第7話
俺がここに来て364日目。
残るは後1日だ。
俺は最終日の朝を迎えた。
「…………朝か」
俺は食料庫から最後の4食のうちの1食を取り寄せた。
「あー、このメシも後1日か」
指をクイっと曲げ、コップとやかんを引き寄せる。
これは重力五級魔法【グラビテーション】だ。
「ずずず………はー。この絶妙な不味さの茶ともお別れだ」
食器を後ろに投げ、生活魔法で洗浄、乾燥、収納しながらそう呟く。
「朝練は……今日はしねーんだったな。何して過ごすか———」
最終日は体を休めようって決めてたのをわすれてた。
「散歩でもすっか」
俺は小屋の外に出る。
外はもう以前の原型はとどめていなかった。
「火の森からまわろ」
俺は小屋から見て南にある《火の森》という場所に向かった。
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この場所は酸素が無限にある。
無限というのは植物がなくても一定時間毎に酸素が存在し続けるのだ。
火の森とは、それが原因で火が燃え続けている草原跡を見たまんま俺が名付けた。
炎が発生する魔法を練習していくうちにだんだん強い魔法を使えるようになり水魔法を使わない限り消滅しなくなった。
「鎮火させたほうがいいのかねー。いや、記念に取っとくか」
火の海の中で平気でいられるのは防御魔法・魔の三級魔法を使っているからだ。
魔法による間接的な熱気、冷気、電気などは完全にシャットアウト出来る。
「もっと派手に燃やしたら酸素全部使って息ができなくなるな」
流石にそれはしんどい。
「お、燃えてる燃えてる」
炎の森には火力調整に使った
木がある。
微調整しているうちに奇跡的に出来たこれを俺は炎の木と呼んでいる。
まんまだ。
「縁起がいいのか悪いのかよくわからない木だったなー。アイツが直接用意したんだから御神木よりもご利益がありそーだ。燃やしたけど」
俺はある程度歩き回った後次へ行った。
「次は氷の城か。もったいねぇ、こんな凝ったもん作ったってのによ」
目の前にそびえ立つのは巨大な氷で造られた城である。
水魔法には氷も含まれている。
その場合名前は氷魔法となる。
ここは氷二級魔法などで時間をかけて造った。
貰った知識の中に建築学も入っていたので凝ったものを造ってしまった。
こんなナリでも実は凝り性だったりする。
美術でよく琴葉に「ケンちゃん細かすぎ!」と文句を言われたものだ。
他にも大量のモニュメントを創って精度を高め、水魔法で壊すなどの訓練もした。
ちなみに出来がいいのは未だに飾ったまんまだ。
そんな感じでせっかく造ったので、一時期ここに住んでみたが、いちいち防御魔法で防寒しないといけない所為でやめた。
やはりあの小屋が一番落ち着く。
俺は氷の城を後にし、土の迷宮に行った。
ここは創造、造形の魔法の練習場所にした。
適当にポンポン作っているうちにかなりめんどくさい迷路になった。
ここにはなんと、
「! っと、アブねー。罠が作動してんの忘れてた」
いつか使えるかと思って、罠を大量に作り、その動作チェックをしていた。
「この辺にもう一個あったな。これか」
足元の板を踏む。
すると、右から矢が飛んできた。
それを手刀で弾き飛ばすと、矢の後ろについていたワイヤーが飛んでくる。
俺は腰を反らせてワイヤーを躱すと、それはいとも簡単に岩を砕き、上に仕掛けていた岩石が降ってきた。
俺はそれを目で見ながら岩石を避けつつ進む。
「えらい細けぇ罠だな。俺が作ったんだけど」
めんどくさくなったので壁を蹴って登り、外に出る。
鉄球がブッ込んできたり、壁が倒れたりするのを難なくスルーして、そのまま隣の風の塔に直行した。
この縦長の巨大竜巻が風の塔。
塔とあるからにはちゃんと登ることができる。
ただし、失敗すればたちまち全身が引き裂かれ、肉塊だけが塔を登っていく。
頂上にたどり着く頃には既に跡形もないが。
「んーと、ここだっけか?」
俺は竜巻に足を引っ掛ける。
すると、逆さに吊るされたまま上に上がって行った。
「風が気持ちーな。向こうでも竜巻で遊ぶか」
風の流れが変わる。
体を少し横に捻り、今度は元の向きで運ばれていく。
そのまま横になったり縦になったりしながら、無傷で風の塔を登った。
「天辺だ」
標高は1000m程。
日本の建造物でこれより高いものはなかった。
「いい眺めだ。ここなら全部見渡せる。今更だが、ここも随分様変わりしてんな。最初はただの原っぱだったのによ」
何度も何度も修行を繰り返すうちに天変地異が起きたような場所になってしまった。
毎日変わっているが一年もいると流石に愛着が湧く。
それでもあと1日だ。
俺は異世界へ行く。
43人の勇者の一角として。
そうそう簡単にはいかないだろう。
なんせ今の俺には無能のレッテルを貼られている。
しかも今まで持たれてたイメージがそう簡単に消えるとは思えない。
でも、それならそれで俺は構わん。
ただアイツらさえ守れればそれでいい。
「いよいよだ。待ってろよ。無能の底力ってやつ見せてやろーじゃねーか」
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ついに今日、全員が再び集まる。確か、合図があるとのことだった。
俺はその合図を待った。
「……来たか」
「やあ」
後ろにはトモが立っていた。
「よ、1年ぶり」
「そうだね。元気してた?」
「ケッ、どうせ見てたんだろ」
「はは、当たり」
こうやっているとはただの子供だが今ならわかる。
こいつがどれほどの力を持っているのか。
「それにしても君、随分強くなったね」
「まーな、連中に無能無能言われるのも癪だし」
「……無能は一体どっちだろうね」
「ん? どした」
「いや、こっちの話」
「そういや合図ってお前が直接来るんだな」
「いやいや、君だけだよ。仮にも君が神の力を持ってるんだから。どうしても特別扱いになっちゃうんだよ」
「俺以外がつまらないからじゃないのか?」
「そうでもないさ。面白そうなのは何人かいたよ。例えばSSSの子とか」
琴葉と蓮か。
「そりゃ納得だ」
俺も今会いたいなーとか思ってしまった。
ホームシックかよ。
「そういえば君自分のステータスは理解しているかい?」
「見るか?」
「折角なら生で見たいね」
「オーケー。これが今の俺だ」
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聖 賢
異世界人
HP:450000
MP:750000
攻撃力:360000
守備力:340000
機動力:330000
運:10
スキル:剣術Lv.10/格闘Lv.10/索敵lv.10/隠密Lv.10/暗視Lv.10/威圧Lv.10/計算Lv.10/記憶Lv.10/予測思考Lv.10/持久Lv.10/異常耐性Lv.10/魔力硬化Lv.10
アビリティ:鑑定・ステータス表示・道具解析/魔力操作/魔力吸引/無詠唱/狂戦士化/魔法【強化魔法・全階級/防御魔法・物理・全階級/防御魔法・魔・全階級/炎魔法・全階級/水魔法・全階級/土魔法・全階級/風魔法・全階級/雷魔法・全階級/闇魔法・全階級/光魔法・全階級/重力魔法・全階級/複合魔法・全階級/回復魔法・命・全階級/回復魔法・状態・全階級/消滅魔法・全階級/生活魔法・全階級/神象魔法・全階級】/魔法剣/古代魔法/脳加速/並列思考/魔力干渉
【神の知恵】
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「改めて見ると……人間じゃないね!」
「しつれーだなお前」
「君にだけは言われたくないね」
ごもっともで。
「魔法は全部じゃないにしても大体は覚えてる。いらねーのは省いたんだ。コイツらの練習でいっぱいいっぱいになりそうだったからな」
いくら使えるとは言え、練習は必要だ。
全ての魔法でそれをしていたらきりがない。
「それはそれはお疲れさま。僕から言うことは神象魔法さえ気を付けてくれれば問題ないよ」
「あー、あれか。あれはやばかった。お前のオリジナルってだけのことはある」
「あれも娯楽の一環だったんだけどね。君以外使い手はいないし現れる気もしないよ。僕の知恵と君の頭脳ありきだからね」
その後もしばらく喋っていると、いつのまにか太陽らしきものが真上に来ていた。
「予定の時間まであと20分」
「もうそんだけしかないのか。お前ここに居ていいのか?」
「いいんだよ。みんなの空間にはアラームつけてるし」
「手抜きだな、おい」
「しばらくは君にも会えないしさ、ギリギリまで喋って居たいよ。神にも暇つぶしって概念はある」
「それじゃあ俺の事を話してやるよ」
「お、いいね。いくら知識や知恵があっても個人についての話は知らないからね」
俺は20分間自分の事を話し続けた。
こんな話を聞いて何が楽しいかは知らないが、トモは実に楽しそうに俺の話を聞いていた。
「やっぱり君は面白いね。そんな人生はなかなか歩めないよ」
「今だから笑い話にできんだけどな」
ふふふ、とトモは笑う。
多分もう時間だ。
「ケンくん。心の準備は出来てるかい?」
「ああ、バッチリだ」
世界が端から小さくなって折り畳まれて行く。
少し名残惜しい気もする。
でも今はそれよりも先のことも気になってソワソワしてる感じだ。
トモは去り際に言った。
「それじゃあ、いってらっしゃい」
ゆっくりと消えていく。
そして最後にこう付け足した。
「神のご加護があらん事を」
ようやくタグの通りになりました。
少々ステータスを修正いたしました。