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第9話


 横で見ている石田の顔が鬱陶しいので今すぐにでもボコりたいが今は返事が先だ。


 「本当に出来ないのだな?」


 「ああ」


 さて、兵隊に混ざる羽目になるのか、一般人に成り下がるのか。


 「お主には……」


 それとも、


 「この城および城下町から出て行って貰う」


 あーあ、最悪のパターンが来たか。


 恐らくメンツのためだ。

 勇者に無能が混ざっているとなると国民に示しがつかないからってとこだろう。


 「一応理由は?」


 「言わずともわかっている顔だが?」


 王様ってことはあるらしい。

 こんなに賢いのに見る目ないねぇ。


 「さいで。んじゃ、出てってやんよ。最低限の生活資金は貰うがな」


 数名がざまぁみろと言っているのが聞こえた。

 石田に関しては露骨すぎるくらい顔が歪んでいた。


 「構わん、宿は用意した。今日はそこに泊まって明日出発すればよい」


 「はいよ」


 俺は兵に外まで連れていかれ、そのまま宿へ向かった。








———————————————————————————










 こうして俺は宿に着いた。


 「一応想定内だが、こいつはメンドいな。勇者として囲われるのが一番だったんだけどな。まさか、数ある選択肢の中でこれとはツイてねぇ」


 これに関しては運次第だったのでこれ以上は文句は言わない。


 「この周辺なんもないっぽいからしばらく野宿か。それは土魔法でどうにでもできる」


 あそこで思いっきり暴れてしまうのも良かったが流石に迷惑だろう。

 そこまでする必要はないな。


 「小屋じゃないふかふかのベッドなだけマシだな。あそこも悪くはなかったがやっぱり宿の方が幾分寝心地はいい」


 枕に顔を埋めて、考える。


 「一応、()()()()だ」


 この一年、 ちょっとした心境の変化があった。

 だから、この展開は俺の望むところである。


 さて、今後の方針はどうするか。

 もはやこの国に用はない。

 かといっても行くあてもない。

 ならば旅だ。

 ここには幸い金髪を嫌がる風習はないし、学校もないし、金もいくらかある。

 俺は自由だ。

 とりあえずはその金を当面の資金にしてギルドに加入し、クエストをこなしながら転々と旅をしていくか。


 「……結構楽しそーだ」


 あいつらもすぐに戦うわけじゃないだろうし、心配はいらない。

 いざとなったら割って入るくらいの力はあると思う。


 「せっかく修行したのによー」


 パーになったとは言わないがやりきれない気分ではある。

 修行と言えばクラスの連中がどの程度強くなったのか俺は知らない。

 でもそれも今すぐわかる。


 扉をノックする音がする。


 「開いてるぞー」


 来訪者は扉を開けた。

 人数は2人。


 「時間ぴったりだな」






———————————————————————————

 





 


 俺が城を出る寸前



 「はいよ」


 ただじゃ出ないがな。


 俺はまず生活五級魔法の【ミスト】で水を発生させる。

 次にそれを任意の場所まで運んだ。


 「この辺か」


 俺はミストを氷五級魔法の【コールド】で俺の手を伝いミストを凍らせ、床に文字を作る。

 文字はこう書いた。


 「宿・5時・集・後・踏む」


 水の量的にこれが限界だった。

 つまり言いたかったのは、

 

 「宿に5時に集まれ。読んだ後は踏みつけろ」


 と言うことだ。

 後はそいつの足に風魔法をあて、足元に注意を向け、読んで貰うと言うことだ。






———————————————————————————




 「琴葉、蓮」


 呼びつけたのはこの二人だ。


 「どう言うことか説明してもらえるかい、ケン。お前スキルを持ってないんじゃ無かったのか?」


 確かに当然の疑問だ。


 「ああ、今さっきやったのはスキルじゃねーよ。ありゃ魔法だ。修行で覚えた」


 「なるほど……それでどうして呼び出したのか教えてくれないか?」


 「俺は多分命を狙われる」


 「……!」


 琴葉は酷く動揺していた。

 蓮はなんとなくわかっていた風だ。


 「ケンちゃ……な、なん」


 「落ち着け、やられるつもりは一切ねー。理由はあれだ「偽勇者を抹殺するため」」


 「だよね」


 蓮はそう言った。


 「やっぱお前、俺のダチなだけはある」


 「それで、俺たちはお前を守ると言うこと?」


 「いや、違う」


 そうではない。

 俺が言いたいのはただ一つ。


 「お前ら、俺との関係を無かったことにしろ」


 「嫌だよケンちゃん!」


 琴葉が俺の胸ぐらを掴んできた。

 いっぱいいっぱいな顔だ。


 「友達やめろって言うわけじゃない。むしろそれは俺が困る。お前らは俺の唯一の拠り所だからな。俺が言ってんのは公にすんなってことだ」


 「だったら!」


 「自分の立場を考えろ。お前らSSSなんて持っちまったんだ。そんな奴が俺と関わってるって知ったら何するかわかったもんじゃない」


 俺のせいでこいつらが迷惑被るのだけは避けたい。


 「わかるか」


 「……」


 琴葉は俺の胸ぐらを掴んだまま顔を埋めた。


 「チッ、参ったな……じゃあ一個、約束してやる」


 「……」


 「俺は死なねぇ。絶対にだ。だからお前が死にそうな時、絶対に助けてやる。お前の大好きなお姫様抱っこ付きでな」


 「……うん」


 本当に手がかかる。

 一先ずこれでいいか。

 後はこっちだな。


 「蓮、俺が負けるとこ想像できるか?」


 「想像できないよ」


 「だろ?」


 「でもここじゃ話が違う! 負けは本当に死を意味するんだ!」


 こいつはこいつで頭が硬い。

 特に怪我や病気にはかなりうるさい。

 ましてや命がかかってるとなると、意思を曲げることはないだろう。

 ただ、納得させる方法はある。


 「鑑定、してみろ」


 「いきなり何を……」


 「いいからしろ」


 蓮は鑑定を使う。

 驚きのあまり大きく目を見開いて固まっていた。


 「なっ、なんだこれは……次元が違いすぎる。お前は1年間一体何を……」


 先程王城にて俺は大体全員のステータスを確認した。



———————————————————————————


 HP:800


 MP:100


 攻撃力:300


 守備力:300


 機動力:200


———————————————————————————


 これは大体全員の平均値である。

 ばらつきはこれから大体±300以内くらいだ。



 「俺たちは初期値が高かったからな。お前らみたいに普通に修行してもそこらへんの冒険者や下っ端兵よりは強い。だが、それだけだ。そんな連中が俺相手にどうこうできるとは毛ほども思わねぇ。そんなに倒したけりゃ魔王でも呼んで来いって話だ」


 たぶん本気を出せばこの国を滅ぼすくらいの力はある。


 「……わかった。もう止めない。そんなものを見て死ぬとこなんて全く想像つかなくなったよ」


 「やっとか、わからず屋め」


 なんとか説得できた。

 強くなってよかったと心底思う。


 「けど、それも許容範囲ギリギリだ。無茶をする様だったら俺は全力で止めるよ」


 やっぱり頭が硬い。

 だがそれは、こいつのいいところでもある。


 「おう」


 これでいい。

 これで心置きなく旅ができる。

 


 「それでケン、これからどうするんだ? 当てはあるのかい?」


 「ない」


 「無いのか」


 全くの無計画である。

 そもそも当てのない旅なのだ。


 「でも出るのは今日だ」


 「ああ、それがいいだろうね」


 「なんで?」


 やはり、アホだなーと思う。


 「あ、また失礼なこと考えてる」


 「またって、去年の話だろーが」


 記憶力だけは立派なんだよな、こいつは


 「襲撃さ」


 「襲撃?」


 「奴らが来るのは今日の夜。それも結構大掛かりに」


 「いい読みだ、蓮。惜しいけどな」


 眉ををピクリと動かす。

 これは納得いってない時の反応だ。


 「そろそろ来るぜ。連中」


 「そんなまさか」


 「わりぃ、時間がねー」


 「うわ!?」


 二人を屋根の上に移動させた。

 これは魔法でもなんでもなく、強化魔法使用後、2人を抱えてベランダから屋根まで一気に飛んだのだ


 「じっとしてろよ」


 ベランダから飛び降りた。


 「うわー、ケンちゃんテレビで見たヒーローみたい」


 「確かに。ヤンキーだけどね」


 「あはは。ホントだ」


 急いで部屋に戻る。

 できるだけ自然を装うために俺は部屋の椅子に座った。

 そして数秒後。

 扉をノックする音がした。

 

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