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第813話


 ………重ッ!!




 と、俺は思わず心の中で叫んだ。

 おそらく久方ぶりであろう、親子の対面。

 ミレアと父・ラークは目が合ってからずっと睨み合っていた。 




 ただ、なんとなくミレアが父をどう見ているのかは見えてきた。

 あいつが父親に持っている感情は、僅かな嫌悪と忌避感。

 他の男にも同様に持っている苦手意識を、なんと親にも持っていた。

 そして何より、トラウマといっていいレベルで、実父に恐怖を抱いていた。




 「はいはい、二人とも一度睨むのをやめろ」




 ファリスがパンと手を叩きながらそう言った途端、二人は我に帰って、ミレアは目を逸らした。




 「ラーク、改めて紹介する。ミレアの執事をさせているワイズだ」




 紹介されたので、一応お辞儀をしておく。

 ラークは会釈だけして、すぐにファリスの方を向いた。




 「礼を言わねばな。ファリス殿には世話をかける」


 「気にするな。ロゼルカ家と付き合いが長いのは、お前が一番よくわかっているはずだ」


 「確かに………学院設立前からの長い付き合いだ。研究を行っていた頃が懐かしい。ああ、突然魔法学院を設立し、血族の者を送れという話を聞いたときは驚いたものだ。だが、学院設立の目的は達せられなかったと聞く。ギルファルド殿の事は、本当に残念だ」





 どうやらラークは、学院を興した理由である、ルーテンブルクへの復讐について知っていたらしい。

 しかし、今回の戦争ではどうしてもルーテンブルクよりもルナラージャに回さなければならなず、結局学院の力は使えなかった。

 それでも、天人計画の被験体である子供達の仇が取れたら問題なかったのだ。

 しかし、仇である連中が魔界に逃げたせいで、目的は達成出来なかったのだ。





 「仕方ないさ。だが私は決して諦めてはおらんよ。改めてギルの分まできっちりケジメをつけさせる。連中だけは、絶対に生かしてはおかん」



 「「………」」




 この話になると、どうしても僅かにリンフィアとニールの表情が曇ってしまう。

 気に病むことではない………と、一概にも言い切れないのがなんとも悩ましい。

 リンフィアの場合は、身内が絡んでいる可能性もあるのだ。




 「まぁ、その話は一度置いておこう。ラーク、単刀直入に尋ねるが、今更娘の状態を確認したいとは、どういった了見だ? 戦争に参加したことすら知らなかったお前が、一体何故?」





 少しばかり追い込むような口調になるファリス。

 言葉の端に感じる僅かな怒気は、やはり教え子を蔑ろにされているのが気に食わないからだろう。

 だが相手が親ということでなんとか我慢はしていた。

 すると、





 「………………ここにいる全員、これから話す事は他言無用で頼めるか?」





 と、ラークは切り出した。

 もちろん断る理由もないので、俺たちは了承した。




 「助かる。何せこれから語るのは、我がロゼルカ家が代々隠し続けた秘密なのだからな」





 そう言って、ラークは懐から、一通の手紙を取り出した。

 一見なんの変哲もないただの便箋だが、よく見ると妙な魔力が込められている。





 「これは、我々ロゼルカ家の本来の故郷から送られた手紙なのだが、実はこことは異なる国………いや、そもそも人間界ではない場所から送られて来ている。つまりどういう事か、わかるか?」



 「「「!!」」」





 それを聞いて納得した。

 先程ミレアの祖父を見た時、俺は明らかに人間のものではない耳を目にした。

 あの尖った耳は、まさしく妖精族特有のもの。

 つまり、ロゼルカ家の故郷は妖精族という事になる。







 が、





 「初耳だな、ラーク。お前、人間じゃないのか?」






 俺はファリスのその一言に、耳を疑った。

 確かこいつは、あのエルフ耳の老人とも面識があったと言っていた。

 だから、ロゼルカの者が人間ではない可能性は十分考えられる筈。


 一体どうなっているのだろうか。




 「正確にいうと、人間以外の血が濃く流れているんだ。我々の家系が魔法に長けている者が多い理由がそれなんだよ、ファリス殿」


 「なるほどなぁ。妙に優秀な奴が多いと思ったら………ミレアなんか、特にだろう? 」




 やはり、知らないという体で話が進んでいる。

 いや、体ではなく、これは本気で知らなさそうな様子だ。

 演技の可能性も疑ったが、あそこまではっきり見えるものに嘘をつく意味が思い浮かばない。


 だとすれば、そこになんらかの秘密があるのだと考えられる。




 そう思って、一応見えた事は言わないでおこうと考えていたのだが、






 「ようせいじゃないのか?」







 と、幼女の声が耳に入った瞬間、作戦中止が頭の中で告げられた。







 「………今、なんと?」


 「どういう事だ? ラビ?」



 ラビはキョトンとしている。

 だとすれば、こいつは()()()()だ。

 こうなったら、




 「この子はおそらく、閣下の父君の耳を見てそう言ったのだと思われます」





 と、俺もぶっちゃけた。


 途端、バタバタと慌ててラークは立ち上がり、俺の肩を掴んだ。






 「みッ、見えるのか!? 父の正体が………あの耳が!? 君も妖精族………いや、違うな………………では、“神威” が使えるのか!?」


 「!?」


 「しかも、君は男だ………………ファリス殿!!」


 「あ、ああ?」



 思わずたじろぐファリス。

 何が何やらさっぱりなまま、ラークの中でだけ話が進んでいく。

 するとラークは、こんなことを言い出したのであった。






 「彼とミレア………出来ればその子も、しばらくここに留めさせて貰えないだろうか!」





 はい、確定だ。

 どうやら、俺はすぐに家へ帰るというわけにはいかなくなったらしい。



 



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