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第99話


 「狂、王………?」


 「当時の魔王様は、急な即位でまだ幼く、上手く国を動かす事が出来なかったそうです。そこで王に助言をすると言う名目で彼らは権力を手に入れました」


 摂政………みたいなものか。


 「しかし、魔王様は為すがままにされたわけではないです。おかしいと思ったら意見をし、反対もする」


 あいつらしいな。


 何となくその様子がわかるような気がした。


 「でも、実際に事を行うのは彼らだった。あらゆる手を使い魔王様を欺き、魔王様が預かり知らぬ間に、彼らはどんどん魔族達の不満が魔王様に向くように仕向けました」



 「………とんだクズだな」


 これは多分リンフィアがまだ13、4歳くらいの頃の話だろう。

 そんな子供を騙して国を乗っ取ろうとした連中に虫酸が走った。


 「そうやって徐々に国は内側から蝕まれていってしまいました。それでも最後まで魔王様に付いていく方もいました。その中の1人が父です」


 という事は、リンフィアはヴェルデウスという男と面識があるはずだ。


 「そのお陰で魔王様はギリギリのところで王座についていました。父は兵からの支持が厚かったので、軍への影響力が強かったこともその要因だと思います」


 「………もうだいたい読めて来た」


 「………多分あなたの考えている通りです」


 「奴らはあくまでも自然に玉座につくことが目的なんだろ。崖っぷちといえど魔王は魔王。敵の連中に与してる城の中の連中と違って、特に事情が分かっていない市民からの支持は高いはずだ。連中魔王ってだけで崇拝しちまうとこあるっぽいからな」


 “神の知恵” によって得た知識の一つだ。

 魔族について、魔族は魔王を絶対的な支配者として盲目的に信仰していると言う知識があった。


 「その洗脳めいた思想に上書きをする、ってところか」


 「はい。魔王が絶対的な崇拝の象徴なら、それを塗りつぶすように、絶対的な憎悪の対象にすれば良いんです」


 「なるほどな………………」


 納得した。

 そりゃあ簡単にことが運ぶわけだ。

 城の内部は殆ど敵。

 そんな中、まだ子供であるリンフィアが対抗できるわけがない。

 

 「それに気がついた父は、ついに彼らを暗殺しようと目論みました。でも、失敗した」


 「失敗?」


 「当時の父は第一線を退いて、力が衰えていました。現役の騎士に苦戦を強いられていました。それでも負けることはなかった。それなのに失敗した。それは、“ある未知の力” で洗脳されたから」


 未知………


 「それは、知られている洗脳のスキルでもない。魔法でもない。何か別の私たちの知らない力」


 「………………!!」


 心当たりが、ある。

 それは俺にとっては身近な力だ。

 確かに、それは知らないものは一生知ることのない力だろう。


 「固有スキル………」


 気がつくと俺はそう呟いていた。


 「固有………何ですか、それ」


 「いや、まだわかンねー。これだけじゃ断定は出来ない。その時の事を俺は全く知らないからな………ん? お前なんでそんな事細かに知ってるんだ?」


 「それは、私のスキルのお陰です」


 「そうか、【現像】………」


 現像には別の能力がある。

 これは風景の現像だけではない。

 記憶の現像も可能だ。

 と言っても、写真にするのではなく、場面そのものを自身の脳に写す事が可能である。


 「でもあの能力は………」


 「はい………父の遺体から取り出しました」


 「!」


 まずい事を聞いてしまったと思った。

 このスキルでは、本人に触れたらたとえ死人でも記憶を取り出せる。

 しかし、その場合、最後の瞬間も記憶に刻まれてしまう。


 「………っ、悪ィ………」


 「いえ………もう立ち直りましたから」


 メイは少し困ったような顔で笑った。


 「………待てよ? じゃあ、お前リフィのこと」


 「はい、気がついていましたよ。魔王様は生き延びてらしたんですね」


 「何で………」


 「魔王様、リンフィアさんの今の生活も、私の今の生活も壊したくないんです。やっと、やっと手に入れた平和な日々なんですから」


 俺は少しほっとした。

 敵対されたらどうしたらいいのか迷ってしまうからだ。


 「では続きを。父の意識はそのスキルで殆ど奪われていました。しかし、ほんの少しだけ残っていた意識のおかげでその場面を写せました。でも父は、中途半端に残った意識のせいで、自分のやってしまう事に苦しむ事になります」


 「………」


 「意識を奪われた父はまず、自分の兵を殺しました。ある程度殺したら、今度は国民を殺し始めました。それも、父を支持してくれていた方たちを。そして」


 まだ、あるのか………ッ!


 「王弟を殺しました」


 「——————」


 王弟って、リンフィアの弟………だよな。

 殺した?

 あいつの肉親を?


 俺は無意識のうちに拳を握りしめていた。


 「父は一晩で裏切り者となりました。そして、魔王様は父を助けようとして、どんどん悪い方向へ転がっていきました。そこでもう父の意識は途切れました」


 リンフィアの性格上、味方をしてくれたやつを裏切るような行為はしないだろう。


 「その後は一瞬でした。魔王様は国を追われ、騒ぎを起こした父は斬首。こうして王家は滅びました。リンフィアさんが居ますが、もう王には戻らないでしょうから。その後、事件を起こした12人は国を治めているらしいです。私たちは父の遺体を持って国を出ました。手配書まで出た時はどうしようかと思いましたけど………どうにか生き残れました」


 「それがお前が知る全てか?」


 「はい」


 俺は少し黙り込んで考えた。

 今回の件とその事件の関連性は今のところはない。

 だが、そいつらが関わっている可能性はある。


 「そうか………連中に聞かなきゃならねー事が増えたな」

 

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