ヒロイン全員寝取られました ~追放~
ちょっと長いです。
次話から出来るだけ短くします。
(´д`|||)
「やめるんだリゼーネ。きみが“ソレ”を投げるのなら、僕は全力で君を止めないといけない。さすがの君も、この意味が分かるね?」
そう勇者に言われ、慌て槍を消すリゼーネ姉さん。
それを確認した勇者は、糞ムカつくイケメン顔を更にイケメン顔にして、気色悪く笑い掛ける。
「ごめんなさい、トーヤ君。私…頭に血がのぼっちゃって…」
「いや、分かってくれればそれで良いんだ。素直に僕の言う事を聞いてくれる、君のそうゆう所が僕は好きだ。愛してるよ、リゼーネ」
「トーヤ君…♡」
まるで恋する乙女の様に顔を赤くし、無駄にイケボの勇者に安っぽい愛を囁かれて、うっとりとするリゼーネ姉さん。
その魅力的な身体を、再びドクズに預ける様に座る。
見ててこれ以上ない、嫌悪感に不快感。
それに、ハンパない胸糞な気持ちが込み上げてくる。
あぁ~…クソッ! マジでイライラする。
反吐が出そう…。
(五日も何も食わしてもらってねぇーから、胃に何もねぇーけどな!)
腸が煮えくり返りそうだ。
とっくの昔に死んだと思った感情が、沸々と蘇る。
そんな俺の事などお構い無しに、フィオナとニーナを呼ぶドクズ。
「二人も、こっちに戻っておいで! そんなゴミクズに構わないで、僕の傍に居ておくれ。君たちの定位置が空いていて、僕が寂しいからさ♪」
「「はぁ~い♡」」
長年一緒にいて、今まで一度も見た事も聞いた事もない『女の顔』をしながら『女の声』で返事をするフィオナとニーナ。
そしてそのまま本来の自分の場所に戻り、嬉しそうにドクズに寄り添う。
その顔と声を見て聞いてまた、胸が締め付けられる…。
なんだよ二人とも。
俺には一度だって、そんな顔も声もしてくれた事ねぇーじゃねぇーかよぉ…。
フィオナはともかくとして……ニーナ。
おまえ俺のこと好きだったんじゃねぇーのかよ?
そんな顔出来るんなら、最初からやってくれよ。
何で俺には一度も見せてくれなかったんだよ…。
・・・・やめよう。
今さらコイツらに何を言ったって思ったって無駄だ。
だって、コイツらはもう──。
俺が諦めがちにため息を吐いて、その集団を見詰めていると、ドクズがまるで汚物を見る様に(お前にだけにはそんな面されたくねぇーよ!)俺に話掛けてきた。
その話の内容は衝撃的過ぎる内容で、俺にとってはある意味奇跡に近い、待ちに待った“好機”だった。
「さて。無価値無能のゴミクズで、何の役にも立たなかったクソザコのタクト君、お疲れ様。今日で君は“クビ”だ!」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「悪ィ、もう一度言ってくんねぇーか?」
「聞こえなかったのか? これだから無能わ…。いいか、よく聞け。きみは今この瞬間より、このパーティーから外れてもらう。つまり“追放”だ! 理解できたか?」
俺は目を見開いて勇者を見る。
俺だけじゃなくドクズに纏わり付いているフィオナ達も、信じられないものを見たかの様に驚いた顔をしている。
ただ一人さっきからずっとドクズに技を掛けられている、俺の『元』最愛の幼馴染を除いて。
(相変わらず“変な声”とリングが軋む音がうるせぇー)
てゆーか、ドクズ! お前器用だな!
そんなに纏わり付かれてるのに、休まずにガンガン“技”を掛けまくって。
それも喋りながら。
ほんの、ほんの、ほんの、ほんのっ
ちょっっっとだけッ! 感心した。
・・・・まあ俺もやろうと思えば出来るけどねっ!ww
端から聞いたら負け惜しみにしか聞こえない俺の心の声はさておき、(本当に出来るんだかんなっ!)俺の代わりにフィオナが、恐る恐る先ほどのドクズ発言に対して確かめるように問う。
それにつられて他の面々も言う。
「トーヤ…。本当に良いの? アイツ役立たずだけど、いざって時の盾や囮にはなると思うけど…」
「フィオ姉ぇの言うとおりだよ! あのクズ、荷物持ちやパシリになら使えるよ?」
「そうですね。術や技の練習台ぐらいにはなりますし…」
「お姉さんもそう思うわ。居なかったら居なかったで、なにかと不便になるんじゃないかしら…」
好き勝手言いやがる、『元』ヒロインズ…。
しかしドクズはみんなの意見を無視して、首を横に振る。
「すまない、もう決めたことなんだ。僕は一度決めたことは曲げたくないからね。それに前々から思ってたんだけど、僕以外の男がこの『“楽園”』に居ることが非常に不愉快極まりないんだっ! それとあのゴミクズを見ていると、ストレスが尋常じゃなくてね。僕の体調も悪くなる…。だからクビにするよ!」
『それはこっちのセリフだっ! バカ野郎ッ!!』
って言ってやりたいけど、此処は我慢する。
それに何が「自分以外の男が居るのが不愉快だ!」だあッ?!
散々あんな事しておいて、よく言えたなあっ!
ウプッ! やべぇえ…。
思い出したらまた酸っぱいモンが込み上げて来やがった…。
アレは…マジでキツかったからなぁ……。
何をしていたのかは具体的には言えないけど、──まあ強いて言うなら『場外乱闘』ですわ。
あとはご想像にお任せします。
俺はそれすらも傍観するようにさせられていました。
ほんとっ…思い出したくもない……。
あれは………地獄だよ………。
どうにかリバる(リバースする)のを堪え、平常心を装う俺。
そんな俺の様子も気付かずに、話を続ける勇者。
「約束するよ。あのゴミクズをクビにしても、君達には何不自由のない生活を送らしてあげるって。それに例えどんなピンチが訪れようと、君達は僕が守り通すっ! だって君達は僕にとってのお姫様だからね♪ ──みんな、愛してるよ♡」
「やだぁ…トーヤったら…♡ でもトーヤがそう言うんなら…。私もトーヤのこと、愛してるっ!♡」
「うん、私も! トーヤお兄ちゃんの言う通りにするし、トーヤお兄ちゃん…大好きッ!!♡」
「私はただトーヤさんに従うだけです。私もトーヤさんの事を愛してます♡ 一生お傍に居させてください…♡」
「もうっ…♡ トーヤ君ったら御上手なんだから♪ 私もトーヤ君のことが、とってもとっても大好きよ♡」
激しく“技”を決めながら歯の浮いた台詞を決め顔で言って、微笑むドクズ。
そんなドクズのアホみたいな甘い囁きに顔を赤らめて、しどろもどろとしながらも、愛を囁き返す『元』ヒロインズ。
・・・・・・虫酸ダッシュ!!!!
マジかコイツら…。
ありえねぇー…。
『キモい! キモイ! キモい!』
『キモ過ぎるでぇ! 自分らあッ!!』
『あぁ~…キモイ! きもいッ! キモいぃッ!!』
某[死神さまのご子息]ばりに顔を歪め、鳥肌を立てながらアイツらに気付かれないように唾を吐く。
俺の気持ちを代弁するかの如く、これまた某[長身の自転車少年]の声が幻聴として遠くの方から聞こえてきた。
───ような気がした。
ハハ…ヤバイな。
俺………相当キテるわww
幻聴が聴こえるって…。(笑)
このままじゃ本当に持たねぇー。
早くこの場所から居なくならねぇーと…。
俺は再度、勇者に確認をする。
「本当に“クビ”で良いんだな?」
「さっきからそう言っているだろう! 本当に君は能無しだけじゃなく、脳無しでもあるのかっ!?」
「トーヤの言う通りよ! バカ過ぎて話にならないわね! 早く出ていきなさいっ! その気持ち悪い顔、二度と見せんじゃないわよッ!!」
「そうだそうだ!早く出てけっ! クソザコ童貞野郎ぉ~!」
「貴方は聖女である私ですら浄化出来ないほど、全てが汚れて穢れきっています。とても不快です…。だから今すぐ私たちの前から消えてくださいっ! 貴方を兄と呼ぶことは二度とありません、さようならッ!!」
「その憎たらしい顔をもう見なくて済むと思うとお姉さん、本当に心の底から嬉しいわ。だから一秒でも早くいなくなって頂戴! お願いだからッ!!」
・・・まったく、ほんとにコイツらは…。
俺は半白目で受け流しつつ、クズ逹がいる場所とこの部屋全体を改めて見渡す。
クズどもが今いる場所は『超特大リング』の丁度真ん中辺りで、お互いに技を掛け合ってくんずほぐれつしている。
そのリングの端々には、さっきまでクズの相手をさせられていたであろう、顔を紅潮させて息を荒くしながら寝転ぶ、全裸や半裸の女性たち───
【『元』サブヒロインズ】
のあられもない姿があった…。
◇◆◇◆◇◆◇◆
俺はそんな『元』サブヒロインズを一人一人注視しながら、彼女達との交わした言葉を思い出して行く。
後輩想いで凛々しく、とても綺麗な黒髪セミロングの先輩ヒロイン──“ミカエラ”先輩。
『タクト君! 私はキミとずっと対等な立場でいたい。たがらもっと私を頼ってくれ!』
敬い上手で煽て上手。
ちょっとウザ可愛い、橙髪ショートの後輩ヒロイン──“メルル”。
『先輩! 先輩は御自身の凄さにまだ気付いていないだけなんです。だからもっと自信を持ってください! あっ! 因みに今のは『自身』と『自信』を掛けてみましたww 笑顔、笑顔♪』
物腰が柔らかく、おっとりとした雰囲気の元恩師。
少しリゼーネ姉さんに似た、藤色髪の先生ヒロイン──“ナタリエ”先生。
『タクトくぅ~ん。君は何でも一人で背負い込んで無理しちゃう傾向があるから、辛い時はちゃんと辛いって言うんだよぉ~。その為に先生が居るんだからねぇ~♪』
高飛車で傲慢で口喧嘩が絶えなかったけど、お互いにどっかで何となく分かり合えてた気がした、金髪縦巻きロールのお嬢様ヒロイン──“ルナティーヌ”
『タクト! 私は野蛮人が嫌いです。ですが、貴方は“特殊”な野蛮人のようですので、特別に私の傍に居る事を許可します。光栄に思いなさい! ──ほっ、ほら! たがらもっと近くにお寄りなさいな!』
男性恐怖症で人見知りが激しいけど、動物や花が大好きで努力家な、栗色髪の僕っ娘同級生ヒロイン──“キャロン”。
『あっ、あのねっ! ボク…男の人はまだちょっと怖いけど…たっ、タクト君なら不思議と平気なんだよっ! 何でだろうね、ボクにも分かんないや。テヘヘ…♪』
コイツらの他、あと数名の元サブヒロイン逹。
みんな…みんな良い娘たちだったのになぁ~。
メインヒロインズの次に心が許せて、頼りになったのに…。
コイツらたげじゃない。
この部屋の至るところにいる(倒れてたり、変な体勢で座っている。勿論全員、半裸や全裸)少女や淑女たち───
【モブヒロインズ】
も最初は俺に優しくしてくれて、素敵でカワイイ人たちばかりだったのになぁ~。
道具屋の看板娘に、美魔女の食堂のおばさん。
情報屋のお姉さんに、女騎士や女戦士。
綺麗な踊り子さんに、旅の商人の孫娘さん。
執事服が似合う男装女子に、巨乳メイドさんたち。
些細な縁で知り合った女性だけの冒険者集団に、子持ちの人妻。
エトセトラ。
みんな…みんな…みんな本当に良い人逹で、俺なんかに関わらなければ“こんな事”にはならなかったかもしれない人達ばっかりだったのに…。
俺はその人達を一瞬険しい顔(申し訳ない顔)をしながら見た後、人生で何度目か分からない溜め息を小さく吐いて、ドクズを睨み呟く。
「んじゃあ俺は出て行く。今まで世話になったな、あんがとよ…。 ──あと、あの“約束”……忘れんなよ?」
「勿論だとも! 君に言われなくてもね。さっさと村にでも帰って、独り寂しく自分を慰めでもしなよ! 負け犬くんww」
「ッッ!? 最後の最後まで…テメェーは──ッ!! ちっ…あばよ!」
勇者の安い挑発に怒りが爆発し、思わず殴り掛かりたい衝動に駆られて数歩前に出るが、グッと堪えて踵を返し、この部屋の出口に向かう。
出口に向かう途中、フッとこれまでの事を思い出す。
(村を出て約3年ぐらいか? 長かったな…)
ドアノブに手を掛け、もう一度だけ振り返って奴らを見る。
正確には大好きだった幼馴染で、最愛の『元』恋人を──。
「トーヤ君…大好きぃい♡ 愛してるぅう♡」
フィオナとも勝るとも劣らない豊満な胸を激しく揺らし、魅力的で素晴らしいその容姿を屑に好き勝手に弄ばれて“桜色”の長くて綺麗な髪を振り乱し、此方を見詰め返す美少女──ミルフィー。
俺は彼女とのこれまで出来事を…共に重ねてきた大切な想い出を、静かに思い返す──。
◇◆◇◆◇◆◇◆
『えっと…わちゃし、みるふぃー。よろちくね! エヘヘ♪』
恥ずかしがりながらも、優しく微笑み掛けてくれたミルフィー。
物心付く前から一緒に居るのに、改めて自己紹介させられる事になって、その時にフッと思って気づいた。
あっ! “天使”って本当に居るんだなって。
『わたし知ってるよ! タクトくんが本当はとっても優しい子だって。だから元気出して』
俺が落ち込んでいる時には必ず傍に居て、励ましてくれて。
『コラァー、タクト君を苛めるなあー! タクト君を苛める人はわたしが許さないんだからあー!』
本当は誰よりも争い事が苦手なのに、俺の事になると勇気を振り絞って、その小さな身体で庇ってくれて。
『やったね! 凄い…ほんとに凄いよ!』
『あぁ~もうっ! あそこは怒って良いところなんだよ!』
『悲しい時は泣こう? 我慢しないで。私も一緒たがら…』
『タクト君! とっても楽しいね! あはは♪』
一時期ちょっと辛い事があって、そのせいで情緒不安定になった挙げ句、感情が上手く表せれなくなった俺に代わって、喜怒哀楽を表現してくれて。
『ねぇタクト君。“タッくん”って呼んじゃダメかな? 別に大した理由はないんだけど…。私だけの呼び方が欲しいっていうか…。ごっ、ゴメンネ! 彼女でもないのに急にこんな事言われても──えっ、良いの!? ほんとにっ!? やったやった! ありがとう!』
いきなりバカップルみたいなあだ名で呼びたいって言われた時はビックリしたけど、何か妙にしっくりきたからOKして、そしたら子供の様にはしゃぎまくって…。
『あのねタッくん。わたし…タッくんの事が好きなの! 大好きなのっ! 私を…彼女にしてくれませんか…? ──きゃっ! たっ、タッくん!? えっと…これってOKって事だよね…? ──ひっぐ…えっぐ…良かったぁ~…。ありがとう! 私を受け入れてくれて…。ほんとにっ…本当にありがとおぉ~!』
俺が先に告白するつもりだったのに、先を越されたもんだから、お返しに返事の意味も込めて想いっきり抱きついたら、顔を真っ赤にして…。
キョトンと可愛い顔をしたと思ったら、そのままワンワンと泣き出して…。
『うふふ♪ いま私とっても幸せ。だって大好きな人の隣で、こうして肩を並べられてるんだもんっ! タッくん。私と出逢ってくれて、私を選んでくれてありがとう。大好きだよっ!』
寧ろ御礼が言いたいのは…感謝の気持ちでいっぱいなのはこっちの方なのに、頬を赤くし、満面の笑みでそう言ってくれて…。
『約束しようタッくん。例えどんな事があろうと、ずっとずっと…ずぅ~とっ! 一緒に居るって…。結婚して子供が産まれて、その子達が巣だってお互いにしわくちゃなお爺さんお婆さんになっても、死が二人を別つその時まで…。──ううん。死が二人を別つても、その後再び出逢って、一緒に生まれ変わりを待つの。そして必ずまた一つになる…。それを繰り返すっ! ──ちょっと重いかな…? えっ、本当に? うん! 約束するっ! 指切りげんまん、嘘吐いたら『お互いに相手の事が無関心になるまで針をのぉ~ますっ!』指切ったぁ~♪ ──えへへ…。タッくん、大大大好きだよっ! 愛してる…』
俺も大大大大好きで、めちゃくちゃ愛してた…。
初めて「狂うほど人を愛す」ってのを教えてくれた──。
お前の為なら何でも出来た。
『凄いねタッくん! こんなことが出来るなんて!』
お前が居たから頑張れた。
『はいお弁当。大好物の卵焼き入ってるよ、頑張ってね!』
お前の前だから無茶が出来てバカやれて、格好つけれた。
『あんな危ない事…もう二度としないでッ! ほんとにっ…本当に心配したんだよ…。ひっぐ…えっぐ…』
お前の傍でだったら、素の自分でいられた。
『このアニメそんなに面白いの? ──ル○ナス…? マ○った…? ちょっと何言ってるか分かんないけど、タッくんが楽しそうで良かった♪』
お前が欲しがれば何でも手に入れた。
『どうしたのこれぇ!? えっ、私に…? ありがとう! 大切にするね♪』
お前が望めば何だってした。
『明日バイト…? そっかぁ…。デートは無理だよね…。えっ、いいの…? うん! 終わるまで、ずっと待ってる♪』
お前に名前を呼んでもらえるだけで……世界の全てが俺に味方してくれている! ──そんな気になれた。
『タッくん!』
『タッくぅ~ん!』
『タッくん?』
『お~い、タッくんってば!』
『たっ、たっ、タッくん!?』
『もお~、タッくん!』
『えへへ…♪ タッくん♪』
お前が“隣”で微笑んでくれている──。
それだけで俺は…死ぬほど幸せだった……。
『タッくん。私は世界中の誰よりも、貴方の事が大好きです! 心から愛しています…』
何を犠牲にしても何を失ってでも、例え世界中の人を敵に回すことになったって、お前は…お前だけは守り通すつもりだった。
なのに…なのにっ……なのに………ッ!!
感情のあまり俺は、自然と彼女の名を呟いていた。
「ミルフィー…」
そんな俺を見て【悪魔】が嘲笑い、彼女に囁く。
「君は本当に女々しい男だな…。ミルフィー! あの憐れな負け犬君に、キミも最後に何か言ってあげなよ」
悪魔にそう言われ、『最愛の元カノ』が俺に向かって最後の言葉を掛けてくれる。
──でもそれは何よりも…今まで受けてきたどんな仕打ちや拷問や罵倒よりも、俺の心を深く抉った……。
「ふぇ…? えっと…キミ誰だっけ…? ナニト君? ダレト君? ああー、思い出した。トーヤ君にあらゆる事で負けた、負け犬マケト君だあ~w ──まあどうでもいいけどお~、いま私とっても幸せだからぁ~、邪魔しないでねぇ~。あと、これもういらないからぁ~、捨てておいてぇ~ww 私の部屋に“同じ様な物”が他にもあるからぁ~、ついでにそれも捨てておいてねぇ~。じゃあねぇ、バイバァ~イwww」
そう言って投げ捨てたのは──小さな指輪だった……。
「──ッ!? ミル…フィー……ッ!!」
俺はそれを覚束無い足取りで近づき、震えながら拾い上げる…。
それは彼女の誕生日にプレゼントとしてあげた指輪…。
彼女の喜ぶ顔が見たかったから寝る間も惜しんで働いて、趣味のコレクションやら何やらを全て売り叩いて漸く買えた指輪…。
金持ってる人達からしたら安物かもしんねぇーけど、当時の金の無ぇ俺からしたら目玉が飛び出るぐらい高くて…。
でも彼女が瞳をキラキラさせて「キレイ…。ステキ…」って言っていたのを覚えてたから、そっから死ぬ気で頑張って…。
プレゼントした時はそれに装飾された宝石なんかよりも、とても綺麗で価値のある、大粒の涙を流して喜んでくれたっけ…。
それからずっと、後生大事に肌身離さず大切に持っていてくれたお気に入り…。
どんなに離れてようとも、どんなに逢えない時間が続こうとも、俺と彼女を確かに繋いでくれていた“宝物”……。
それを───。
『タッくん。 ──ア イ シ テ ル── 』
───────プッツン……。
あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”
あ”あ”あ”あ”ア”ア”ア”!!!!!!
・・・・耳障りな話し声が俺の耳に入ってくる…。
「あははははww ミルフィー、キミ最高だよっ! ご褒美に後で何でも好きな物を買ってあげよう! あんな粗悪品なんかじゃなく、もっともっと高価な物をね♪」
「ほんとにっ? やったぁ~、ありがとう。トーヤ君だぁ~い好きぃ! あんなダサいのじゃなく、素敵なのお願いしまぁ~す♡」
「あぁ~ん、ミルフィーだけズルいぃ~。トーヤァ! 私にも、ちょうだぁ~い♡」
「トーヤお兄ちゃん、私も欲しいのがあるのっ! 買ってくれないかな?」
「私もそろそろ新しいドレスが欲しいです。いま着ているのは、飽きてしまいまして…」
「ソフィアちゃん、贅沢ねぇ~。アレ、まだ二回しか着てないじゃない。そう言うお姉さんも、新しいバックと高級チョコが欲しいなぁ~♡」
「勿論! 皆も好きな物を好きなだけ買うといいよ。【勇者】であるこの僕が、全額出してあげるからさ♪」
「「「キャー! 大好きぃ! 愛してるぅ♡」」」
───そのまま一生やってろよ…。
俺は指輪を懐にしまい、ふらつく足でなんとか出口にたどり着き、最後の最後に奴らに向かって呟く。
「じゃあな…。最愛の“元”ヒロインたち……」
俺はそっと静かに、部屋を出て行った──。
長くてすいません。
小説書くのって難しいですね。(^-^;
次話からは、出来るだけ短くまとめるように努力します。
(´д`|||)
さて。次話から【真のヒロイン】ちゃん達が出てきます!
期待しないで待っていてください。
(こんな作品…待ってる人なんて居るのかねぇ……?)
タグでも書きましたが、──「コイツら…ヒロインって呼べるのか?」って娘たちが出てきます。
暖かい目でお読みください…。
(´ 3`)
※例え低くても良いので、評価(☆)してくれると有難いです。