第76話
スノウウルフと戦うにあたって、銃の使い方をおさらいする事にした。
「撃ち方は解るか?」
「魔力を込めて引き金を引く、ですよね」
「ああ。それと一応、強化魔法をかけて戦え。そっちの方が戦いやすい」
拳銃使いは機動力が必要だ。
狙撃銃と違って、動き回りながら戦うので、もっと上位の強化魔法を早いうちに覚えさせねば。
「こんな小さな武器が弓矢より速くて強い………不思議ですね」
「武器もここまで進化した。俺の故郷ではこれよりもっと危ねぇ武器がいくらでもあるからな。数回で世界を滅ぼす武器とか」
「数回ですか………怖いですね」
「にわかには信じられないな」
二人には想像できないだろう。
魔法がない世界の武器も結構危ないものだ。
魔法と科学のどちらが強いかみたいな議論があるが、どっちもどっちだと俺は思う。
「ま、気をつけて使え。武器を持つ奴はその武器が危ないって事を理解して正しく使う義務がある。そんなことも理解しないでただ単に武器を振り回す馬鹿にはなるなよ」
「おお………肝に銘じます」
「ならいい。それじゃあこれを腰に巻き付けろ。マガジンは材料の量的に3つしか作れなかったから、それが無くなったら一旦退がって、腰に巻きつけている弾を補充して戦え。銃に付加魔法を付加してるから、あらかじめ魔法を込めていれば、マガジンの中の全銃弾魔法を付加出来る。けど最初は慣れてないだろうから、左半分の魔法弾を使え」
魔法弾とは、魔法が付加してある銃弾だ。
使い捨てなので鉄でもギリギリ耐えられる。
付加魔法を付加しているので、自分でもかけられるが、リンフィアは詠唱が必要なので、時間がかかってしまう。
今はとりあえず銃に慣れて欲しいので、撃つことに専念してもらいたい。
「とにかく難しい事は考えずに、当たるように撃て。話はそこからだ」
「じゃあ今回は左側の弾を使うようにします」
「ああ、そうしとけ。それとな」
俺はアイテムボックスからもう一丁の拳銃を取り出した。
「2丁使え。マガジンは………これ使うか。左右で予備は一つずつ。頭に入れとけよ」
もう一丁の拳銃は片方が出来た時に並行して作っていたものだ。
一度できればもう一つは簡単だった。
これでハードミスリルはすっからかんだ。
「いきなり2つですか?」
「慣れといたほうがいいだろう。それに両手あるんだから両手使わねーと損だぜ?」
「そんなものですか?」
「そんなもんだ」
ぶれないように付加をしてあるし、こいつのステータスだったらこの重量は楽勝だろう。
おそらくいきなりでも使えるはずだ。
「残弾数には気をつけろ。攻撃しようと思ったら弾がなくて死んだって例もある」
「了解っ!」
「よーしじゃあ、説明終わり。んじゃ、試し打ちするか」
流石にいきなりはキツイだろうから数発は撃たせておこう。
「構えろ」
「こうですか」
リンフィアは両手を前に出してこっちを見た。
「そうだ。じゃあ次は………!」
来た。
「リフィ、来たぞ。丁度いい。 あいつらが的だ」
「的? あっ!」
スノウウルフの群れ。
数は10数匹。
「スノウウルフ………」
「音出すと警戒される。だから一発で当てろ」
「はい!」
リンフィアは右手で持ってる一丁を前に出した。
遂に、こいつらはその威力を知る。
「グルルルルルル………」
スノウウルフは敵意むき出しだ。
いつ飛び出して来てもおかしくない。
「よし、リフィ。狙いを定めて魔力を込めろ」
リンフィアは狙いを定める。
「ヴウウウウ………」
スノウウルフの一匹が飛び出した。
そして
「オォオオーーーーーン!!!」
遠吠えと同時に先頭が一気に突っ込んで来た。
「撃て!」
リンフィアは引き金を引いた。
ヒュンッ
銃声はならない。
銃弾が風邪を切る音だけがほんの一瞬、響く。
弾はスノウウルフ目掛けてまっすぐ飛んでいき、着弾した。
パァンッ
スノウウルフがバラバラに吹き飛ぶ瞬間魔石に変わる。
周りにいたスノウウルフも衝撃に巻き込まれ、傷を負った。
【レールガン】の効果は加速以外にもう一つある。
それは、余ったエネルギーを衝撃に変換する効果だ。
吹き飛んだのはその効果だ。
「ヒュー、相変わらずの威力だ」
銃の構造と魔法の組み合わせで
「なななななッ………!」
「これは………!」
「うっわぁー………」
良い反応だ。
作った甲斐があるというもの。
「グルルルルルル………」
さっきまで勢いよく突進して来ていたスノウウルフ達も止まっている。
警戒心はマックスだ。
「どうだ? なかなかの威力だろ?」
「こっ、こんな武器見た事ないですよ!」
「当然だろ。俺の故郷の武器なんだから。この国は俺の故郷とは交流無いんだし。それどころか人間や魔族、亜人や妖精その他と一切交流してねーからな」
と言うか設定だ。
真実はそもそもが別世界なので関わりようが無いという事だ。
「Cランク上位の冒険者で漸くギリギリ捌けるくらいだな。ただ、お前がもっと強くなったらSSSも圧倒出来るかもよ?」
「SSSランクですか………」
そのクラスになったら流石に武器も更新しなきゃだが。
「とりあえず強いのはわかったろ。だったらどんどん戦え。まだあんだけいるぞ」
「戦う………頑張ります!」
リンフィアは銃を構えて、スノウウルフ達のいるところへ突っ込んだ。