14秒 止められなかった。
一回また全改稿する予定です。
「失礼、私はウェルム国から来たアリシアと申します。今回レイチェル王妃の意向を伝える為、シュテッヒへと来ました」
「え、ウェルム国のお偉いさん?」
えーっと、ウェルムはエルフ族が住んでいる国か……。
何でまたこんな時間に訪れたんだろう?
チラリと獣族の男を見ると、偉大な人に会った為か腰を抜かしていた。
「道中魔物に襲われ、このような時間に訪れる事を大変失礼かと存じます」
「いや俺は別に……」
アリシアさんは丁寧に頭を下げたので、俺はポカンとした表情のまま返事をする。
フードで顔を隠しているのはこの国にいるドワーフに知らないようにしているからなのか。
エルフとドワーフは仲が悪いとイリナから聞かされていたし、多分そうなのだろう。
「そういえば、どうやってこの国に入ってこれたんです?」
「こちらをお渡ししたら、入る事が出来ました」
アリシアさんは懐から1枚の許可書を出してきた。
そこにはウェルム国とシュテッヒ国だろうか、入国印が2つとも押されている。
本当に王族の関係者だ。
そう思った俺は発言1つで、エルフ族との関係を悪くさせてしまうのではないだろうかと警戒してしまう。
(きちんとおもてなしをしないとな)
俺は椅子を立ち、アリシアさんに深々と頭を下げた。
そのとき少しだけ違和感に気付く。
情報ではエルフ族は耳の長い種族のはずだ。
どうして、フードの耳辺りに膨らみが一切ないんだろうか?
「あの、失礼なのですがウェルムってエルフが長の国ですよね? アリシアさんはその、耳が短いようですが……」
フードを取って顔を晒すアリシアさん。
まず目に入ったのは酷い火傷の痕だった。
左側はごっそりと皮膚をえぐっており、皮1枚剥がされているのが見ていてとても痛々しい。
「あ、その、ごめんなさい」
「ふふ、気にしなくて良いですよ。これは代償のようなモノですから」
(代償……?)
その言葉がちょっぴり気になった。
「いえ、すいません! 俺の配慮が足りなくて!!」
「いえいえ、それと私は人間ですよ? ウェルム王妃の補佐がエルフで無ければならないという理由はありませんでしたので」
アリシアさんは特に怒る事もなく、ニッコリと微笑んでからまたフードを被る。
というかウェルム国の人がシュテッヒ国に来るなんて話は一度もイリナから聞かされていないけど、前から来る事は決まっていたのか?
(……それに何でまたこの人は1人で酒場なんかに来たんだろうか?)
普通、護衛がついていてもおかしくないよな。
「あの、すいません周りの付き人は?」
「ここの門番をしていた兵士2人が外で待機しておりますよ。今回尋ねた理由は魔物の件に関し、我がウェルム西国は同盟を結びたいと王妃から通達で足を運んで来たのです」
一応俺が門を開けれるから問題ないけど、勝手に開けて人を入れたなんて事をしたら騎士団員から怒られたりしないかな。
(でも待てよ)
この人が本当に王妃の補佐をしているのであれば、俺が案内した事によって国王に褒められたりするのかもしれない。
(これはチャンスかも。この人に恩を売っておけば、後々評価される可能性もあるぞ)
俺は自分の手柄にする為に急いでアリシアさんと共に酒場へと出る。
なるほど、さっき彼女が言った通り、シュテッヒ騎士団の兵士2人が入り口で待っていた。
やっぱりこの人は偉い人なんだ。
そう思った俺は1歩前へ出て兵士達に敬礼をする。
「俺が率先して彼女を連れて行きます!」