認するように聞いてくる。

「ん~、面倒だから、隷属させる気はないけど、ちゃんと言う事聞いてもらわないと困るし、もう奴隷ってことでいいんじゃない?」

「いいわけないでしょっ!」

パシーンとミュウがハリセンでひっぱたく。


「はぁ、……という事で、あなた達を助けるためにも、私たちの指示に素直に従ってもらうことが条件になるそうだけど……。」

ミュウは、固唾を飲んで動向を伺っていた村人たちにそう声をかけると、ざわめきが戻ってくる。

概ね、私達に委ねようという声が大きい。

だけど、それじゃぁダメなのよ。


「それじゃぁダメっ!」

だから私は大声で叫ぶ。

「それじゃぁ、私のメリットがないわっ!」

「ミカゲ、何を言い出すのよ?」

「ミュウ、よく考えてみて。明いては魔族軍4千に領主軍3千、合わせて7千の大群よ?それを何とかするって、普通じゃ無理でしょ?つまり普通じゃない事をしなきゃいけないのに、私に何のメリットもないっておかしいでしょ?」

「そ、それは……。」

ミュウが口ごもる。言った通り、普通であれば、先に出した二手しか選択肢はないのだ。それを覆そうというのだから、労力に見合った報酬は貰って当然よね?


「何が望みじゃ?言っておくが、儂等に出せるものなど何もないぞ?」

先程の老人が代表して声をかけてくる。

「あら、あるじゃない?」

私はそう言って、熊耳の少女を抱きかかえる。


「私がこの村に滞在する間は、ケモミミ少女を二人以上差し出すこと。いーい、モフモフな「少女」だからね。男の子はいらないからっ!」

私がそう宣言すると、ほっと胸を撫で下ろす男の子たちと、緊張で強張る女の子たち、そしてどうしていいかわからずオロオロするオトナ、と反応が見事に分かれる。


「私も無理を言う気はないからじっくりと話し合って頂戴ね。でも時間はあまりないから。」

そう言って村の外を指さす……村を囲んでいる軍勢を。


「悪魔だわ、まさしく魔王だわ……。」

足元では、そんな事を呟きながらブルブル震えているエミルの姿があった。、












祝!100話。

皆さんの応援のお陰で、エタりかけていたこのお話も100話を迎えることが出来ました。感謝ですっ!

記念のSSでもと思ったのですが、新章に突入したばかりで切れ目がない、というか砂塵の塔編がもう1~2話続いていれば、上手く挟み込めた気がします。

過ぎたことを言っても仕方がないので、記念SSはどこかで気が向いたら考えますね。


ご意見、ご感想等お待ちしております。

良ければブクマ、評価などしていただければ、モチベに繋がりますのでぜひお願いします。

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