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魔術師の少女、世界端末の少年  作者: 海山優
三章『その目に映るのは』

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◆八話と九話の間:スノウのゆるキャン

なお、言うほどゆるキャンではない

 目的の湖畔キャンプ場へと辿り着いた。予約も申請も不要の無料キャンプ場となる。


 こういった無料で開放されているキャンプ場は利用者の善意やら良心やらを前提とした運営がされており、利用者がルールを破ろうものならあっさりと有料化や利用禁止に繋がる可能性がある。昨今ではキャンプブームが到来しており、そういったルールを守れない――そもそもルールをよく理解していない、或いはルールを守る重要性を理解していない人が増えているとも言われている。実際、そういった利用者によってキャンプ場として利用できなくなった場所が近年で増えていると火灼も嘆いていた。そのこともあって、これまで悠々とキャンプを楽しんでいた古参キャンパー達は新規参入に対して諸手を挙げて歓迎しづらくなっているとかなんとか。そんなことを火灼が言っていたけれど、本当なのだろうかね。


 キャンプにさして興味のない私――スノウ=デイライトからしてみれば至極どうでもいいことだった。


 ――もし秦くんをキャンプに誘うとしても、私ならグランピングにするだろうし。


 このキャンプ場は立地的には些か交通に難がある上、冬場の気温はあっさりと氷点下になるため、この時期ともなるとそこまで人気がない。というか、私以外に利用者がいなかった。


 なので、ちょっとばかり声を張り上げてみた。


「ここをキャンプ地とする!」


 ――人生において言ってみたいセリフランキング四位に入る言葉である。


 なお、秦くんのランキングだ。


 私はそんなランキングを考えたことはない。秦くんに言われてみたいセリフランキングは考えたことがあるし、なんならこないだレジュメにして本人に渡した。


『スノウさんや、これ言わなきゃダメなやつ?』


 並んだ文字列を見て遠慮したそうな顔をしていたが、


『言わなきゃダメなやつです』


 などと押し通したら機会を見て言ってくれるとのことだった。


 秦くんはあれで結構ちょろい。以前にペアリングが欲しいと言ったときは、指輪に抵抗があるのか大層恥ずかしそうにしていたが、普段はネックレスにするという妥協点を示したら頷いてくれたのである。秦くんマジちょろい。


 旅行鞄を開き、その中で空間魔術を開く。


 火灼の部屋から拝借したキャンプ道具一式を取り出す。一応の配慮として、鞄から道具を取り出しているように見せる。誰も見てはいないが、魔術師としてはこういった細かな動作も気を付けなければならない。


 テント。タープ。アウトドアチェア。テーブル。ガスランプ。シングルバーナー。ケトル。


 じっくりと見れば、鞄の容積を軽々と超える物資が私の周囲に展開されているので、おかしいのは一目瞭然なのだけれど、どうせ誰も見ていないからいいのだ。


「魔術師とは、矛盾を許容する生き物である」


 堂々と言い訳する。


 そんなことを言いつつも、テントを組み立て、テントの入り口部分が陰になるようにタープを張り、グラウンドチェアを二つ用意する。一つはタープの下で使う用で、もう一つは持ち運び用だ。


「キャンプの準備はこんなものでいいかな。さて……」


 一通りの準備は終えたので、次の作業に入ることにした。


 ――すでに周囲は暗くなっているが、夜目は利く方だ。


 秦くん達がいる方へと視線を向ける。


「ついでに散歩でもするかな」

>夜目は利く方だ。


ちなみに、スノウは光源がなくとも読み書きができます。

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