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私の飼い猫さんはさいきょーでした!  作者: おばた屋
1章 異世界転移と生活基盤固め
13/37

13話

やっぱり前倒しで投稿φ(..)

ストックが切れるかの瀬戸際((( ;゜Д゜)))

 異世界へ来て二日目の朝。

 昨日はいろんなことがあった。

 魔物に襲われ、漸く見つけた集落でもゆっくりする間もなくここカガリ町まで歩き通しだったんだ。


「うぁ……コマさん、ごめんねぇ……」

「ていは気にしなくてもいい。強行したボクが……」

「もう、コマさん……少し休めば治るから、ね」


 化猫(ボク)とは違い、ていはか弱い人の子だ。

 学校が終わってそのまま異世界(こちら)へと飛ばされて、心身共に疲れていないわけがない。そんなこと少し考えたら解るのに。

 ていと同じ姿になって、ていと言葉を交わせるようなって浮かれていたんだろう。


 ボクのせいでていが苦しんでる。

 汗ばむ額に貼り付いた前髪をどけて、借りていたタオルに井戸から汲んだ水を染み込ませ額に乗せる。

 ていが小さい頃、ママがやっていたことを思い出しながら看病を続けていく。


「おはよーでございますよ、おねーさんたち!」

「静かにしろ」


 勢いよく扉を開いて、くるりと相変わらず無駄な動きを挟みながら現れた宿屋の娘(リコリッタ)に一喝いれる。

 ていの身体は熱いままだ。どうしたらいい?


「あれ、おねーさんどうしやがったんですか?」

「静かにしろ、ていは今、体調が良くないんだ」

「あらー、それは大変じゃねーですか。薬湯とか薬草は持ってねーのですか?」

「……まだ昨日この町に着いたばかりだから。それがあればていは治るのか?」


 まだボクに出来ることがあるかもしれない。今はそれにすがるしかない。


「てい、すぐ戻るから。もう少しだけがんばって──」

「あ、ちょっとおねーさん! 待っ……」


 リコリッタの制止の声が聞こえたが無視(・・)して窓から飛び出した。

 組合の前に降り立つと、ちょうど昨日、ていの登録をしてくれた人間がいた。


「おはようございます、妖のお嬢さん」

「ご主人が体調を崩した。薬はどこで手に入る?」

「あらら、それは心配ですね。お薬自体は組合でも販売いたしておりますが……お金がかかりますよ?」


 そうだった、何をするにもお金が必要だ。だけどボクはお金を持っていない。ていが持っていれば充分だと思ってた。……まったく人とは面倒な生き物だ。


「お金は……持ってない。ていが良くなったら必ず渡すから今はわけてくれないか?」

「うーん……個人的には新人さんを助けてあげたいのですけど、組織としては後払いを受けてしまっては切りがないのですよ」


 互助というのはそういうものだと説明してくれたが、正直、てい以外のことなんてどうでもいい。


 薬はある。しかしお金がなければ交換出来ない。

 ……お金か。


「昨日の石を持ってきたら薬はもらえるか?」

「魔石ですか、それはもちろん。ですが妖さんはテイマーが不在で戦えますか?」


 あんなゴミ共、相手にならない。でもアイツらから採れる石を持ってきたら薬がもらえる。それが今のボクに出来ること。


「薬を用意しておいてくれ」


 屋根伝いに駆け抜け、町の外まで一気に出る。ボヤボヤしてる暇はない。

 てい、もう少しだ。もう少し──


 見つけた魔物を片端(かたっぱし)から潰していく。

 昨日のように時間をかけてバラバラにする必要はない。妖気を飛ばし、魔物の中枢を一撃。

 胎内にある石を抉り出し、次の獲物へ。

 豚だろうが、犬だろうが、兎だろうが、すべてていのため。ボクの糧になれ──。




 一面が魔物の遺骸で埋め尽くされる頃、振り袖にしまった石がそろそろ重たくなってきた。


「これ以上はボクの動きを阻害するか」


 少しは集められただろうか。

 ていの薬を買う分くらいはあるといいのだけど。


 じゃらじゃらと鳴る振り袖を抱えて、ボクは再び組合へとひた走る。


「──ッ!?」


 死角からの殺気を感じ、咄嗟に身体を捻る。その横を獰猛な牙が振り袖を引っ掻けて通りすぎた。

 バラバラと穴の空いた振り袖から、せっかく集めた石が溢れ落ちていく。


「グルルラララ……」

「ボクの服が……!」


 たかが飢えた狼風情が、ていが綺麗だって言ってくれたボクの服を……!!

 潰してやろうと一歩進むと、狼は草影に姿を消した。

 前後左右、走り回る音だけが響き、臭いや肉眼では捕らえられなくなる。


「隠蔽が得意なタイプか」


 死角から飛び出した狼に蹴りを放つも、浅く胴を打ち抜いただけで再び草影に姿を眩ました。

 くそ、こんなことして遊んでる場合じゃないのに。


 幾度目かの奇襲をはね除けるが、決定的な一打を放てずにいる。今度こそ、と神経を集中させていく。

 僅かな殺気を読み、大振りの先制を放つ──が、狼も飛び込んでは来ない。頭を地スレスレまで落とし狼にボクの一撃が掻い潜られた。


 牙を防いだものの、爪が振り袖を薙いだ。砕け舞い散る魔石。落ちたそれをパキパキと貪る狼。

 魔石に残された妖気を喰ってるのか。

 ここにはかなりの魔石が散っている。それを喰らう狼は、ひと回り強靭になったらしい。狼から感じる妖気も膨れ上がった。


「グオォォォオオオンッ!」

「しゃぁぁぁぁっ!! ……っ、いけない。ボクはもうただの猫じゃないんだ」


 吠えられたことについ興奮して、威嚇し返してしまった。

 頬が赤くなるのを自覚しながらも顔を洗う仕種で心を落ち着ける。毛繕いやグルーミングは猫の名残が残ってるのか、今でもていが優しくしてくれるから好きだ。


「ていに逢いたいな」


 ていのもとへ戻っていつものように甘えたい。

 そうと決まればいつまでも手を抜いているわけにもいかないな。ボクは化猫(ボク)らしく、妖気を使おう。


「『化装変幻(けそうへんげん)』、疾風(はやて)


 柏手で打ち鳴らす響き渡る音。

 耳やしっぽが揺らぎ、風を纏う半物質の化け猫へと昇華する。

 普段、『人化』に使うこの『化装』という能力は、妖気を得た際に使えるようになった化かしの力。それに妖気が混ざれば本物そっくりになれる。


 出来ればていの側では使いたくない能力だ。まだ慣れない(・・・・)せいで、周りへの影響が強い。

 すでに周囲は纏う風が吹き荒れ、横倒しになった草影から狼が姿を現していた。巻き上がる突風に四肢を踏ん張り、何とか耐えているだけの狼は、その動きを止めてしまえばこんなものだ。


『身の程を知らぬ獣よ。分を弁えろ』


 風を纏い、半物質へと変換された身体から発せられた声は虚空に拡散される。伸ばした指先に集まる自在に繰り出す風は真空の鎌鼬へと姿を変え一気に放たれた。


『荒れ狂う風波よ、吹き(すさ)ぶ嵐よ、開け風紋(ふうもん)──疾風怒濤(しっぷうどとう)


 圧縮された風のエネルギーが、爆発的に拡がりボクの周囲を無差別に切り刻んで塵へと還る。


 やがて風も収まり、ボクの身体も人の姿を取り戻せば跡に残るのは四肢をもがれ、肉を引き裂かれ首が落ちた狼だったモノだ。

 今までの魔物と同様、心臓部には他の魔物よりひと回りもふた回りも大きな魔石が採れた。


 うん、ここまで大きいならきっと良い薬が手に入るだろう。

 打ち捨てられた狼に興味を失くし、町へと戻る。

 てい、もう少しだよ。待ってて。




 組合ではボクの帰りを待っていてくれたのか、受付の人間が手招きをしていた。


「これで薬と換えてくれ」

「ずいぶんと大きな魔石ですね。これほどのサイズはなかなか……」


 そう驚きつつもまたあの魔導具に魔石を乗せていく。赤い光が放たれ、出てきた紙を持って組合の奥へと入ること数分。銀のトレイに中サイズの袋と子供の拳程度の瓶に入った淡い黄緑色の液体を乗せて戻ってきた。

 どうやらあれが薬のようだ。


 受付の人間と二、三会話を交わし、ていの待つ宿へと走る。漸く薬を手にすることが出来た。

 落とさないように大事に抱えて、ていのもとへ。

 入り口から入るなんてまどろっこしい。と、屋根から直接ていの泊まる部屋の窓へと飛び移り、換気のために開いた隙間に身体を滑り込ませる。


「てい!」

「あ、コマさんお帰りーあわわわ」


 窓の側にベッドがあり、朝までくったりと苦しそうにしていたていが身体を起こして綻んだ笑顔を見せてくれる。それだけで今日の苦労はすべて吹き飛ぶ。

 その笑顔が嬉しくて、ていの胸の中に飛び込んだ。

 嫌な顔ひとつしないで、ボクを受け止めてくれるてい。まだ万全じゃないのかベッドに押し倒すことになっちゃったけど、今朝ほどの熱は無くなっているようだ。


「コマさん、お薬貰ってきてくれたの?」

「ボクに出来ることはそれくらいしかなかったから……」

「ありがとう、コマさん」


 カリカリと少し爪を立てて、引っ掻くように耳の根本を撫でてくれる。ボクはこれが好きだ。気持ち良くてつい喉をゴロゴロと鳴らしてしまう。

 グリグリとていの胸に頭を擦り付けても、ていは文句ひとつ言わない。嬉しい。


 様子を見にきた邪魔者(リコリッタ)に怒られるまで甘え続けたのは少し反省。ていが元気になったらまたお願いしてみよう。

いつも読んでいただきありがとうございます。

(*・ω・)


のんびりと更新していきますので

気長にお待ちください。

φ(..)


次回投稿3月24日10時予定

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