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私の飼い猫さんはさいきょーでした!  作者: おばた屋
1章 異世界転移と生活基盤固め
15/37

15話

おお、200pt……!

ありがとうございます(*´ー`*)


 リコリッタのくれた液剤と、コマメが用意してくれた液剤を飲んで一日寝たらすっかり良くなった。

 今までこんなにすぐ良くなることは無かったんだけどな?


 昨日の宿代や薬液代をリコリッタは受け取らなかった。

 その代わり、この町に滞在する間は榮犖(えいらく)亭を使いやがれとお願いされたので、むしろこちらからお願いさせてもらった。

 褐色気味のリコリッタは可愛く映えるし、彼女の優しさに触れて今さら他には行けません。


 しかし、あの液体のおかげかすごく身体が軽い。万能薬みたいな位置付けなのかも。薬師の方がいて、その方たちがこの世界の医療を請け負っているらしい。

 昨日私が飲んだ薬液も、そうした方たちが流通させた薬なのだそうだ。

 すごいよ、ちょっとした怪我やある程度の病気はとりあえず飲めば、大抵一日で治るのがこの世界の常識だって。もしかしたら医療レベルは日本を越えてるかも……。


 そこで気になった、この世界の文明水準を調べにコマメと二人、カガリ町の散策に出掛けた。


「てい、もう出歩いて大丈夫?」

「大丈夫! コマさんのおかげだよ~」

「ていの力になれたのなら嬉しい……」


 はぁ~ん、可愛いようちの猫さん、さいきょーかわいい!

 繋いだ手を引き寄せて腕を組む。コマメの方が小さいので、変な格好になっちゃうけどかまわないの!


 コマメも嫌がらず、むしろ頭をぐりぐりしてくれるので愛しさが爆発しちゃう。お日様の匂いがする髪の毛に顔を埋めて、どちらともなく笑い合った。


 組合のある大通りは様々なお店で賑わい、行き交う人たちの表情も明るく活気に溢れていた。

 掃討者や蒐集者が集まる組合の近辺には、ゲームのように武器屋さん防具屋さん、道具屋さんがある。

 興味を惹かれて覗いてみたけど、まったく見慣れないよ。


 蓋の空いた樽に傘立てのようにざっくばらんに突っ込まれた剣。

 流行りや新作の服を展示するように立つ鎧兜。

 小さな子供ほどもある大きな盾。

 (ロッド)に弓矢が壁に並んでいた。


 はぇ~、さすがファンタジー。


 隣では興味ないのか私だけを見つめるコマメに、装備を買ってあげた方がいいのか悩む。武骨な鎧は可愛さを阻害しそうだけど、コマメを守る意味ではこれほどのものはないし。

 ……これは私が悩むより本人(コマメ)に聞くほうが早いな。


「てい?」

「コマさんって装備ほしい?」

「装備?」


 そう言って初めて店に目を向けた……あ、興味なさそう。


「いらない」

「そか、それじゃ他も見て回ろ」

「ん」


 私は非力なのであんな重たいモノ持てないのです。

 聞けばわざわざ魔物を狩ってまであの薬液を用意してくれたみたいなので、組合に寄って鞄に余ってる魔石を換金し、コマメと二人で半分ずつ持っておくことにした。


 市場通りを歩いて、いろんなお店の人たちとお話をすると、概ねひと月あたり金貨で二枚あれば一般家庭が過ごせそう。私たちのような旅人なら四枚とか五枚? 宿代や食費など多く見積もればそのくらい。

 銅貨一枚十(ナール)、十枚で銀貨一枚相当で百N、十枚ごとに上がるようで白銀貨、金貨、白金貨となるようだけど、普通に生活していて白金貨は滅多にお目にかかるモノじゃないらしい。そんなものを扱うのは豪商か王族くらいだろうとのこと。


 この字が読めないことを早く何とかしないと、支障が出そう。今も言葉と数字が使われてるから何とか成立してるけど、綱渡りそのものだ。

 この世界の常識が欠落している上に、文字情報が読み取れないのは騙されやすいことに直結する。


「てい、大丈夫。ボクが側にいる」


 そう、だよね。私には可愛い(コマメ)がいる。それだけが一番大切なことだ。その他のことはゆっくりと進めばいい。


 榮犖亭がある通りには食材屋が多く点在していた。

 大きな精肉が吊るされ、手慣れた手付きで削がれた肉を串に刺し、スパイス薫る香ばしい匂いが食欲を刺激する。(ボア)なんだって。

 コマメのよだれを拭いて二個購入。うん、美味しい!


 見慣れた野菜や根菜を見るとちょっとほっとする。

 どうやら食材も元の世界とそう大きな違いはなさそうだ。

 ……お肉は基本、元魔物みたいだけど。


 町の中心は広場となっていて真ん中には噴水が設置されている。

 そこに何か建築しているのか、忙しなく人が出入りをしていた。

 横断幕も張られているけど、なんだろう?


「おー、おねーさんたち!」

「ん? リコさん、やほー」

「お前、まっすぐ歩いてこい」

「もー、妖のおねーさんはいい加減リコを名前で呼びやがらねーですか?」

「そーだよー、お世話になってるんだし。リコさんは良い子だよ?」

「……ていがそう言うなら。リコリッタ、お前もボクのことはていの付けてくれた名前(コマメ)で呼んでいい」

「あ、私もていって呼んでね、リコさん!」


 リコさんことリコリッタが華麗なステップとターンを織り混ぜながら、くるりと私の周りを回る。

 慣れるとこういったことも可愛く見えるよね。

 

「んー! ならていもリコを『さん』付けはやめやがれですよ」

「あはは、私の癖みたいなものなんだよね。愛称にさん付け」


 コマメ(コマさん)然りリコリッタ(リコさん)然り。

 だからといって何でもかんでもつける訳じゃないけど、尊敬やら愛玩やらいろいろな想いが含まれているのは間違いない。


「ところでお前は何をしてるんだ?」

「リコリッタ!」

「──ったく……リコリッタは何をしてるんだ?」


 せっかく名前で呼び合おうって言った直後から『お前』呼ばわりにリコリッタはぷうと頬を膨らませて抗議した。

 会話の流れだろ……って小声で呟いたけど、せっかくだもん。名前を呼んであげて。


「町のみんなで春の豊穣祭の準備をしてやがりますよ」

「豊穣祭?」


 年間で四回、季節ごとに大きな祭りがあって春は豊穣、夏は狩猟、秋に収穫、冬に新年を祝うらしい。

 今の季節は春なんだね。転移前と相違ないのは助かるよ。

 小規模のお祝い事は地域によって様々みたいだから、その辺も日本と変わらないね。花見に納涼、お彼岸まであるんだって!


 ちなみに一日は十二時辰で、だいたい二十四時間。

 一週間で十二日、一ヶ月で四十八日、十二ヶ月で一年。

 延べ五百七十六日間。──長い! 一年(なげ)ぇ!

 地球より公転周期が広いのかな?


「リコは舞巫女(まいみこ)なのですよ。今年の豊穣祭で五穀豊穣を祈る舞を披露してやるのです」

「え、すご!」

「ほう、この世界にも祭神を奉る風習があるのか」

「この世界?」

「な、何でもないよ?! それでその豊穣祭はいつやるのかな?」


 慌てて誤魔化す私の態度に、リコリッタは“はてな”を浮かべつつも気にしないことにしたらしい。異世界転移したことはなるべく隠しておきたい。何が起こるかわからないからね。

 コマメとふたり、発言には気を付けてはいるけれど、日本との差異につい口にしてしまうことがままあるのは仕方ない。まだまだこの世界の常識が欠如してるのだから。


「ふーん、まぁいいですよ。豊穣祭は巳の月の初日に一年の五穀豊穣を願うお祭りが開催しやがるです。森羅万象(あまね)く物に宿る神様に祈り、舞を奉納させやがるのですよ」


 ふむふむ、考えた方や信仰が日本の神道に近いものがあるかな? 春が巳の月か……てことは暦も十二支?

 どこかにカレンダーでもあればいいな。


 そっか、春かぁ……。卒業式、出たかったな。

 春休み前に転移してしまったことへ少し感傷に浸っていると、ほんのり頬を赤らめたリコリッタがもじもじと身体をくねらせていた。


「それで~、ていに~お願いですけど~」

「リコさん?」

「はっきり言え」

「う~、一緒に服を見に行ってほしいですよ」


 服? そう言えば服屋さんもあるのか。

 ファンタジー色の強いところしか見てなかったよ。やっぱり見慣れない分、目を惹くからね。


「いいけど、私ジャージ(こんな)だよ? あまり異世界(こっち)の流行りを知らないし」

「えっと、服……と言うよりは、その……ていのような下着を……リコにはじっちゃしかいなくて、恥ずかしいし」

「脱ぐのは平気でも下着は気にするのか」

「だってー……」


 う、ん。恥ずかしい基準がよくわかんない。

 男親には恥ずかしくて相談できないっていうのはよく分かるけどね。

 だけど、このリコリッタの提案は正直ありがたい。

 私もいい加減ジャージ以外を着たいしね。


 いつまでも学校のダサいジャージじゃ、私の中の女の子が死にそうだし。

 真っ赤になっていくリコリッタを連れて、私たちも服を見に行くことにした。

いつも読んでいただき

ありがとうございます(*・ω・)


のんびり更新していきますので

気長にお待ちくださいφ(..)


次回投稿3月27日10時予定。

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