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第73話


 「新しいモンスターを召喚したな」


 「あれは………ゴーレムか」


 どうやらラビが新しいモンスターを召喚したらしい。

 小型のゴーレムだ。

 小型といっても、身長は俺と変わらない。

 通常のゴーレムが2メートル半くらいで、大型になると城壁ほどのサイズになる。


 「小型ゴーレム………なるほど、使えるな。それにしてもこの前のでゴーレムまで召喚できるようになってたのか」


 「モンスター召喚………聞いたこともないスキルだ」


 「だろうな。あれは歴史から抹消されたスキルだ」


 「抹消? どうしてだ?」


 「生物迷宮ってのはな、過去に一度滅ぼされたはずの一族なんだよ。だから、そいつら専用のスキルも自然と抹消されたわけだ。あいつら以外使えねーからな」


 「!?」


 しかし、実際には生き残りがいた。

 その末裔がラビというわけだ。


 「まぁ、詳細はそのうちラビが話してくれンだろう」


 「やはり壮絶な話なのか?」


 「ああ、かなりな」


 一族でもない俺がベラベラと喋るのは良くないと思った。

 だからこの続きを話すつもりはない。


 「というか何でそんな事をお前は知ってるんだ?」


 「人から聞いた」


 人から聞いた。

 便利な言葉だ。

 それに嘘ではない。

 トモから聞いたようなもんだ。


 「そうか。その人も凄いな。歴史に残らなかった一族の事をそこまで知っているとは」


 神ですから。

 それも知恵の神ですから。


 「む、動いたな」









 ———————————————————————————










 「ゴレ蔵………」


 「そうだ。おまえはきょうからゴレぞうだ。よろしくな」


 ラビは手を差し出した。

 ゴレ蔵はラビに手を伸ばしていき、握手を交わした。


 「オオオ………有難ウ御座イマス。マイマスター」


 ゴレ蔵は機械のような動きで礼をした。


 「おう。それにしてもおっきーな」


 「ゴーレムナノデ。デハ、僕ハドウスレバ良いデスカ?」


 「しょうめんにいるスノウウルフ4くみをぶんだんさせつつ、2ひきずつたおしていきたいんだ。ワタシたちがたたかってるあいだに、ほかのウルフをすらざえもんとひきつけておいてほしい」


 「了解シマシタ」


 ゴレ蔵はチラッとスラ左衛門を見た。


 「ヨロシクオネガイシマス、姉上」


 「こちらからもよろしくお願いいたしまする」


 挨拶をすませると、今度はヘビ右衛門の方を振り向いて、


 「兄上、ヨロシクオネガイシマス」


 「! よろしく! わかんない事があったら何でも聞いてくれ!」


 ヘビ右衛門は兄上と呼ばれて露骨に喜んでいた。


 「デハ姉上、参リマショウ」


 ゴレ蔵はスラ左衛門を肩に乗せた。


 「へびえもん、こっちもすぐいくぞ」


 「はい!」


 ゴレ蔵は一気にスノウウルフの群れに突っ込んでいった。

 一見無謀にも見えるこの行動。

 しかし、これが出来るからゴーレムを使う冒険者がいるのだ。

 ゴーレムには人間にはない守備力が備わっている。

 

 「ゴレ蔵、私を放って下さい。あの群れの中に」


 「ワカリマシタ」


 ゴレ蔵はスラ左衛門をウルフの群れに投げ込んだ。


 スラ左衛門は空中で分離し、3組の場所にそれぞれ着地した。









———————————————————————————









 「いくぞ、へびえもん」


 ラビはスラ左衛門が着地しなかったウルフのところにダガーで飛んでいく。


 「えきだして!」


 「プシューッ!」


 ヘビ右衛門は再び溶解液を出してスノウウルフにかけようとした。

 しかし、流石に学習したのか、それを避けるスノウウルフ。


 「だめか。じゃあへびえもん、こっからはふつうのせっきんせんでいくぞ」


 ダガーを構えるラビ。


 「ウォオオオオン!!」


 スノウウルフは2匹とも固まって接近してくる。


 「へびえもんはみぎをたおせ。ワタシがもうかたほうをたおす」


 ヘビ右衛門は頷くと、右側のスノウウルフに飛びかかった。

 すると空かさずもう一匹がヘビ右衛門へ攻撃しようとしているので、


 「ヤァッ!」


 ラビが接近して攻撃をした。


 「………たぶんじかんかせぎでていっぱい。きょうかまほうがないのはけっこういたでだ」


 通常、同ランクのモンスターと戦うときは、強化魔法を使って戦うのがセオリーだ。

 Fランクくらいまでは何とかやっていけるが、

 D・Eランクでは皆ソロブーストくらいは使えないと対等には渡り合えない。

 ラビは、防御に専念する事にした。


 だが、ヘビ右衛門は別だ。

 こっちは召喚されたモンスター。

 召喚されたモンスターは強化魔法ではない強化方法がある。


 「ラビ様! チッ、犬っころめが。調子に乗るなァ!」


 魔石強化と呼ばれる方法。

 モンスターは、魔石を体内に宿している。

 その魔石に魔力を送り込むと、戦闘力が上がる。

 野生の知能の低いモンスターでは、この方法は取れない。


 「ぬぅっ!」


 ヘビ右衛門は魔力を流し始めた。











———————————————————————————










 一方、スラ左衛門たちはと言うと。


 「フンッッッッ!!!!」


 ゴレ蔵の拳がスノウウルフに降りかかる。


 「ウォオオオン!!」


 スノウウルフはそれをスッと避けて再びスラ左衛門を攻撃する。


 今こちらでは、スラ左衛門が逃げ回る、危なくなったらゴレ蔵が攻撃する、の繰り返しだ。

 最低限の攻撃以外を逃げることに費し、協力すれば、単体で相手をするよりもずっと逃げるのが楽になる。


 「ゴレ蔵!」


 「フン!」


 再び攻撃に移る。








———————————————————————————








 「へびえもん、ませききょうかできるようになったんだな!」


 「はい、この前毒を生成する訓練の時に魔力の使い方を覚えたので、使って見ました」


 俺がこの前毒の生成をさせたのはこのためでもある。

 

 「シャーッ!」


 ヘビ右衛門はスノウウルフの首に巻きついた。

 パワーが上がってガッチリ締めている。


 「グゲァアア………!」


 スノウウルフはバタバタ動き回っているが、取れる気配はない。


 「プシュッ!」


 ヘビ右衛門はその状態から溶解液を吐きまくった。

 どんどん衰弱していくスノウウルフ。

 すると、



 「オォオオオン!!」


 ラビと戦っていたスノウウルフは一度退がって、遠吠えをした。


 「!」


 それに反応した他のスノウウルフがこちらへ来ようとした。


 「行カセマセン」


 ゴレ蔵が正面に立ちはだかった。

 当然スノウウルフ達は邪魔なゴレ蔵を排除しようとした。

 しかし、


 「ヌゥン………!」


 ガッチリとガードしたゴレ蔵に、攻撃が通らない。

 諦めたスノウウルフ達は別れて向かおうとした。

 即ち、ゴレ蔵に背中を見せた。

 これを好機と捉えたゴレ蔵は、その中の一匹を背後から捕まえ、スラ左衛門が攻撃を与えた。

 徐々に弱っていくスノウウルフ。

 この状況で取る行動は、


 「オォオオオン!!」


 遠吠えを上げた。

 しかし、それは悪手となる。

 スノウウルフ達は一斉に振り返ったが

 どちらを助けるべきか、混乱状態に陥ったのだ。


 そうこうしている間に、ヘビ右衛門が捕まえていたスノウウルフは事切れてしまっていた。


 「シャーッ、あと、7匹………いや」


 スノウウルフたちは急いで戻ろうとした。

 だが間に合わなかった。


 「6匹だ」

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