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第827話


 なんとも言えない表情のミレア。

 重い空気の中、ミレアは父の目を真っ直ぐ見つめていた。


 なんと答えるのだろうか。

 ()()()()ソワソワと落ち着かない様子であった。


 それだけでもわかる。



 ああ、こいつは何もわかっていない。

 周りの召使いの方がむしろわかっている。

 それも嫌な話だ。

 誰よりも子を理解しておくべきなどというつもりはないが、それでもこれはあまりにも酷い。



 ミレアの性格を知っていれば、誰にでもわかる事だ。




 「そう強張らないで下さい、お父様」




 答えなど、決まっている。




 「謹んで承ります」





 こいつも、なんだかんだで甘いやつなのだ。














——————————————————————————————













 「よかったのか?」


 「え?」




 キョトンとするミレア。

 部屋に戻ってからというもの、どこか上の空になっている。




 「話を受けて、って事だ」


 「一応父は公爵ですよ? 私はたとえ娘でも、独立して爵位を持っているわけでも無いのですから、断れるわけが………」


 「違うだろうが」




 大きく目を見開き、こちらを見つめる。

 なんて面だ。



 「違うだろ。それくらいわかる。あんまみくびンなよ」


 「………………あんなでも、私の父ですから。頼まれれば断れませんよ………それに、初めて父が頼ってくれたことが嬉しかったのでしょうね。なんだがぼーっとしてます」




 どこか上の空のミレア。

 嬉しい?

 とんでもない。

 大きな思い違いだ。


 これは、戸惑いだ。

 なんなのかよくわかっていないから、そう誤解しているだけ。


 今までよほど放任したのだろう。

 我慢強く意識の高いこいつは、その結果真面目で優秀に育った。

 こいつが7歳という早い段階で学院に行けて本当に良かったと思う。


 こんなところに長くいたら、こいつはいつかダメになっていた。

 






 「それよりもケン君ですよ。隠し事をするような父の言うことを、聞いてもいいと思っているのですか?」


 「ん? ああ、伏せるっつってたことか」


 「この期に及んでまだ隠し事をしているんですよ? 許せないでしょう?」




 俺はぽりぽりと首の辺りをかく。

 心配してもらって悪いのだが、そうとも限らないのだ。




 「隠してたことはまぁ、なんとなく理解してるよ」


 「え!?」


 「簡単な事だ。あの親父が妖精王の羽について俺に聞いてきた時、詳しく知らないと答えた俺に向かって、『聞いただけか』と尋ねた。普通そういうのを又聞きすると断定しないだろ? でも、聞いたと言うことを知っている。いや、予測したのだろう。誰かを通して、俺が“アイツ” と会ったことを知ったから」


 「………………あ——————」




 ミレアも察したようだ。

 俺が何を言いたいのかを。




 「断定できないが、あの罪悪感いっぱいの表情とこの状況、そこからして恐らく、あの時監視を仕向けたのはお前の親父だ」


 「お父様が………………監視を………」



 恐らく、俺を信用出来なかったのだ。

 それでも俺にミレアの手伝いを頼んだと言うことは、信頼が届いた………というわけでもない。

 予想では、その婚約者側と何かあって、俺に頼むしかなくなったと踏んでいる。

 仮にそうだとして、あの場で言わなかったのは、万一俺が何か企みがあるとして、その場合に俺があれこれと条件をつけるのを防ごうとしたのだろう。

 慎重な男だ。

 ミレアに対するあれこれは別として、考える脳はある。



 「はぁ………ホントに難儀な話………だ——————」










 見知らぬ誰かの気配を感じる。

 屋敷だ。

 向かう先は、シェリアの宿舎だ。


 マズいと思い、思わずガタンと音を立てて立ち上がった。




 「!? どうしたんですか!?」


 「今屋敷に——————」




 そう言いかけた瞬間、侵入者の足が止まった


 どうしたことかと思ったが、なんとそれだけでは終わらない。


 部屋にいるシェリアは外に出て、その侵入者の後をついていこうとしているのだ。

 



 「屋敷に侵入者が入ってきたけど………」


 「え!? だったら早く捕らえないと!! というかなんでそんな事がわか——————」


 「シェリアが、そいつについて行ってる。多分自分から」


 「は………………え? シェリアが………なんで………?」



 見るからに戸惑っているミレア。

 俺も正直驚きの連続で戸惑っていた。

 すると、シェリアと侵入者は、さらに驚きの行動にでた。



 「おい………ミレア」


 「………」


 「2人とも、こっちに来てるぞ!?」



 「ええ!?」




 いよいよ訳がわからない。

 間違いない。

 見つからないように、こそこそ来ている。


 ただ、驚くことに、見事なほど誰もいない場所を通ってこちらに向かっている。


 確実に死角から人が来た場合でも、決まってかわしていた。

 何かがある。





 が、俺はそれについて、すぐに気がつくことになった。







 「————————————」






 少し離れた宿舎から、こちらに近づいた事で、“知る力” を遺憾なく発揮できる範囲に入った。

 そして、その正体に気がつく。


 早速現れた。


 一つの肉体に、妙に混じり気のある魂を持った誰かがいる不思議な気配。


 間違いない。

 転生者だ。



 「………まさか………」



 転生者と、人の目を見事なまでの避けている技術。

 どうしても、それが結びついてしまう。

 転生者ということは、固有スキルを持っている可能性がある。

 であるならば、可能性は大いにある。



 しかし、まだそうと決まったわけではない。

 やってくるのであれば、真正面から相見えよう。



 「!」



 コンコン、とドアを叩く音が聞こえる。

 俺とミレアは目配せをし、念のために身構えた。




 「お嬢様、シェリアです。あの、すこしご相談があるんですけど………………お時間ありますか?」


 「ええ。大丈夫よ。入って」


 「やった!! ありがとうございますっ!!」



 ドアノブに手がかかる。

 さて、どこの誰だかは知らないが、一体なんのつもりか、聞かせてもらおうか。

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