第四話
「青龍。知らないなんて言わせないわよ。『四神』くらい知ってるでしょ?」
「知って…るけど…何で…主て……」
状況が飲み込めない美咲は夢かも知れないと頬をつねってみた。
痛い。
「何してるの?」
不信気に聞いてくる青龍は、美咲にネックレスをずいと差し出した。
受け取れと無言で訴えている。
「受け取ってくれないと困るわ。主が、必要なの」
「どうしたの?」
家に入る否や、母が美咲の顔をのぞき込んで来た。
「え…。なんでも、ない…」
「そう?」
あまり深く追求しないほうがいいと考えたのか、沙羅は台所に戻っていった。
美咲はそのまま自室に行った。
「なんで、かなぁ…」
もう一度、例のネックレスを見る。
綺麗だ。
だが、それ以上に重く感じられた。
『探してる人がいるの』
青龍はそう言った。
『私の大嫌いな人』
『じゃあ探さなきゃいいじゃない』
しかし、青龍は頭を振った。
『駄目。気が済まない』
そう言った彼女は泣きそうだった気がする。
暗い倉庫では分からなかったが。
「どんな人かな。探してる人」
美咲は天井を仰ぐ。
『大嫌い。でも、好きなの』
あの少女が…
と言ってもまだ数分しか話したことのない少女だけれど。
それでも、そんな気がする。
きっとあの少女の心は強い。
「探してあげたいなぁ…」
素敵な人なのか…
「でも、大嫌いって……」
分かる気がする。
好きだから、恨まなくてはいけないこと。
好きだから、嫌わなければならないこと。
好きだから、どうしようもないこと。
きっとある。
「青龍、悩んでいたんだろうなぁ」