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3秒 超能力

 まずは【超能力】というものが何なのか、話はそこからだ。


 すみません、ゆっくりと順を追って説明してくれませんか。


「いいよ、魔法と機械が溢れるこの世界ではキミが想像出来ないぐらい人々が争って()()()()


 いた?


「うん、争いは激化して世界は滅びた、もう大分昔の話だね」


 なるほど、これで大方の事情はわかった。神様は説明に疲れたのかやれやれとした表情で見つめてくる。しかしさっきの説明だけで理解してくれという方が難しいだろう。




「全く、君達人類がこんなにもバカだったとは思わなかったよ」


 いやいや、種族達が悪いのはわかりましたけど能力を与えた神様も原因の1つでは?


「まあね、もちろん僕も悪かったと感じている。だからもう僕は下りる事にしたんだ」


 え?


「この世界に存在する計8つの種族、1人1人に超能力を与えられたらどういう世界を作り上げるのか興味を持ってね。どんな形でもいい、キミが動けば世界が動く、そういう存在になれたらもう一度キミの前に現れ、神になれる権利を与えよう」


 神か、もしなったら自分の理想の世界を常にえがけるということなんだろうか? いやいやまて、そんな事を急に言われても無理ですよ、というかなんでやる流れになってるんですか、俺は話を聞くって言っただけでまず受けるとは一言も……。


「もちろん、神になっている間はキミだけが好きに動かせる世界が作れるんだ」


 ちょっと待て、神になっている間って……?


「いやね、世界を作り直したからその反動で疲れちゃったんだよ、どうしても後任がほしくてさ。あ、もちろん神になったからって寿命が無限になる訳じゃないからね? 人間は確か100年ぐらいは生きれるだろう?」


 うーん、その歳になったら頭がボケてそうだ。それで好きに動かせるってその、何でも出来るんですか?


「うん、なんでも作れるし、何でも出来る理想の世界を構築してみなよ、もちろん僕という存在を殺す事は出来ないけどね」


 何でも出来る……か。

 凄く心が動かされるな、理想の世界を目指してみたい。


「でしょでしょ、それで、やってみるかい?」


 ああ、今すぐにでも欲しい、何故なら、今の俺はあの子を救わなければいけないからだ。俺に希望という明日を与えてくれたのは彼女だ、だから超能力とやらで受け取った恩が返せるなら嬉しい限りだ。


 タルトを一度見ては神様へと再度向き直す。


「その女の子の事になるとキミ、いい目をするようになるね」


 そりゃどーも。あの、1つ聞いてもいいですか? 神様?


「ん?」


 結局神様にとって世界とはなんなんですか?



 俺がそう問うと、神様は食い気味に理由を尋ねてきた。


「世界か……そうだね、僕にとっては暇潰しかな?」


 暇潰しの割には結構錬ってるじゃないですか、何か意図があるんでしょう?


「……はは、面白い、それキミ、とても面白い考え方だ。どうしてそう思ったのか聞いてもいいかな?」


 えーっと、まず俺達の住む場所まで下りてきて大きな干渉を始めたのが気になるんですよ、これって、何か複雑な事情があるんですよね?


「そうだね……まあ、それは僕という存在を見つける事が出来たら教えてあげるよ」


 えっ? それってどういう――。


「そうそう、現時点ではキミが最後尾だからせいぜい頑張ってね」


 俺の言葉を無視して神様はニヤニヤと期待する目で神様は話を進めてしまった。というかマジかよ、ここまでぶっ飛んだ話に納得出来る人が7人も見つかってもう動いているのか、急がないと先を越されてしまうな。


「まだ世界は動き出してないから大丈夫だよ、それとそうだ、能力の説明もしておこうか。キミは8人の中では時の超越者だ、文字通り全ての時を止めて君だけが自由に動ける力、応用次第では君の能力がいちばん面白いのかもね」


 神様は説明を一方的に行い、パチンと指を鳴らし自身の身体を上空へと浮かせる。



 うーん、時を止める事に応用も何も無いような気がするけど……説明を言い終えた神様は人の形から光の球へと姿を変え、さらに上空へと舞い上がっていってしまった。


 時間停止能力がタダでもらえたのは嬉しいけど夢のような出来事だったな。あとは、この能力をどうやって使うか、まずは目の前のタルトを救ってやらねば。



「ああごめん、聞き忘れた」


(っッ!!)


 神様は再び俺の元にやってきた。 一瞬、心臓が突き破ったかと錯覚してしまいピョンと跳ねてしまった。

 そんな俺の姿が面白かったのか、神様はクスクスと腹立たしい笑い声をあげながら1つの質問を投げかけてくる。


「あはは、えっとね、一応みんなに聞いているんだけども……し世界を作り替えるとしたら、キミはどういう世界を望んだりするんだい?」


 答えによって能力取り上げとかありますか……?


「大丈夫、それは無いから。さあ、キミの考えを聞かせて?」


 その質問に悩みながら俺は腕を組む、理想としては金に困る事のない世界だな、そんでもって風を感じながらゆったりと昼寝出来るような気楽さが大事だ。


「ふむふむ」


 あとは誰かが身分を押しつけてくる事もないのがいい、まとめるなら俺だけが楽して暮らせる世界、それが俺の望み……かな。


「ふふ、どうしてそれを望むんだい?」


 また食い気味に聞いてきた。そんなの決まっているだろうに。

 まず俺が人としてちゃんと生きたいからだ。


「……そっか、この力で後の人生をきちんと生きれるといいね」


 それは自分でも驚くほど、咄嗟とっさに思い浮かんだ言葉だった。神様は納得したような表情でまた上空へと昇っていく。


「じゃあ起きている間はしばらく眺めている事にするよ、今度世界を壊したら僕はもう直してあげないからね」



 神様は冗談のつもりで言ったのか鼻で軽く笑い、徐々に光を弱くしていくと完全に消失してしまった。



 性格はあれだけど、好みの外見だったからちょっぴり消えてしまったのは悲しい。




 ◇    ◇    ◇




「……なんだ、お前? どこから現れたんだよ」


 突然の殺気を感じた。振り向くと男が凄く睨み付けている。



「あっ……」


 まずい、どうやら神様と喋っていた事でタルト達の前まで来ていたらしい、あれ、声が普通に出せる。自分の声もはっきりと聞こえる。

 という事は時間停止は解除されたのか。


「あーっと……」


 どう説明していいのかわからない。言葉を探しながら顔色を伺い、俺はどうやって時を止めるかを考えていた。

 というか、それをいちばんに聞いておくべきだったな、どうにかして時間停止を発動させないといけない。


(うーん……)


 この石を使えば時間が止まるのだろうか、試しに石を男に向かって見せてみた。


「……ああ!?」


 時間は止まることない、男は普通に罵声を浴びせてきた。

 一体どういう仕組みなのか、どうすれば時間停止は発動するのか。


 もしかして、何かしらの発動条件とかあるのか、その辺をきちんと聞いておけば良かったと己の愚かさが悔やまれる。


 でも、ここまで来て何も行動しない訳にはいかない。俺はとりあえず、ヘラヘラと愛想笑いしてその場を誤魔化した、だがこれといった効果は全くなく、むしろ男火に油を注いでしまったようである。


「んだよ、テメェは!! 気持ち悪いんだよ!!」


 男は1歩前に出て俺の肩を強く押す、まずい、これはめちゃくちゃ怒っている。

 今にも殴りかかってきそうな勢いに俺は内心怯えていた。


 ドンドン状況が悪くなっていく、こうなったらいっそ話し合いだ。きちんと会話をすれば男がこんなにも怒ってるのかが分かるはずだし、それに話し合いの最中に殴られる事はないだろう。


 俺はゴホンと1つ咳払いをしてゆっくりと話を始めた。


「ほらあの、暴力とかはよくないですよ、何事も話し合いが大事ですし、ねっ?」


 その瞬間、腹部に鈍い痛みが走る。


 ドガッ――。


「うるせえ!!」


 有無(うむ)を言わさず思いっきり腹部にパンチを叩き込まれてしまった。


(いってえええッ!!)


 全然話が通じない、もしかして肺が潰れてしまったのではないかと錯覚してしまうほどの痛みがジワジワと襲ってくる。

 俺はその場に倒れ込み、大きく口を開けて体内に酸素を無理矢理入れてみた。


「お兄ちゃん!!」


 タルトは大声をあげて俺の方へと近寄ってくる。

 バカだなあ。このスキに、さっさと逃げちゃえばいいのに。


「おっと、どこへ行くんだ?」


 逃がさないぞと言わんばかりに男は再度手を伸ばしてタルトを捕まえた。

 タルトは助け船を求めるようにキョロキョロと周りの者達を見るが、この件に関してはみんな関わりたくないらしく誰1人として目線を合わせない。


「おら、さっさとその膨らんだポケットの中身を見せな!!」


 男はタルトの身体を触る、大変だ。早く何とかしないと。

 先程よりも強く男の手を拒むタルトは大声で助けを求めていた。俺は頑張って自分の身体を起こそうとするが、痛みがまだ尾を引き未だ四つん這いの状態から動けない。



「痛い!! やめて!! 離してよ!!」


 何とかしてやりたい、しかし少しでも身体を動かすと激痛が襲ってくる。

 俺は誰かがタルトを助けてくれる事を祈ったが、誰も救いの手を差し伸べる事もない。

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