2.授かる福音
なかなか長ったらしい文になっていますがお許しください。
【学園】それはこの世界__いや日本において数少ない教育機関である。
ここでは一般教養はもちろんのこと、終世の日以降現れた脅威に対しての教育を行っている。
一言でいえば、対モンスター特務機関の一部である。
少年はこの【学園】の高等部の3年であり、18になるこの春にて神からの福音__通称【ステイタス】を授かることとなる。
周囲の学生は
「ようやくあの化物どもを倒すことができる!」
「俺、あいつらを倒して大金を手にして見せるぜ!」
「俺の核は絶対英雄の器になるぜ!」
「私、大丈夫かな?」
「大丈夫だよ、なんたって僕が守って見せるから」
『キャーーーーーーー、かっこいい!!!』
と、今か今かと授かる恩恵に対して興味や不安、興奮を抱いている。
しかし、少年は違った。
(早く、帰りたいな。というか眠い)
机に突っ伏すようにして寝ていた。
本当に恩恵に対して興味がなかったようだ。
「ねぇ」
と、少年へ声をかける者がいた。
「ねぇってば」
しかし、少年は寝ている。
「ねぇってば!」
彼女は少年を揺らす。
しかし起きない。
「ねぇ!!」
彼女は怒ったのか少年を叩く。
「ん.........何?眠いの見てわかんないの?」
さすがに叩かれたからか少年は目を覚まし、正面にいる彼女に問いただす。
誰でも寝起きは機嫌が悪い。
彼女は驚きはしたが、すぐに少年へ話す。
「今日が何の日か知ってるの!?神様からの福音をいただく日なんだよ?なんでそんな寝てるの?」
「いや、別にその日でも寝てはいけないとは言われてないだろ」
「でも、普通は寝ないよ!.........もしかして今日が楽しみで寝られなかった口?....えへへ、私もそんな感じなの!」
と、目の前の彼女は気分が高いのか少年に話す。
「.........別に楽しみにしてたわけでもないよ。ただバイトで忙しかっただけ。だから眠いだけ。OK?understand?」
「え、あぁごめんね。じゃ、時間になったら起こすよ」
「おん、ありがと」
と、少年は騒がしい教室の中、ひとり眠りについた。
しばらくして教室の扉が開き、先ほどの喧騒が一転し瞬く間に静寂が訪れた。
「おう、お前ら。いつものバカ騒ぎはどうした?」
男は辺りを見渡す。
いつもなら男が話すまで騒ぐ教室が今日は静かで学生はすでに席へ着席されている。
まぁ、それもそのはず。ここにいるほとんどはこの時を今か今かと待ち望んでいたのだ。
早く進めてほしいかの如く、男へと見つめる。
「まっ、お前らの気持ちもわからんではないがそんな急いでもすぐに行うわけでもないだ。もう少し落ち着けよな、てことで委員長、体育館へ誘導よろしく」
「はい、先生。じゃあみんな体育館へいくよ。....くれぐれも騒がないようにね」
『はーい』
そういうと、皆体育館へと向かっていった。
「おい、時間だぞ。さっさと起きろ」
「ん.........時間か」
「あぁ。....相変わらず寝れてねぇのか」
「まぁな、仕方ないことだからな」
「無理はするなよ。心配してるやつはいるんだからよ」
「あいよ」
少年も目を覚まし、体育館へと向かっていく。
「..............というわけですので、今日この日まで我々人類はモンスターを討ち倒し、己が資源としてきました。そしてこの日をもって第10期生は神からの福音を授かることとなります」
と、校長によるいつもの長話を聴いている。.....とはいっても大半の学生はこの後のイベントに対して意識が向いてしまっているが。
「皆さんはこれから恩恵を得て、力を得ます。子の力は我々人類にとって希望になることに違いはありません。しかし、だからこそ私は皆さんにこういいます。どうかこの力を使わない人生を送ってほしかった。.....確かにこの力は我々人類の最後の希望です。それと同時に悪になりうる力と変貌します。皆さん、授かった力と真摯に向き合い寄り添うよう、努力していってください。これで私の激励の言葉とします」
と、校長からの言葉をいただいた。
大半以上の学生は校長の話に聞く耳を持ってはいなかった。
しかし、少年は違った。
それはひとえに彼の人生がそういうものだったからというべきなのだろう。
彼にとって神からの福音は呪音のようなものだから。
『それでは各クラス一列になり、並んでお待ちください!くれぐれも【ステイタス】を公にさらすことは避けてください!』
学生指導の先生の指示のもと、学生たちは迅速に行動する。
並んだ先にあるのは幾何学模様の形をした水晶。
その水晶をもった老人が一人一人に手渡される。
そして、その水晶は手の甲へ吸い込まれる。
誰も異常なことだとは思っていない。
これが日常、普通のことなのだ。
この幾何学模様の水晶こそ、神様からの福音【ステイタス】の結晶なのだ。
水晶単体に力があるというわけではない。【ステイタス】の結晶を人体に吸収されることによって始めて人類に超人的な力を授かることとなる。いわば核なのだ。
そのため、この光景を誰も異常だと思わない。
それは少年も同様であった。
「どうも、こんにちわ。これが君の【ステイタス】だよ。.....君、名前を聞いてもいいかな?」
「どうも。.....自分は睦紀、紫翠 睦紀です」
「そうか。.....柴翠君、これは君にとって果たして希望となるかな?」
「さぁ、どうでしょうか。自分にとってこれはどうでもいいものですから」
老人へそういうと、少年__睦紀はその場をあとにした。
ようやく主人公の名前が登場しました(笑)。名前に関しては何となく考えた名に適当に当てたものですw
男教師・校長・女学生・男学生・老人の名前を決めていないため、このような文となっています(笑)