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決戦

 小さな森にリオンが到着した。


 リオンの魔力が船から消えたことで敵は捜索を始めるだろう。


 見つかるのも時間の問題だろうが例え見つかったとしても敵の兵力はだいぶ()ぎ落しているので後は迎え撃つのみである。


 一同は入念に支度を整えた。


 リオンたちは多くの切り札を所持している。


 今まで回収してきた精隷石だ。


 ブロキスから託されたものが三つ、サネス姉妹の化身装甲から二つ。


 それらはブロキスから託された三つの内の一つであった雨燕の精隷石のように使用すれば魔法に似た効果が得られるものの、今までは建物を破壊したり味方を巻き込んだりする恐れがあったことから使ってこなかったものだった。


 だがここは敵地だ。


 存分に使うことが出来る。


 リオンは雨燕の精隷石の他にブロキスから託されたものの内の一つを装備する。


 それは付与された魔力を倍にして発動させるという木札の精隷石だった。


 それぞれの精隷石の効果についてはリオンとロブが含まれる魔力を見て推察したものであり本当にそうなのかは使ってみるまで分からない。


 だがこの木札は試すことさえも(はばか)られた。


 魔力の放出と吸収の流れが非常に緩慢(かんまん)なのである。


 つまり一度使うとかなりの期間を空けなければ再び使うことが出来なくなってしまうということであり、ここぞという時に使えないと意味がないので効果を確認することが出来ないのだ。


 この精隷石をリオンに持たせたのは護身用だ。


 万が一にも復活したアスカリヒトの攻勢が強く封印に支障をきたすようならばこれに反魔法を補佐させるでもアスカリヒトの魔法を跳ね返すでも良い。


 ただしその場合には元々桁違いの魔力を誇るリオンとアスカリヒトの力の衝突の影響は未知数となる。


 下手をすれば敵味方問わず周囲を吹き飛ばす結果になりかねないという危険性もあった。


 ロブはサネス姉妹の精隷石を持つことにした。


 エイファの精隷石は広い範囲に斬撃を飛ばすことが出来るようになる首飾りで、ニファの精隷石は蛇神の分身の炎の魔法の能力を向上させる刀身の破片だ。


 ただしニファの精隷石は惰気が強い。


 使っても短時間でないとロブの元々受けている呪いと反応して暴走してしまう恐れがあった。


 一方でオタルバが持つことになった指輪の精隷石は大地を揺らす効果を持つ。


 地属性の魔法を使うオタルバにはお(あつら)え向きの精隷石だった。


 他にも精隷石は所持していたが、ビクトル・ピークが着用していた上下の装甲義肢の精隷石二つとダルナレアで託されたバルトス・ジメイネス、セロ・ディライジャ両者の精隷石二つは念のため船に置いてきた。


 万がいち敵が船団を狙った時に調整技師ダロットが自身およびウィリー、グレコ、カートに装甲義肢を着用させるためで、稼働訓練をしていない彼らが義肢を着用するのは非常に危険性が高いがないよりはましだろうという判断だった。


「さあて、腕がなるね!」


 装甲義肢を着込むクランツ。


 何気なくそれを見ていたオタルバが違和感に気づいた。


 クランツは服を脱がなかった。


 確か、装甲義肢を使う時には肌を露出させないと大変なことになるのではなかったのか。


「クランツ、あんた服は脱がなくていいのかい?」


「おおん? きゃっ、オッタちゃんの物好き!」


「あんたの裸になんか興味ないよ! あとその呼び方やめな」


「なんだクランツ、お前に合わせた雷導に調整して貰ってたんじゃないのか」


「して貰ったけどなんだか軽くてしっくりこないからこのままでいいやって感じ」


 ロブにも突っ込まれてクランツは口を尖らせる。


 たしかに馴染みのある装備で挑んだほうが良いというクランツの意見も分からなくもない。


 だがせっかくダルナレアから調整士を連れて来たというのに利用しなければ意味がないではないか。


 この男はこの期に及んでも型破りだなとロブは呆れた。

 

「いいから服くらい脱いでおけ。もしかしたら雷導のお世話になるかもしれないだろうが」


「ええーんめんどくさいよお。ということで精隷石一個余ってるんだけど誰か使わない?」


「お前が持っていろ。俺たちだって何個も器用に使えるわけじゃない」


「じゃあ私が貰っておこう」


「ラグ・レは持ってても意味ないから駄目だよ」


「解せぬ」


 嬉しそうに手を上げたラグ・レにリオンが釘をさす。


「安心しろラグ・レ。俺も持っていない」


 装備を整えたエルバルドがアナイの戦士を慰めた。


 二人の装備は特に変更がない。


 ラグ・レはいつも通りの狩人の装束であるし、エルバルドは使い慣れた剣と盾と特注の甲冑である。


「なんだエルバルドよ、お前も何か欲しいのか。じゃあアケノーキナのお守りをやろう」


「いらな……まあ、貰っておこうか。これで七つ目だが」


「まだまだあるぞ! お前たちもいるか?」


「いらない」


 皆の声が一つに合わさった。


 それが妙に可笑しくてラグ・レ以外の皆が笑った。


 それから一同は武器の手入れも済ませ簡単に食事を済ませた。


 日が暮れたらエンスパリに移動して町の中に潜伏する予定であり、隠れられそうな場所はシュビナが偵察済みだった。

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