からすの合唱
深夜、からすが大きな声で何かを話していました。
私は、そっと耳を澄まして、会話を聞いてみました。
「みんな~あつまって~」
「はーい」
「じゃあ、出席取りまーす」
「はい!」
「からすまくん」
「はい!」
「からすやくん」
「は~い!」
「かあかさん」
「はい」
「すらかくん」
「はい~」
「からしゅうくん」
「…はい」
「よし、OK。じゃあ、今日は、お歌を歌いましょう」
「やったー!歌歌おう!」
「今日歌う歌は、七つの子です」
「わーいあれ好きなのー」
「…歌いたい」
「今日は、歌の先生がついてくれます」
「わしはからやまと言います。よろしく頼むぞ」
『は~い』
「それでは、まず、みんなで合唱をしましょう」
「せーの」
『か~らぁすぅ~なぜなくのぉ~からすはやぁ~まぁ~にぃ~』
先生はニコニコ見ていました。
だけど、もうずれずれで、合唱としてなっていませんでした。
『かぁ~わい~い~なぁ~なあつぅ~のぉ~子があるかぁ~らぁ~よぉぉぉ~~』
「すとっぷ!すとっぷ!」
『こりゃすごいな…』
「みなさん、張り切っていてとてもいいです。ただ、もっとお友達の声をよく聞き、みんなに音を合わせるようにしましょう」
「みんな、確かに、元気が良くて素晴らしい。じゃが、元気なだけでは、合唱ではないぞ。」
「どんな感じにすればいいですか?」
「からすまくん、それは、お互いを思いやるのじゃよ。お互いに音を聴きあって、お互いの呼吸に合わせるのが大切じゃ」
「なるほど…」
「呼吸に合わせる…か」
みんな考え込んだみたいだ。
「名指しするようで悪いんだけど、特にすらかくん。君は速かったり遅かったりして、なかなかみんなに合わず、自分のペースで歌っている。すらかくんはいつも自分の思うままに動いていないかい?」
「確かに、すらかくんとだとけんかになることが多いかも!」
「お、おい、やめろよ、からすや!」
「まあ、まあ。落ち着いて。落ち着けば、もっとよくなるはずじゃ」
「はいー」
「じゃあ、もう一回歌ってみましょうか。」
「せーの」
「かぁ~らぁ~すぅ~なぜなくのぉ~からすはやぁ~まぁ~にぃ~かぁ~わい~い~なぁ~なあつぅ~のぉ~子があるかぁ~らぁ~よぉぉぉ~~」
「おお、さっきよりずいぶんよくなったぞ。みんなで音を聴きあえば、みんなが良くなっていくものじゃ」
「ありがとうございます!からやまさん」
「いえいえ、ところで、君たちはなぜ鳴くのかな?」
「それは…生きるため?」
「こうして会話もするのにも必要よね」
「かあかちゃん、確かに」
「…危険から守ったり、餌を見つけたときに喜んだりするときに鳴くものだと思います…」
「お、からしゅうくん、鋭いね」
「みんなに、からすがなく理由っていうのを、考えてきてほしいそうです」
「みんなが、どういう考えをするのか、また、どういうことを普段思っておるのか、知りたくてな。協力してくれるかい?」
「も、もちろん、興味あります!」
「すらかくん、やる気だね。では、よろしく頼むぞ」
そしてからすたちは散っていきました。
からやまさんは、すごく満足そうな顔をしていましたとさ。