怪しい占い師4~お偉いさんはいつも過ち(間違い)を認めたがらない~
「もうパン飽きたー! 次はイチゴとミカン食べるぅ~♪」
「幾らなんでも食いすぎだバカッ! 俺ん家の食料を食い尽くす気かっ!」
◇◆◇◆◇◆
俺がそう言うと悔しそうな申し訳なさそうな感じで、下唇を噛んで黙り込むお姉さん。
それを見て俺は溜め息を吐く。
暫くの沈黙の後、絞り出す様にお姉さんが問い掛けてくる。
「どっ、どうしてそう思うの? そう思った理由を教えてもらえるかしら…?」
「簡単な話ッスよ。お姉さんが『自分は女神の遣いだ!』って言ったでしょう? つまり女神様は人を使ってまで『誰かに何かをやらせたい事がある』って事だ。基本的には放任主義の筈なのに…。んで。あのどう見ても【勇者】に相応しくないクズどもの話と、さっきのお姉さんの例え話…。ちょっと想像力を働かせれば自然と出る答えッスよ。当ってるかどうかは別としてさ!」
本来物語なんかに出でくる【勇者】って言うのは、凛々しく・逞しく・勇ましい者。
他者の為に本気で怒れて悲しんで、強くなれる心優しい者。
人の為に…愛する者の為に努力を惜しまず、その身を犠牲にしてでも何かを守ろうとする者。
極端な事を言えば『自己犠牲の塊』みたいな人を【勇者】って呼ぶはずだ。
なのにあのクズ共ときたらまるで正反対で、決して他者の為には動かず、己の為…私利私欲の為にしか動かないで、命令だから仕方なく【“それっぽい勇者活動”】をするだけ。
少しでも一緒に居れば誰もが思うだろうよ…。
『本当にコイツらは勇者なのだろうか?』ってな。
そんな疑念を抱いているところに『女神の遣い』なんてヤツが来て、あんな回りくどい例え話なんかされてみろ。
感の良い人なら俺が言った事を多分思うはず…。
少なからず『やっぱりあの勇者たちには何かしらの“問題”や“欠陥”があったんだ…』って考える。
俺はお姉さんを冷めた目で見詰め、自分の考えを…想った事をぶつける。
「これはあくまでも俺の想像なんだけど…。お姉さんが俺に伝えたい用件は『女神の命令で、いまの勇者の代わりに【魔王復活の阻止】…。もしくは【復活してもそれの討伐】──。』とかそんな感じのじゃないっすか? それも出来るだけ秘密裏に…」
「──ッ!?」
今度は息を呑んで驚くお姉さん。
驚き過ぎでしょうww
詰まらせたり呑んだり大変だねww
このまま息が出来なくて、死ぬんじゃない?ww
重要な場面なのに心の中でそう思う俺。
勿論、表情は変えずに。(笑)
更に話を続ける。
「さっきお姉さんが言っていた『神の世界にも色々ある。』って話…。あれも【勇者選任】の時に女神たちの間でなにかしらのトラブルやアクシデントがあって、それで本来選ばれるはずたった【本物の勇者】じゃなく、あんなクズ共が手違いで選ばれてしまった…。でも今更『あの勇者は間違いで、本物の勇者は他にいる!』なんて撤回が出来ない。何故なら──」
一息置いて、お姉さんを睨み見る。
お姉さんはそんな俺を静かに見詰める。
「例えどんな些細な“誤り”でも、女神が──“神”が過ち(間違い)をおかしたなんてことは、絶対にあってはならないから……」
俺のその言葉で更に表情を歪め、小刻みに震える。
声も震えていて、それでもどうにか呟き返す。
「ホントっ…凄いは貴方…。ほとんど当ってる……」
「そりゃどうも。話…続けるっすよ? ──つまり要約するとこの話は、勇者選任の時にトラブル…もしくはアクシデントが発生して、違う勇者が選ばれてしまった。それを知った大聖母神マリアネーゼ様…だっけ? その女神様は恐らく今回の四女神の“母親”で『娘たちがとんでもない失敗を仕出かした!』と焦り、急遽勇者の代わりになる人材…【勇者代行】を探しはじめて、そしてその勇者代行に総ての案件を片付けて貰おうと思っている。それも出来るだけ迅速且つ、極秘に内密に秘密裏に……」
話を一旦区切り、「フゥ~」と一度深呼吸。
お姉さんも静かに黙って見詰め返してくる。
俺は話の続きを言う。
「もしこの事が俺ら人間側や男神たちに知られたら大変な事になる…。お姉さんの話が本当なら、神の世界は男尊女卑が酷いんッスよね? んならバレた瞬間に男神たちから何を言われ、何をされる事やら…。少なくとも仕出かした四女神は確実に総攻撃されるッスよ。他の女神達も迸りを受けるかもしれない。勝手なイメージだけど、神様ってのは何よりも体裁や面子を気にするんじゃないっすか? 男神なら尚更…」
ここでまたも話を一旦区切り、今度は咳払い。
一人で長く喋ったから喉が…。
んんっ! …まあー! マアー! まぁアァ~ッ!!
って誰がイガ○ムやねんっ!?
・・・こんな時でもフザける僕を御許しください。
お姉さんに「次ふざけたら本気で怒る」って言われたのに…。
あっ! お姉さんがばっちい物でも見るかの様に、顰めっ面でコチラを見ていらっしゃるww
それも何も言わずに黙ったまま、静かにww
やっさすぅい~♪
でもそんなに見詰めても何も出ないし、反省も後悔もしない。
仲間にもしてやらないぞっ♡
──閑話休題。
「そんで今度は俺ら人間側。バレたら『全知全能である神がミスを犯した!?』って不信感を抱くヤツらが必ず出でくる。それも大勢…。幾ら放任主義っつたって、人々から信仰心が無くなるのは色々マズイ事になる。仮に男神に隠し通せても、それで駄目になったら意味がない…。──俺の言ってる事、何か間違ってるっすか?」
確認するようにお姉さんに訊ねる。
問われて、ますますプルプル震えるのが増す。
ちょっとカワイイ♡
アレかな?
産まれたての小鹿かな?ww
「何か…愛が重い……」って言った方が良いのかな?ww
えっ? 『バ○ビ』違い……?
・・・・木更津ぅ~、
キャ○ツ ニャー! キ○ッツ ニャー!!
どうでも良いけど、クド○ン作品って最高だよね♪
・・・また話が逸れました、ごめんなさい。
まあ俺から言わせれば間違いだったとしても、あんな勇者を選んだ時点で信仰心もクソも無ぇーと想うんだけどな。
ホントあの勇者たちの酷さと言ったら──。
俺が勇者について改めて感想を述べようとすると、震えならもお姉さんが返答してくる。
「悔しいけど、ぐうの音も出ないぐらい貴方が言ってる事は正解よ…。──でもだったら話が早い。貴方には勇者の──」
「だが断るッ!!」
「なッ──!!」
彫りを濃くして、決め顔でお姉さんの言葉を遮る。
よっしゃああっ!!
人生で一度は言いたい台詞、ベスト30の一つが言えたww
ジョ○ョは本当に名言(迷言)の宝庫♪
やったね。
おめでと、あいちゃん♪
家族がふえ……ジョジ○ファミリーになれるよっ!
ん? どっからか「おいやめろ!」や「トラウマ思い出させんなっ!」って聞こえてくんぞ?
──OK。
おふざけはこれぐらいにして、少し真面目に返そう。
俺は改めてお姉さんに向き直る。
「なんで俺が女神たちのヤラカシの為に、あの勇者どもの尻拭いをしないといけないんっすか? 冗談じゃないッ! 他を当たってよ。サイナラ~」
「待って! 貴方は本当にそれで良いの…? もしかしたら恋人や幼馴染達を取り返せるチャンスかもしれないのよ!」
「別にどうでもいいっすよ…。ぶっちゃけもう…色々疲れたんで……」
そう…。
ホントに俺の肉体と精神はそろそろ限界で、いつ“終わり”が来てもおかしくない。
さっきからフザケてはいるけれど、空元気も良いとこ。
最初はミルフィー達の為に…『いつかはこの地獄も終わりがくる』と想って頑張ったけど、それももう……。
それに……今更取り返したところで、
ミルフィー達はもう───。
俺が物思いに沈んでいると、
お姉さんの理不尽な声が聞こえてくる。
「お願い、貴方しかいないのっ! 今度復活する魔王はとても強大な力を持っていて、あの勇者達がいくら束になっても絶対に勝てっこない! このままじゃあ世界が魔王に滅ぼされてしまうかもしれないのよッ!? 貴方はそれで良いの…?」
「意外とお姉さん身勝手っすね…。女神がしくじるから悪いんじゃないんすっか…? ──お姉さんに分かるかなぁ…。女神にとったら…“神”にとったらほんの些細な取るに足らない出来事だったとしても、そのせいで人間が…どれだけの人達が酷い目に遭ったのかをさあ! 何十・何百・何千・何万…下手したら何億の人達が絶望を味わい、地獄を見せられ、人生を狂わされたと思ってるんだッ!! ふざけんなっ!!」
息を切らし、感情のまま大声で怒鳴る。
そうだ…。本当なら今頃俺はミルフィーと……。
フィオナ達だって…。
あんな勇者に出会ってしまったばっかりに…。
そんでその勇者は偽者ときたもんだ。
それも神のしょうもない失敗のお陰で…。
んで今度は神の面子の為に力を貸して欲しいだあ?
・・・・・・ざけんなッッ!!!!
こんな下らない…俺達から『幸せ』を奪った世界なんて、とっとと魔王にでも何にでも滅ぼされてしまえッ!!
俺は鬼の形相で睨む。
それを見てお姉さんがたじろぐ。
「ううっ…。そっ、それは……」
「ごめん…。お姉さんが悪い訳じゃあないのに。怒っても仕方ないのにね。兎に角俺はムリなんで、他を当たってください…」
顔を元に戻し、お姉さんに背を向けて、手を振りながら再び歩きだす俺。
けれど──。
「でも……それでも、貴方じゃないと駄目なのよっ! それに貴方はそんな人じゃない筈よ! 貴方にとって大切な人達って恋人や幼馴染たちだけなの…? 違うでしょうッ!!」
俺を叱咤するような、お姉さんの綺麗な声が木霊する。
俺は一瞬目を閉じ、
勢いよく振り返りながら言い返そうとする。
「お姉さんに…アンタに俺の何が分か──」
その瞬間。
何故か走馬灯の様に、いろんな人達の様々な表情が俺の瞼に浮かんでは消えていった。
誰よりも頼りになる、
大親友のフェイトたん。
俺たちをここまで育てて愛してくれた、
敬愛する両親。
いつも本当の子供のように可愛がってくれて、とても御世話になった、おじさん・おばさん達。
向こうはどう思ってるかは分かんないけど、
俺は今でも友達だと想っている“アイツ”。
俺や御主人様の帰りを健気に待ち続けているであろう、元気に走り回る“小さな命”。
心優しい気さくな村の皆。
最悪な事ばかりだったけど、それでもこの旅で出逢って俺に良くしてくれた、沢山の人達。
そして──。
綺麗に切り揃えられた“桃色”の髪を風に靡かせ、何処までも慈愛に満ちた瞳で優しく微笑む、最愛の恋人の──。
『タクト兄さん! 姉さんのこと宜しくお願いしますね。ボクはタクト兄さんにだから、安心して姉さんを任せられるんです! ──ウフフ♪ ボクは兄さんの事、信頼も信用も大いにしていますよ! だって…兄さんはボクにとっての──』
俺は目を開けて見開き、驚く。
何故ならそこにはフードがとれて、息を呑むほどの美しい顔を曝け出している、紺色の髪の超絶美女が大粒の涙を流しながら、俺の事を愛おしいものでも見るかの様に、静かに見詰めて居たからだ。
「なっ、何でお姉さんが泣いてるんっすか…。 別にお姉さんを責めてる訳じゃ……」
「分かってる…。でも貴方の気持ちを考えると、どうしても止まらないの…。それから、女神たちに代わって謝罪をさせて…。──本当にごめんなさいッ!!」
長い髪を前に垂らし、深く頭を下げるお姉さん。
それを見て俺は狼狽える。
「ちょっ、止めてよ! 何でお姉さんが謝るんッスか!? あ~もうっ! 分かったから…話聞くからあっ! だから泣かないでよ。俺…女の涙ほど苦手なもん無いんっすよ…。だから顔を上げてくれないッすか…?」
俺が本気で困っているのを感じたのか、
ゆっくりと頭を上げてくれるお姉さん。
頬にはまだ涙が流れているが、
どうやら泣き止んでもくれたみたいだ。
胸を撫で下ろす俺に対し、
優しく微笑み掛けてくれる。
その微笑みは思わず、ドキッ!
っとしてしまう程美しかった。
「ありがとう…。優しいのね」
「別に優しくなんかないっすよ。ただ俺が嫌なのと、親父や親友に『女を泣かせるような男になるな。女の涙を見て何とも思わない屑にはなるな』って言われてるからさ…」
「そう…。それでもありがとう。──ボソッ(余程素晴らしい人達に恵まれたのね。本当に良かった…」
「んっ? なんか言ったっすか?」
「ううん。何でないの…。話を聞いてくれるなら、こっちに戻って来てもらえるかしら?」
不安そうに…俺の機嫌を取るかの様に訊ねてくるお姉さん。
俺は小さくため息を吐き、頭を掻いて席に戻る。
「話は聞くっすけど、その頼みを受けるか・受けないかはまた別っすよ…? 」
「それでも良いの。貴方が最後まで話を聞いてくれる…。それだけで私は──」
お姉さんはそう言ってまた、
優しく微笑み掛けてくる。
その微笑みに再度 ドキッ!
っとしてしまう俺。
しかし、さっきは感じなかった違和感に気付く。
違和感と言うより、不思議な感覚。
初めての筈なのに、
前に経験した事があるような…。
途方もない、安心感や幸福感。
心がとても暖かい気持ちになる様な感じ。
『実はそこまで大きくないけれど、でもやっぱり壮大な“存在”が、ずっと見守ってくれている…』
そんな感覚。
(一体これは…。それにさっきお姉さんの涙を見たら、尋常じゃない罪悪感に見舞われたんだけど…。──考えても仕方ないから、やぁーめたっ!ww)
俺はそのままお姉さんの話に聞き入った。
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