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第84話


 「なん、で」


 驚愕を禁じ得ないのだろう。

 今までイカサマで負けなしだったのが大敗したのだ。

 負けなしなのを疑われなかったのは、運のパラメータがめちゃくちゃ高いと言うとか、そんなところだろう。


 「ツーペアかと思ったか?」


 おっと余計な口を出してしまった。

 どうでもいいけど。


 「!?」


 明らかに動揺していた。

 手口も確定だな。


 「まぁいいや、何にせよ俺の勝ち。金貨は4000枚だ」


 「うわっはっはっは! マジかボウズ! 勝ちやがった! 」


 「ご機嫌だなおっさん。言っとくが山分けだからな」


 「おうよ!」


 ヤベェ、しばらく働かなくてもいいんじゃね?


 この時点で既に大勝だ。

 恐らくダグラスの損失分も余裕で補填できる。


 「も、もう一度しましょう!」


 懲りねーなぁ。

 まぁその方が俺も都合がいい。


 「オッケー」


 俺はまた全てテーブルに置いた。


 「さて、今度は何倍だ?」


 ディーラーの男から血の気が引いていくのが分かる。

 後おっさんも。

 ちなみに俺はどうってことは無い。

 だって俺の金じゃねーもん。

 あ、そうだ。


 俺は魔法具の魔力を狂わせて壊しておいた。

 結構陳腐な出来だったので簡単に壊せた。


 「く、クソっ!」


 「止めておけ」


 奥から声が聞こえた。

 すると、


 「あ………ぁ………」


 男は小刻みに震え出した。


 「お、オーナー………」


 オーナーと呼ばれたのは、ダグラスと同年代くらいのおっさんだった。

 白髪でオールバック、異様なまでにスーツが似合う初老の紳士だ。

 豪快そうなダグラスとは対照的に、こちらはクールな印象だ。

 

 「よう、ギル。相変わらず儲かってるか?」


 「うむ、今しがた少々痛手を負ったところだ」


 「ガッハッハ! 4000枚だからな!」


 男がビクッと体を揺らす。


 「だが、そこまで痛手でも無いだろう。あんまし若ェ奴を虐めてやりなさんな」


 「虐めるさ。私のカジノでイカサマを使ったのだからな」


 「だろうな。ガッハッハ!」


 ダグラスは気がついていたらしい。

 流石にギルドマスターともなると簡単には騙されないか。


 「さて、坊や。よくイカサマ相手に勝ったね」


 「アンタも食わせ物だな。気づいてんだろ?」


 ギルファルドと呼ばれた男はニヤリと笑う。


 「面白いね、坊や。それに免じて許してやろう。4000枚持って行きたまえ」


 「おっ、太っ腹だな。取り上げられるかと思ったぜ」


 「いやいや、その程度のはした金、好きに持っていくといい。して、君の名前は?」


 「俺はケンだ、よろしく。にしてもアンタ、ただモンじゃねーな」


 強い。

 それもダグラスクラスいや、それより上かもしれない。

 

 「フッフッフ、つくづく面白い坊やだ。そんな力を持ちながら私のことを知らないとは」


 どうやら有名人らしい。

 しかし、俺はそう言うのには疎いのだ。

 向こうにいた頃も、俳優の名前とか全然知らなくて、琴葉からギャーギャー言われた。


 「ワリィな。そう言うのには疎いんだ」


 「なんだボウズしらねぇのか?」


 ダグラスが呆れたようにそう言った。


 「知らん」


 俺がそう言うと、ダグラスが深いため息をついた。


 「はぁ〜………オメェさん世間知らずにも程があるだろ」


 「さっきからそう言うのには疎いっつってんだろうが」


 「いいか? こいつはな、この国一番の大富豪だ」


 この国一。

 金持ちなのは予想していたが、そこまでとは。


 「国一番!? なんでそんなおっさんがこんなとこに来てんだよ!」


 「ここはこいつの経営するカジノの一つだ。この街は結構規模がでかいからな。王都とここにはしょっちゅう来てるぞ」


 確かに私のカジノって言ってた。

 いくつもカジノが経営が出来るってことは並大抵の富豪ではないだろう。


 「それもこいつの側面の一つだ。こいつは色々肩書きを持ってるが、一番有名なのは三帝の名前だろう」


 「サンテイ?」


 サンテイ………三帝。

 

 「武術・魔法・財力、各分野で天下を取った人間に付けられた称号だ。そのうちこいつは財力で天下を取った男だ。“万宝”ギルファルド・シルバ。万の財を持つ男だ」


 そんな有名人だったのか。

 いい感じに人脈が広がっていくな。

 

 「天下かぁ。おっさんは?」


 「俺か? 俺は男前なこの顔で天下を………」


 「なるほど、ただのギルドマスターか」


 「あー! テメッ、こいつと比べんじゃねーよ! しかもただのとか言うな!総本部のマスターだ! 総本部の!」


 「どうでもいいけど服着ろよ」


 いつまで半裸でいるつもりだ。


 「ギルファルド、名前は覚えた。三帝ってのと知り合えて光栄だ」


 「私も久々にいい縁が結べたよ。君は大物だね。それも大層立派な。人を見る目はあるつもりだから自信を持っていい。まあ、私が言わずとも自信は身についているだろうがな」


 俺たちは何かを探り合いながら握手を交わした。


 「「よろしく」」

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