表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/1486

第89話


 「ふー、美味かった」


 あれから暫く食べまくって気がついたら腹がいっぱいになって居た。

 久々にこんな集中して食べた気がする。

 パンっと手を合わせた。


 「それは?」


 それ?

 ああ、手合わせか。

 


 「癖だ。気にすんな」


 飯を食ったら手を合わせる癖が俺にはあるのだ。

 いただきます・ごちそうさまと言う代わりにやっている。


 「うおっ」


 チラッと横を見たらラクレーも大量に食って居た。

 人は見た目によらないな。

 だが、ついつい食い過ぎても食いたくなる味ではある。

 現に腹パンパンになるまで食わない主義の俺も満腹になるまで食っている。

 よし、また来よう。

 

 「んじゃ、帰るか。美味かったぜ、にーちゃん。また来る」


 「毎度」


 店長はにっこり笑ってそう言った。

 俺はついでにラクレーにも一言言った。


 「じゃあな」


 「………」


 当然のごとくスルー。

 俺は苦笑しながら居酒屋を出ようとした。

 すると、


 「ん?」


 ラクレーが真っ直ぐ俺を見ていた。

 最初と違って敵意は無い。

 こいつなりの挨拶だろう。


 「今度ちゃんと勝負しようぜ」


 とりあえずそう返した。


 「!」


 反応あり。

 オッケーか?

 まあ良いや。


 俺はそのまま店を出て、西地区にケーキを買いに行った。











———————————————————————————











 「行っちゃったよ」


 店長はラクレーにそう言ったが、無反応。

 でもなかった。


 「てんちょ」


 「うん?」


 「あたし、祭りでる」


 「え、えぇ!?」


 これは大ごとである。

 他人と交わることを嫌うラクレーはこういうイベントには関わるまいとして居た。


 「ラーちゃんそんなにあの子が気に入ったのかい?


 「いや………」


 店長は、ラクレーをラーちゃんと呼んでいる。

 仲良さげな感じだが、関係性でいうと恋人同士と言うより、叔父と姪みたいな感じだ。


 この店長の名前は、サクラス・オーバーン。


 ダグラスの兄弟である。


 「そっかー。じゃあ、兄貴に聞いておくよ。剣天が出るとなると、喜んで出場させてくれると思うよ」


 「てんちょ」


 「うん?」


 「あたしが祭りに参加するのは、なんかやな感じがするから」


 「!」


 勘だ。

 ただの勘。

 しかし、ラクレーの勘は結構あてになる正確性がある。


 「何か起きるのかい?」

 

 「わからない。でも、あまり人には言わない方がいい気がする。だから、あたしが解決する」


 ラクレーは背中の剣をさする。


 「そうか………うん、それじゃあ早速兄貴に連絡を取るね」


 「ん」









 ———————————————————————————










 「何ィ!? 剣天がそう言ったのか! ヨォし! よく知らせた兄弟! 兄ちゃんは嬉しいぜ!」


 『はいはい、で、どう? 参加は可能かい?』


 「おう、あたぼーよ。あいつが出場するってのに出さねーなんて言うわけねぇだろ。それに断ったら多分あいつ俺斬ろうとするだろ」


 『うん』


 「うん、て」


 今使っているのは、この街で数個しかない通信魔法具だ。

 サクラスが所持している理由は、この国で唯一、剣天との連絡が可能な人間だからだ。


 『それじゃあ、仕込みがあるから、そろそろ。じゃあまたね、兄貴』


 「おう! じゃあな!」


 ダグラスは魔法具をオフにした。


 「ふー、出場か。あのラクレーがねぇ。嬢ちゃん、どういう風の吹き回しだ?」


 ダグラスは三帝全員と面識がある。

 故にそれぞれがどういう性格なのかそれなりに理解している。


 「まあいいや、あいつの性格上単独参加だろうし、そっちの方が俺も楽しめらァ。万が一あの女誘いやがったら俺らに勝ち目ねーしな」


 あの女、魔道王のことだ。

 魔道王はどうやら女性らしい。


 「単体なら負けねーぞ。俺だって伊達にギルド本部でマスターやってる訳じゃねぇからな」


 ダグラスは魔法武具のダガーの手入れを始めた。

 ちなみに、魔法武具も手入れは必要だ。

 適度に魔力を流すことで、()()()をなくす。

 つまりというのは、魔力を流した時に魔力が正常に流れず、機能しなくなる現象である。


 「主催者はギルファルド。参加者にはいつも出ないようなSランク以上の冒険者に女王にボウズにラクレーだ。楽しみで体がウズウズするなァ。強敵ぞろいだ。だが、」


 ダグラスは、もう一つ別の武器を取り出した。


 「今回は俺らが優勝だ」


 









———————————————————————————











 「ありがとうございました!」


 ケーキは無事買うことが出来た。

 俺はとりあえず、ケーキをアイテムボックスに入れた。


 「これだったな。ふぅ、女ってのは何でこう、スイーツが好きなのかねぇ。確か前に琴葉にも付き合わされたことあったな」


 そして爆食いした後明らかに太って居てもそれを指摘してはいけない。

 それは、パンドラの箱だ。


 「さてと、帰って俺も予備の剣くらい用意しておくか」


 俺は、お土産のケーキを手に持って帰路に着いた。

 散歩はこれにて終了だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ