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第828話


 「あ………ワイズくん」


 「如何されましたか? シェリアさん」



 「お嬢様に用があって………あの、お嬢様………」




 もじもじとしながら、何かを言えず口籠るシェリア。

 は立ち位置的に死角ではあるが、流石にこの距離からはっきりとわかる。


 そこに、もう1人隠れている、と。



 ミレアもこの距離になって気付いたらしい。

 コクリと頷き、シェリアに声をかけた。



 


 「構わないわ。もう1人いるんでしょう?」




 「えっ………………」


 「!」




 ミレアがそう言った声が聞こえたのか、外にいた人物の声が漏れる。

 男の声だ。

 年は多分、20代。

 ぶつぶつと呟く声を聞くと、本当に僅かだが、話し方に癖がある。

 決まりだ。



 俺は廊下に出て、男の前に立った。



 男は硬直してしまい、警戒している様子でじっと俺の顔を見ていた。

 だが、()()()()()()

 映っているだけだ。

 これでは俺に敵意がないとわからないだろう。


 無理もない。

 わざわざ隠れていたということは見つかってはマズいという自覚はあるのだろう。

 そんな中、許可も取っていないのに、この家の側にいる人間と接触して、気を抜けるはずもない。


 なので、




 「こちらに敵対の意思はございませんので、どうかリラックスなさって下さい」


 「!」




 と、あくまで正直に、一切の敵意を消し、こちらが受け入れる意思を見せた。

 それを聞いて、ようやく警戒が緩んだのか、男は俺のことが見えるようになったようだ。




 「さ、お嬢様がお待ちです。どうぞ中へ」




 男は黙って部屋に入って行った。

 ミレアは一瞬眉を潜めたが、初対面の奴の前で狼狽えるような真似は流石にしなかった。

 少し離れてきたという事だろう。




 「リュー、こっち」




 シェリアに言われると、リューと呼ばれた男はぴったりシェリアの隣に着いた。


 一応、俺もミレアの隣に戻っておく。

 さて、これで一応話し合いが出来る。



 早速、ミレアが男に手を向けながらシェリアに尋ねていた。



 「それで、その方は?」


 「………!」




 あ、流石にまずかったか。




 接近を許したせいか、僅かに我慢が表に出てきそうになっている。

 ミレアは落ち着くために紅茶を手に取って、ゆっくりと口に運んだ。




 すると、間髪入れずにシェリアはその質問に答えた。




 「はいっ、彼の名前はマダラメ・リュータ。私のダーリン()ですっ!!」









 「「「………………」」」



 一瞬、場がシーンと鎮まり帰った。

 平常なのは俺とシェリアのみ。


 マダラメ・リュータ………隆太は、ポカンとしながら赤面しており、一番酷かったのが誰なのかはもはや言うまでもない。





 「………………………だだだ………だっっっっっ!?」





 手に持った紅茶は既に空になっていた。

 濡れた膝も気にせず、ミレアはこちらを見ながらパクパクと口を開いている。


 マズい。

 これはマズい。

 幼い頃からずっと一緒にいたシェリアが、いつの間にか結婚していたことに相当ショックを受けている。

 加えてこいつは極度の男性恐怖症。

 複雑な心境とショックが入り混じってかなりパニックに陥っていた。




 「お嬢様………少し落ち着いて——————」



 「けけけけけっ、ケンくんだって!! だって!!」



 「ちょっ………!?」





 再び鎮まり返る。

 俺はミレアが落としたカップとソーサーをギリギリのところでアイテムボックスに収納した。

 

 なんとか間に合った。



 が、






 「………………ケンくん?」




 シェリアがそう聞き直して、思った。

 こっちは間に合わなかった、と。



 いや、まだわからない。

 はっきり聞こえてしまったようだが、どうやらまだピンときていないらしい。

 流石にミレアも我に返っている。


 まるで以心伝心。

 俺たちはこれから誤魔化す為に全力を尽くす——————




 


 「まさか………ッ………あのヒジリケン………か!?」







 はいッ、アウトォォォオオ!!!







 2人の心の声も、以心伝心。

 阿吽の呼吸。


 完全に一致して伝わっていた。




 ダメだわ。

 もうダメよこれ。

 フルネームですやん。



 日本人ならわかるだろう。

 俺は日本人顔だということが。

 そこまでくると色々と一致してしまう。

 もうダメだ。



 高く上がったフライは虚しくもキャッチされてしまった。

 完全にアウト。



 俺はフイッとミレアの方を見ると、何と顔を押さえて黙ってしまっていた。



 マジかこいつ。

 もう一度言おう。

 マジかこいつ。




 「………………仕方ねェな」




 パチン、と指を鳴らし、結界を作動。

 音魔法で周囲に音が漏れないようにする。




 「こうなった以上、正直に話すぞ、ミレア」


 「え………あ、れ………………ワイズ………くん?」




 戸惑うシェリアを他所目に、俺はわかりやすくなるよう、髪型を元に戻し、色をいつもの金髪に染め直した。

 それを見て、隆太は確信を得たような顔をしていた。


 やっぱり、戦争後俺の名は少しばかり知られるようになってしまったらしい。





 まぁ、こればかりは仕方ない。

 むしろいい機会だと思っておく。

 どの道、そろそろ俺の事情を知っている奴を増やそうとは思っていたのだ。



 なので、自己紹介をしておこう。





 「一応、本当の自己紹介をしておく。俺の名前はヒジリケン。改めてよろしく」

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