第994話
それは翌日、結果を心待ちにしていたところ届いた衝撃のニュースであった。
「そんな………!!」
ハッと口を押さえるリンフィア。
昨日飲み屋で話した内容は、リンフィア達にも伝えている。
だから、その失敗のダメージをよく理解していた。
焦るべきではないのだろうが、正直俺も似た様な心境だ。
寝耳に水とも言える報告に、動揺を隠せないでいる。
「………おい、マジか」
なんと、セイレーン達の協力が得られなかったのだ。
昨日、メシの後にコウヤは早速その足でカフェに向かったらしい。
そこには丁度ギルド帰りのセルビアもいたようで、協力を持ちかけようとしたのだが、
「なんかその日、急に外せない仕事が入ったんだと。あのカフェ全体のイベント、ときた」
「このタイミングで………クソッ………」
正直のところ、あてにしていただけあってショックは大きい。
だが、事情が事情だから、無理に頼み込むわけにもいかないだろう。
ここは仕方ない。
——————そう割り切ろうとしたのだが、
「それが、聞いて驚けよ、お前ら」
「………ん?」
誰もいないのに、どことなく警戒した様子で耳打ちし始めたコウヤ。
すると、予想だにしない事を俺に告げたのだ。
「領主直々の依頼らしい」
「なッッ………………!?」
いろいろなことが頭の中を駆け回る。
怪しんでいる領主が、よもや先手を打ってくるとは。
「絶対狙い撃ちだ。確実に俺らに手を回してきてる」
「ええ、おそらくはそうでしょうね………」
コウヤの推察に、ミレアも同意していた。
俺も多分そうだと思う。
このタイミングでのこれは、ほぼ間違いなく妨害。
そして、おそらくは警告も、だ。
逆らうなと言うことなのだろう。
「だーっ!! クソが!! まだ俺ら何も………つーか金髪、お前に関しては向こうは存在自体知らないん………じゃ………………いや、そうか………………衛兵か!?」
「いいや、衛兵じゃない。あいつらじゃ、セイレーン達が俺に借りがあるって事を把握のしようがない。けどセイレーン………………セイレーン!?」
そうだ。
セイレーン絡みのことを知っているのであれば、連中と関わりがある可能性がある。
「コウヤ。セルビアの声盗んだ奴居ただろ?」
「え? ああ、あの黒服か?」
「攻略本で、あいつらの事載ってないか? なんでもいい。領主との関連をつけてくれ」
わかったと頷き、コウヤは攻略本を取り出して情報を検索し始めた。
すると、ものの数分でコウヤは求めていた答えを発見した。
「!! お前らこれ………」
いつも通り、光の文字を呼び出し、ミッションの内容を抜粋した。
そこにはなんと、黒服の連中と領主の繋がりの詳細が書かれていたのだ。
「あの領主、黒服どもとベッタリだ!」
「「!!」」
ビンゴだ。
なるほど。
もとより俺はマーク済みと言うわけのようだ。
セルビアのミッション………あの一件以来だと思っておこう。
であれば、探られても無理はない。
「てかさ、だったらなんで黒服を俺らに仕向けない?」
「そりゃ、お前みたいに里の人気者をいきなり襲えねーからだろ」
知名度があるコウヤを襲わせれば、それ相応のリスクがある。
おそらく、一度黒服を無傷で退けた俺たちのことを考慮し、そのリスクの大きさを考えて手を出さないのだ。
「とはいえ………拠り所がないのはバレてるわけだな………………」
恐らく、個人個人にあたろうとすれば圧をかけ、集団であれば先程のように適当な理由で協力できない様にする。
そう言う腹づもりだろう。
助けは得られず、それどころか敵は里の領主。
力を失った今、戦力差は明らか。
向こうは表立って動けないとはいえ、とてもじゃないが正面から押し通って本体の目的を果たせるとは到底思えない。
万事休す、か——————
「——————表向きは、な」
「何か考えが………?」
よくぞ聞いてくれたリフィ、と言いたいところだが、それもまだ確証はないので、謙虚に小さく頷いておく。
だが、確かなことは、貸しは一つではないということ。
つまり、まだ終わっていない。
衛兵の代わりに見張りをつける策は死んでいないのだ。
頼む相手が相手なのでかなり気は引けるが、この場合仕方がない。
ゴーレムが街で暴れれば、そいつらも全滅だ。
ここは、遠慮なくその貸しを使わせてもらうほか無い。
覚悟は決まった。
まだ向こうの動機も全容も見えていないが、そんなことは関係ない。
ここ数日、世話になった里を潰させるわけにはいかない。
後は、成すがままに行動する。
「ああ。手口は決まった。ちょっと来い」
俺は、当日の作戦を告げた。
「いいか。4日後、俺達は————————————」




