第70話
「祭り開催は今日から一週間後。参加者は、午前7時にギルド本部前の広場に集合なのでお忘れなく」
「了解」
さて、あと一週間も間が空いた。
新武器の練習させるか。
「ついでに何かクエスト受けようぜ」
「ランクはどうしますか?」
ランクか。
それは俺が決めるよりはリンフィアとラビが決めた方が良さそうだな。
「ラビとリンフィアが決めてくれ」
「ラビちゃん、ランクごとの難易度の違いとかわかる?」
「あるていどはししょうからきいたから、わかるぞ。たぶんDくらいでいいとおもう。おねーちゃんは?」
「うーん、私もそのくらいがいいかな。そろそろ高ランクにも慣れとかなきゃだしね」
そういえば元々ラビのダンジョンは、Dランクのクエストを受けるつもりで行ったんだった。
それならばDが適正だろう。
こいつらの実力はもうそのくらいだ。
「じゃあDランクのスノウウルフにするか?」
「はい、いいと思いますっ」
「ワタシもそれでいいぞ」
俺はチラッとニールを見たが、聞くまでもなかった。
リンフィア様の御心のままに、だ。
「じゃあ受注したら一旦宿に戻るぞ」
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俺たちはギルドを出て、宿に戻った。
「クエスト行く前にお前らにこれを渡す。新武器だ」
「おお! ついにかししょう! はやくくれ!」
「まあまあちょっと落ち着け。順番だ順番。最初はニールからだ」
「わかったー」
ラビにしてはあっさり引き上げた。
それではまずはニールのパームカフ。
「む、なんだこれは?」
「手の甲につけるアクセサリーだ。竜をイメージして作った」
俺はニールの手にアクセサリーをつけた。
「邪魔にはならないだろ?」
「問題ない」
「ならよし。お前ある程度の魔力操作は出来るよな?」
「馬鹿にするな。これでも半魔族だぞ」
「ハハッ、そらそうか。じゃあ大丈夫だ。使うときは左右区別して使え。右が回復で、左が強化魔法。詠唱いらずで、両方一級だ」
「一級………お前またとんでもない物を作ったのだな………」
呆れたように言う。
「当然だが使うときはMP残量に気をつけろ」
「わかった」
ニールは手をかざしたりしてアクセサリーを見ている。
おー、とか言ってるので、結構気に入ったらしい。
少しホッとした。
「………」
「何だ?」
少し間を開けて、
「………礼を言う」
と言った。
まあ、素直に言うような感じじゃないもんな。
会ってすぐの頃はまだ普通に言ってたが、こう言う感じになってからは、礼を言ったりするのを渋るようになった。
まあ、これはこれで馴染んできたってことだろうけど。
「おう」
俺は素直に返事した。
「ワタシのばんだ!」
「よし、お前はこれだ」
俺は、ハードミスリルのダガーを取り出した。
「かっこいい!」
「だろ?」
デザインは結構凝った。
性分なもので。
「使い方は後で説明する」
「はーい」
ラビは、練習用のダガーと取り替えた。
「最後はお前だ。リフィ」
「はいっ」
俺は、アイテムボックスからバレットベルトと拳銃を取り出した。
バレットベルトは、腰に巻くタイプで、結構簡素な感じだ。
「この武器は、かなり危険な武器だ。引き金を引くだけで色んなものが壊せてしまう。それを自覚しろ。そして使いこなせ。いいな」
「はいっ!」
これなら心配いらない。
いや、元々こいつの心配はしてなかった。
こいつならきっと使いこなせる。
「今から行くクエストである程度慣れろ。不備があったらそん時言ってくれ」
まあ不備はないと思うがな。
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クエストで向かった場所は、フェルナンキアから10キロ先くらいにある、アルカ山と言う場所だ。
ここは常時雪の降る地域で、そう言った場所に生息する生物が大量にいる。
その中の一つであるスノウウルフが今回のターゲットだ。
「近場にちょうどいいクエストがあったもんだ。この山なら障害物も少ないし、十分に動き回れるな」
「そうですね。それにしても、雪山って寒いですね」
「ん、ちょっと待ってろ」
俺は炎四級魔法【ウォームカーテン】を使った。
この魔法は、見えない、触れない幕を体の周りに掛け、内側の温度を大体25度程度に保つ。
冷風もこの中に入ると温風に変わるが、魔法によるものは変化しない。
「わあ、暖かいです」
「ぬくぬくだ」
「む………」
とりあえず3人ともにかけた。
俺にもかけておく。
「効果は2時間だ。切れたら言え」
「「はーい」」
「わかった」
捜索再開だ。
一面雪だらけのこの山。
この環境は、特殊な条件が揃ってこそ成り立っている。
魔法学的要素も関わってくるので一言では説明できないが、敢えて言うならこの辺りの魔力の性質が氷魔法に寄っているからだ。
魔法の属性は、詠唱を唱えることでオートで命令を与え、確定する。
無詠唱者は、その行程を省く代わりに魔法を脳内で構築。属性と種類を確定し、使用する。
超高等テクだ。
構築するときの材料として一つ、魔力の調節がある。
魔法ごとに違うので、間違えると暴走したり不発になる。
詠唱時はその心配はないが、無詠唱だと少し注意が必要だ。
それは置いといて、魔力は通常時その量が常に変動している。
そのため確定せず、様々なものに魔力として流れている。
しかし、この地域では、変動が変質し、氷魔法に近い数値に偏っているのだ。
そのためこのような環境になる。
火山や砂漠も似たようなものだ。
さて、そんな雪山を観光しつつスノウウルフを探す。
「そろそろかな」
その予感は的中した。
「あ、あれ!」
ラビが奥の方を指差した。
何かがこちらに向かっている。
言うまでもない。
スノウウルフだ。