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第81話


 「これで全員終わったな。どうだ使い心地は?」


 「おもしろかったぞ」


 「凄い良かったです」


 「まあまあだ」


 全員からのOKは出た。

 とりあえずテストは成功だ。


 「そりゃあ良かった。ニールの回復機能はそういう事態になった時しか使えないから試せないが、大丈夫か?」


 「問題ない」


 魔力を流すだけだしな。


 「それじゃあお前ら、翌週の大狩猟祭でまともに運用出来るように練習はしとけよ。特にリフィ」


 「はい、わかりましたっ」


 こいつの武器は特に慣れが必要だ。

 何よりも先にまず命中率を上げる必要がある。


 「よし、じゃあ帰るか」


 クエスト報告のために俺たちはフェルナンキアへ帰った。








———————————————————————————








 これは、俺たちが武器の試運転をしていたのとほぼ同時期のことだ。



 王城では、何やら会議が行われていた。

 それも公のものではなく、王と限られた者のみで行う裏会議だ。


 「王よ、この度は如何なされたのでしょうか?」


 「うむ、少し気になる人物がいてな」


 「彼、ですか?」


 騎士団長スカルバードがそう言った。


 「ああ、一度は追い出したのだが、どうも気になっているのだ。能力がないと聞いていたが何かあると余は睨んでいる」


 能力を持たない勇者。

 一説によるとその者は“特異点”と呼ばれ、災いをもたらすとされていた。

 王はその説のほんの一端を知る程度だが、もしものことを考え、抹殺を目論んだ。


 「不穏分子となる前に抹殺してしまおうと思っていたのだが」


 「兵は返り討ち。挙句姿をくらまされた、と」


 ケンが生きていることは、こいつら全員が既に知っていた。


 「故に興味を持った」


 「危険ではございませぬか? もしその男が本当に“特異点”だとしたら………」


 「だから放っておくと言うのか? それはつまらん」


 「は?」


 数名の頭上にハテナが浮かんだ。

 何人かは理解しているようだ。


 「せっかくだ。うまく利用した方が我が国のためになるやもしれぬだろう? それにその災いと言うのが、他国に降りかかってくれるような事態になる可能性も失うのだぞ?」


 「それは………」


 「具体的にどのような災いなのかは余も知らぬ。だから面白いのだ」


 これは国王の悪い癖だ。

 しかし、このおかげで成功した事例も少なくない。

 いや、こう言う王だからこそ、出来る事もある。


 「ワイドよ、まだ所在は知れぬのか?」


 「あー、まだっぽいですねー。流石に公で手配するのは無理なのでちょこちょこ探してるんですけど、からっきしです」


 「フフフ、それはそれは」


 愉快そうに王は笑った。


 「王サマー、そういえば聞いてなかったんですけどー居場所を知ってどうするつもりなんですか?」


 「さァ?」


 「さァってあんた………」


 「いまいちいい案が思いつかぬ。ただ殺すのもつまらん。かと言って迎え入れるのも難しい。だが、放っておくのはつまらぬし、何より危険だ」


 「危険………かもしれないですねー。ただでさえ勇者の事は未確定な部分が多いし、謎が多過ぎる」


 魔王討伐のために召喚された勇者。

 しかし、その全貌は明らかになってはいない。

 王たちも全てを理解して召還をしたわけではないのだ。


 「だが、いざとなった時は我が国の“三帝”に討ってもらう他あるまい」


 「「“三帝”ッッッ!」」


 “三帝”とはこの国で魔法・武術・財力で頂点を取った者たちのことを指す。

 魔道王(まどうおう)剣天(けんてん)万宝(ばんほう)の3名だ。


 「でもあの人ら頭固いから動いてくれるか分かりませんよ?」


 「剣天は簡単だろう。あの男がある程度の実績を残してくれればそれで釣れる」


 “剣天”は大の戦闘好きだ。

 最強となった今も何かと戦っている。


 「“万宝”は難航しそうですよー。あの人、金ならあるって言ってどんな報酬出してもなびかないっすもん」


 「そこはどうにでもなる。ワイド、お前引き続き捜索をしろ」


 「へーい」


 ワイドはそそくさと出て行った。


 「王よ、あの男はどうにかなりませぬか。口の聞き方がなっておりませぬ」


 「構わん。そんなことを気にする王など、たかが知れる」


 この王の器の大きさは他の国王と比べ、一際大きい。

 小さなことを気にせず、ただ何か為すために必要なことをする。

 そこでは多少の無礼なら一向に構わないと水に流す。

 この国の国民はそんな王を心から慕っているのだ。


 「まぁ、16、7歳程の子供を相手にここまでしている余が言えたことでもないか。フフフ」


 「そんな………滅相も無いことを」


 「良い良い、事実だ。事実だが、悪くはない。ここまで興味を惹かれる相手は久々だ」


 「王がそこまで興味を示すとは………以前よりルドルフより耳には挟んでおりました。私も一度その少年に会ってみたいです」


 スカルバードはそう言った。


 「ほう、そうか、そう思うのか。スカルバードよ」


 「はい」


 そしてその後も会議が続いた。




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